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第20回「人と自然が織りなす里地環境づくりシンポジウム」
郵便局コミュニティーセンターホール(千葉県印西市)
平成14年3月10日(日)
21世紀の持続可能社会・里地里山をデザインする
1999年より3年をかけて全国で実施してきたイオン里地里山保全活動の最終回にあたり、これまでの総括としてシンポジウムを行いました。会場となった千葉県印西市は、里地ネットワークでこれまでにもお世話になったケビン・ショートさんが住んでおられるところです。前日にはプレシンポジウムという位置付けで、ケビンさんのホームグラウンドである印西市結縁寺地区で、第19回の活動を行ないまいた(報告は別項)。
シンポジウムは、「なぜ今里地里山か」という大前提の話から始まり、環境省と農林水産省から里地里山関連の施策について紹介していただいた後、土木(近自然工法)、農と食、市民参加の里山保全、自然エネルギー、地域活力の向上、とハードからソフトまで、国から市民まで、地球から地域まで、幅広い視点を結集した内容でした。とても多彩なテーマで広範囲に話が及びましたが、講演はスライド形式にし、すべての話にグラフや写真があったため、全体としてとても密度の高いシンポジウムとなりました。
以下は概要版ですが、全画像を盛りこんだ報告書を近く発行いたします。
■スライドショウ 12:15〜13:00
第1回から18回までのイオン里地里山保全活動の紹介
■シンポジウム 13:00〜17:00
司会/ケビン・ショート、竹田純一
開会挨拶
主催者挨拶/(財)イオン環境財団理事長 岡田卓也
私どもイオングループは、12年前に環境財団を設立し、環境問題につきましていろんな事業を行なってまいりました。特にその中で里地保全の問題を、里地ネットワークさんとともにとりくみ、1999年から日本の各地20カ所で里山保全活動をしてまいりました。それらの活動は、地域の皆さん、NGO、自治体、市民の皆さんと一体となって進めてまいりました。こういう問題は地域の方々の参加型の事業が最も大切であろうと思っています。
そのほかに、1998年から2000年にかけて3年間、中国の万里の長城に植樹を続けてまいりました。万里の長城の、森の再生プロジェクトを実証してきたわけですが、このプロジェクトには民間の方々が自ら進んで4200名、中国からは3200名の方に参加していただきました。そして、39万本の木を万里の長城のふもとに植樹を致しました。これが今すくすくと成長しております。北京政府も植樹の公園として長く保存するということです。
里山保全の活動では、私自身もたびたび参加しておりますが、地域の皆さん、NGOの方々、あるいは私どもが環境省とともに全国各地に組織している子どもエコクラブの皆さんにも参加していただきました。
また、この2003年から3年間、モンゴルのウランバートル市でボランティアの方々の参加で公園を作り、そこに植樹をする運動を開始しようとしておりまして、モンゴルで苗木の育成に協力しております。
こういう運動を、地域の皆さんと一緒にすることで、少しでも日本の環境、アジアの環境を良くしていこうと考えております。
今日は、我が国で有数の先生方にご参加いただきまして、最近の環境における新しい情報やいろんなご意見を開示していただくということです。少しでも皆様の参考になり、このシンポジウムが成功するよう、また日本の里山保全について今後ともご協力を願いまして、私のご挨拶に代えさせていただきます。
開催地挨拶/千葉県知事 堂本暁子
イオン里地里山保全活動第20回の記念シンポジウムが、千葉で今開かれることに意味を感じますのは、ちょうど私どもが、「とりもどそう、千葉の自然」という大キャンペーンを、県をあげて始めようというその時だからです。
1年前になりますが、三番瀬につきましても、私は里山が好きだから「里海」という言葉を使わせていただきました。
私たち日本人は、アジアの民族といってもいいかもしれません、里山里海と共生して生きることの天才だったんではないかと思います。そこで実現していたのは、まさに循環型の、自然と共生する人の生き方だったんではないでしょうか。
里山はありとあらゆる生活の場、あそびの場であったと思います。鳥たちが実を食べるところも里山でした。
例えば、私はマッキンゼー川を上って北極海にまで行ったんです。そこから帰ってきて日本の里を旅したときに、「あ、なんて里っていうのはぴったりした言葉なんだろう」と改めて思いました。荒々しい自然、その中で戦うように挑んでいる人間の生き様もございます。しかし、私たち日本人は1000年も前から、繊細で人と自然とが織りなす形でつくる里山里海の中で、循環型の社会を作ってきたと思います。そしてそこから日本人の生活文化、芸術文化が、いろいろな形で生まれてきたと思えてなりません。
今までの20世紀、私たちは無我夢中で働き、世界に類をみないほどの高度経済成長に成功しました。でももう一回私たちの心が帰っていくところ、そこが「里」なのではないでしょうか。
私どもがこれから始めようとしておりますのは、「取り戻そう、千葉の自然」をキャッチフレーズに、「千葉環境再生計画」です。ゴミや化学汚染の負の遺産をできるだけなくし、次の世代に、日本一のいい環境を残していこう、そのことを、行政も企業もNGOも民間も、ひとりひとりが皆でやれることを全国の皆様と一緒にやっていこうと考えています。
この計画の核として、千葉環境再生基金というのを設置します。子どもたちが10円いれてもいい、そういった基金でいい里山を残していくという運動を、全県下で展開していきたい。
今日のシンポジウムが、千葉から発信して元気な声が全国に響き渡りますようお願いして、私の挨拶とさせていただきます。
開催地挨拶/印西市長 海老原栄
緑豊かな自然環境は、私たちの生活に潤いと安らぎを与えてくれます。そして安全で快適な町づくりの基礎となるものでございます。
当市には千葉ニュータウン事業が始まって以来、急激な市街地の形成と人口の流入・増加が進展してきました。しかし幸いなことに、先人の方々のたゆみない努力と、それを受け継いできてくれた人々によりまして、当市の昔からのな風景ともいえる谷津田、谷津田と台地との間の雑木林、その雑木林を背にして、小さな集落からなる、当市の財産ともいえる里山が、首都圏にあってこんなにも残っていることに感謝と誇りを感じております。また同時に、この環境を子ども達に引きついでいく必要を深く感じているところでございます。
しかし、当市の誇れる財産も、ひとりひとりが所有する土地でございます。開発や管理放棄等によって、急速に変化しております。私たちの関わりかた次第では、荒地にも貴重な資源にも成りうるものでございます。そこで当市の計画では、美しい自然と風景を有する地域と、利便性のニュータウン地域が共存している特性を活かしまして、人と人とのふれあいや、地域と地域との結びつきを深めていくことによって、潤いのある素晴らしい地域社会を市民と一緒に考え築くこととしております。里山は、そこで暮らす人々の生活の場であることから、この素晴らしい自然を思う市民ひとりひとりの意識のうえに、その保全は成り立っていかなければならないと考えております。
これには、当市が行なってきた、地域を超えたコミュニティ形成のパイプ役となる取り組みをさらに発展させることが必要でございます。これからのまちづくりの主役は市民ひとりひとりであるので、従来からものづくりだけでなく、自然を守りものを大切にし、地域とのふれあいにより活き活きとした市民生活が営まれるよう、町づくりを進めていき、当市の目指している「人と自然が笑顔で繋がるまち 印西」を、この素晴らしい里山を中心として実現していきたいと考えております。
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