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里地里山保全活動
(財)イオングループ環境財団の里山保全事業
第2回「里山カーニバル」
愛知県美浜町
平成12年2月11〜13日



 2月11日〜13日、愛知県美浜町で「里山カーニバル」が開催されました。主催は、美浜町、布土まちづくり委員会、(財)イオングループ環境財団と里地ネットワークです。このイベントは、美浜町の里山一体に生い茂り、手入れをしなければ既存の植生や神社の社(やしろ)まで影響のでそうな竹林を、少しでも、市民参加で手入れをしていこう、そして、単に手入れをすることだけではなく、切った竹で炭を焼き、この炭を水の浄化や田畑に活用していく、さらには、竹でできる楽器や道具をつくることで、楽しんで里山保全活動を行なおうというものでした。
 11日のメインイベントには地元の人、主に愛知県の子どもエコクラブの少年少女たち、中には東京や群馬から来たという方々もいて、総勢100余名が集まりました。このレポートでは、里山カーニバルの体験を中心に、美浜町の里山保全活動、竹のこと、炭のことをお伝えいたします。


竹炭をつくろう

 名古屋駅から私鉄急行で約1時間、伊勢湾と知多湾にはさまれた知多半島の先の方に美浜町があります。伊勢湾よりの野間地区には、水田やみかん畑が広がり、地区の共有地には竹林や二次林が手入れをされて広がっています。共有地の山神様をまつった社のまわりはみごとな竹林で、そのすぐそばに炭焼き小屋とコミュニティ広場がつくられています。
 2月11日、快晴の空の下、たくさんの大人や子どもが集まってきました。最初に、炭焼き名人の布土地区で炭を焼いている百合草さんから話を聞きます。本当は、竹を切り出してから窯に入れ、火入れをするのですが、火を入れてから炭ができあがるまでに2日間かかるため、あらかじめ用意されていた竹を使って火入れを行い、午後に次の人のために竹を切る作業をすることになりました。
 竹炭にするのは孟宗(モウソウ)竹です。3年から5年ほど育った立派な竹を使います。竹林は毎年春にタケノコが収穫できます。ところが、きちんと手入れをして管理していかないといいタケノコを毎年収穫することができなくなります。昔ならば竹を切っていろいろな道具に利用していましたが、今はプラスチック製品などが使われるためあまり利用されません。そこで、地区の人たちが竹炭を作って利用することを考えたのです。
 お話の後、さっそく、長さ70センチほどに切りそろえられた竹を、みんなで窯の中に入れます。窯の底から上の方までぎっしり竹を詰め、鉄のフタをしてから、その上に練り土で封をします。無事にいい炭ができるようにお酒と塩を窯の上にささげます。
 窯の口に薪を入れ、子どもたちが火をつけます。火はしばらくして窯の前の方でめらめらと燃え上がり、やがて奥の煙突から煙が出はじめました。
 おだやかな森のなかで、木のにおいや、風や土のにおいにまざって、木が燃えるにおいがしてきます。少しすっぱいようなにおいもします。竹が蒸し焼きのようになってそこから竹酢がでるからです。でもいやなにおいではありません。いろんなにおいが混じり合って、わくわくするような、楽しい気持ちになります。
 お昼ご飯は、近くのコミュニティ広場で食べます。たき火を囲んで用意していただいた甘酒やお茶、みかんをいただきながらそれぞれお弁当を食べました。
 午後からは、力仕事です。いくつかの班に分かれて竹林へ出発。大人たちが、大きな竹をノコギリで切りたおし、70センチほどの長さに切り出します。それを炭小屋の近くまで運ぶのが子どもたちの仕事です。切り出した竹は、大きさに合わせて竹割り機で4つ割り、5つ割り、6つ割りにしていきます。割り出した竹は、節をナタで削り、炭窯に入れやすくします。最後に数十本ずつロープでしばってできあがりです。
目次
里地里山保全活動
里地里山保全活動
00 里地里山保全活動とは?
01 秋田県鳥海山
ブナの植林
02 愛知県美浜町
竹炭焼き
03 島根県三瓶山
山地放牧と野焼き
04 長野県飯山市小菅
山の手入れ
05 三重県鈴鹿市
石組み
06 山形県最上町
地元学 (小学生版)
07 岩手県西和賀郡
地元学 (地域版)
08 北海道白滝村
水路と有機農業
09 神奈川県横浜市
ケビンの観察会
10 埼玉県武蔵野台地
落ち葉掃き
11 埼玉県小川町
自然エネルギー
12 新潟県佐渡島新穂村
棚田の復田
13 秋田県二ツ井町
杉の活用
14 三重県藤原町
里山テーマパーク
15 宮城県田尻町蕪栗沼
冬期湛水田
16 京都府綾部市
ふるさと拠点
17 沖縄県恩納損村
かまどづくり
18 神奈川県横浜市寺家町
ふるさと村
19 千葉県印西市
都市の里山
20 まとめのシンポジウム
竹で遊ぼう





 大人たちが、ナタで作業を続ける間、子どもたちは竹の端材を使っての楽器や竹とんぼづくりに挑戦。
『親子でつくる〜竹でつくる楽器』や『縄文生活図鑑』の著者で原始技術史研究所の関根秀樹さんが、東京からかけつけてくれました。関根さんは、日本や世界中にある竹の楽器をいくつも教えてくれます。
 竹の筒にひとつ穴を空けただけで、ホラ貝のような音がでたり、ふたつの竹筒を両手にひとつずつ持って、地面や丸太に打ち付けるだけで和音のような不思議な音がでてきます。慣れない手でノコギリや小刀を使い、自分で楽器をつくってみました。森の木や竹を使ってつくられた滑り台や滑車で遊んだりと、夢中で遊びました。

美浜町の竹と里山保全
 自然豊かで温暖な知多半島ですが、ここでも開発は進んでいます。山を追われたタヌキやキツネが人里まででてきて交通事故にあうことも少なくありません。美浜町は、知多半島の中でもっとも昔からの森が残る町です。美浜町では、町ぐるみで森や里山を守るための取り組みを続けています。そのひとつが竹炭づくりです。
 美浜町では各地区毎に18カ所と野間中学に1ヶ所の合計19ヶ所の炭焼き窯が町によって設置されました。目的のひとつは、よいタケノコを収穫するために竹林に手を入れ、適度に伐採していくためです。人手の足りない竹林の管理を、竹炭をつくることで解消し、竹炭で経済的効果を上げようという意味もありました。しかし、効果はそれだけではありませんでした。高齢化が進む農村部で、老人クラブなど高齢者が率先して炭焼きをはじめ、地域の子どもたちとの交流が生まれたのです。そして、今回の里山カーニバルのように地域内を超えた交流まで生まれるようになり、地域が今まで以上に活性化しはじめています。
 
炭焼き窯をつくろう

 今回の里山カーニバルは、11日の竹炭づくり体験がメインイベントです。そして、13日にできた炭を取り出しますが、その午前中には野間の森を楽しむ自然観察ハイキングを行いました。それとは別に、炭焼き窯をつくるイベントが布土地区で行われました。
 昨年、里地ネットワークが美浜町布土地区の人々とともに地元学の実践を3回にわたって開催しました。
 あるもの探しを行い、水の経路図や地域資源カード、地域資源マップをもとに「おもしろ布土マップ」が完成し、最後には地元での発表会を通じて、布土の魅力的な風土や地域の取り組みをあらためて地元の人たちが「再発見」しています。
 このときに出会った杉浦剛さんは、10町歩の田んぼと4町歩の畑作を行う農家で、農薬や化学肥料をできるだけ使わないとりくみや蛍の里を守る取り組みを続けられています。
 今回、布土地区の炭焼きクラブのメンバーが備長炭も焼ける本格的な炭焼き窯をつくり、交流の拠点にしようと計画しました。そこで杉浦さんが自分の土地に窯をつくることを提案、里山カーニバルの一環として炭焼き窯づくりを体験することになりました。炭焼き窯の名人・長野県飯山市の斉藤昇さんに指導していただきながら、素人集団が窯づくりに挑戦します。
 まずは、場所の選定。水が近くにあって、それでいて窯の設置場所は乾いていることが条件です。農道に近い山の斜面を6メートルほど削り、指導に沿って上から見ると壺のような形に掘りとっていきます。その後、掘ったところに石を積み上げるのですが、たまたま古い瓦がたくさんあったので、こちらを利用することにしました。
 ポイントとなるところに石を置き、周囲の土に張り付けるようにして瓦を積んでいきます。瓦と瓦の間には、土を叩きつけるように貼っていきます。そして、入り口や煙突口をつくります。上の方は木でお面と言う名前の梁を編んでから瓦を組んでいきます。さらに土を30センチほど瓦が見えなくなるまで塗りこみます。この練り土も、長年畑として使ってきた土地の下の方にすばらしい粘土があり、これと、山の表土を取り払った下にある安定した良質の土を混ぜてつくりました。この混ぜ合わせ足で踏み練り上げる作業が大変重労働でした。13日には、窯を乾燥させるために一度火を入れ、中に組んだ梁なども焼いていきます。このとき、予想以上に温度が上がることが分かりました。石ではなく瓦で組んだことや、練り土がとてもよかったのでしょう。指導していただいた名人の斉藤昇さんも驚くほどのよい仕上がりだとご自身がびっくりされていました。すばらしい備長炭が焼けるのではないかと今から楽しみです。13日には窯の前の方に木で組む雨よけの作業小屋もほぼ完成し、あとは、近くにつくる簡易トイレの設置ですべての作業が終了します。
 14日には、第一回目の火入れが行われました。16日にははじめての窯出し、続けて窯にウバメガシを詰め19日に第2回目の窯だしが行われました。
 2回目の窯だしで、既に、金属音のする立派な備長炭が一部焼けました。
 これから、火入れを重ねる毎に窯が安定し、また、窯の具合に慣れて、きっとどこにも負けない立派な備長炭ができることでしょう。再訪が楽しみです。

なお、炭焼きについての詳細は、里地通信本紙に掲載しております。

 
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里地里山保全活動
0. 里地里山保全活動とは?
1. 秋田県鳥海山/ブナの植林
2. 愛知県美浜町/竹炭焼き
3. 島根県三瓶山/山地放牧と野焼き
4. 長野県飯山市小菅/山の手入れ
5. 三重県鈴鹿市/石組み
6. 山形県最上町/地元学 (小学生版)
7. 岩手県西和賀郡/地元学 (地域版)  
8. 北海道白滝村/水路と有機農業
9. 神奈川県横浜市/ケビンの観察会
10. 埼玉県武蔵野台地/落ち葉掃き
11. 埼玉県小川町/自然エネルギー
12. 新潟県佐渡島新穂村/棚田の復田
13. 秋田県二ツ井町/杉の活用
14. 三重県藤原町/里山テーマパーク
15. 宮城県田尻町蕪栗沼/冬期湛水田
16. 京都府綾部市/ふるさと拠点 
17. 沖縄県恩納損村/かまどづくり
18. 神奈川県横浜市寺家町/ふるさと村
19. 千葉県印西市/都市の里山
20. まとめのシンポジウム
人と自然が織りなす里地環境づくり
トキの野生復帰プロジェクト

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