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(財)イオングループ環境財団の里山保全事業
第14回「ケビンショートの里山自然観察会」
稲刈りと餅つき 散策道作り 炭焼窯つくり
2001年9月8日(土)、9日(日)
三重県藤原町
三重県藤原町は、高齢者による「農業公園」づくりと、教育委員会による「屋根のない学校」で、注目を集めています。この農業公園は、広さ、56ヘクタールの広大な用地に、町の呼びかけによって、65歳以上の高齢者が、個人やグループ単位で、おのおのつくりたい農業公園のビジョンを描きながら、自分の作業場所を定めて、自主的な公園づくりの作業を行っています。この公園の一角には、高齢者の方々が植えた梅林があります。今年とれた梅は、藤原町特産の「梅ジュース」として販売され始めました。女性たちは、さまざまなハーブを種から芽だしし、公園の一角にハーブ園づくりを行っています。左官工事に関心を示すグループは、地元のセメント会社で不要となった耐火煉瓦を譲り受け、レンガの散策舗道づくりや耐火煉瓦の広場などを整備しています。この農業公園づくりは、高齢者のボランティアによるものではなく、参画したいと手を上げた高齢者自身が、自ら描いた公園構想をもとに作業を行ない、日当が支払われるという藤原町独自の新しい形の公共事業・生涯雇用の場づくりの一環として推進されています。
「屋根のない学校」とは、立田小学校、西藤原小学校、両校のニックネームとなっている「ホタルの学校」と「カジカの学校」にちなんでつけられた藤原町独自の教育システムで、これまでにさまざまな表彰を受け全国的にもユニークな取り組みです。学校から屋根を取り払い、地域の中の生き物や社会の中で、学んでいこうという意味がこめられています。
この農業公園と「屋根のない学校」のある藤原町古田地区は、とても活力ある地域です。この地域だからこそできる里地里山活動を、今回は実践してみました。この地区は、農業公園と尾根を挟んで隣接する集落で、「ホタルの学校」のある地域です。
このイベントの中心を担ったのは、「散策道作り」は、ヘルメットをかぶりチェーンソーを振り回すグリーンボランティア「森林づくり三重」の精鋭部隊と地元の森林組合の方々。「炭焼窯つくり」は、隣県で現在も炭を焼いている製炭職人の川添さんと地元の作業部隊の方々。「稲刈りと餅つき」は、古田地区農事組合の面々。そして、自然観察会は、里山スポークスマンのケビン・ショートさんです。このイベントに参加したのは、イオングループのジャスコが事務局を担っている5つのこどもエコクラブの小学生たちと、地元の「屋根のない学校」の先生や生徒、地元の老若男女のさまざまな方々などで、のべ300人の方々の協力で行なわれました。
2日間の作業によって、大人用の大きな黒炭窯と子ども用の体験窯が完成し、山間の尾根伝いには、全長約2メートルの自然観察舗道が完成しました。この2日間の様子は以下の通りです。
ケビンさんの里山自然観察会
【虫や動植物を観察することは友達を知ろうとすることと同じ】
ケビンさんは、20歳の時に来日し、日本の農村の魅力に取りつかれ、30年以上日本に住んでいます。各地で自然観察会や生き物の調査研究をしておられますが、特に、田んぼと林の境にすむ生き物の多様さに注目しています。ケビンさんが好きなことは、今でも子どもの頃と同じように、一日中、虫をとったり植物を見たり、会った人と話をすることだそうです。
ケビンさんは、「新しい友達ができたら、その友達がどんなところで、何を食べて暮しているか、好きなものや怖いものは何か、知りたいでしょ。それと同じように、見つけた動植物について知ろうとすることが『自然観察』なんだね」「虫眼鏡で小さいものを見るのは、それを拡大するのではなくて、自分が10センチの人間になったつもりで観察するんだ」というように、自然観察の心得と楽しさをユーモアを交えて話します。また、自然観察のもう一つの楽しみは、途中で作業をしている農家の人に話を聞くことだとか。古田地区でもさっそく、エゴノキの実についておばあちゃんに聞いたところ、昔は洗濯石鹸代わりに使った、という話をきいたそうです。
観察会では、小学校の付近の田んぼと林の間を歩きました。極普通に見る植物や虫も、ケビンさんにかかるといろんな面白いお話がきけます。子ども達は、夢中で生き物を探してはケビンさんの興味深い話を聞いて目をまるくしていました。
稲刈りと餅つき
【50年前の稲刈り】
鎌を使っての手刈りと足踏み脱穀機での脱穀。子ども達は、50年前の稲刈りを初めて体験しました。自分の胸の高さくらいにまでなった稲を、かがんでザクッと刈り取ります。日差しが照っていたので、田んぼの稲刈りと用水路での水遊びとを行ったり来たりしながら楽しんでいました。足踏み脱穀機は、最初は重いけれど、リズムに乗ってくるとガォーンガォーンとあじのある音を出して勢いよく回ります。自分の身体を使っての農作業。そのあとは、地元の方々と一緒に杵と臼での餅つきに参加して味わいました。
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