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里地里山保全活動
第1回「里山の暮らし、共に生きる文化を発見しにいこう」報告
秋田県象潟町鳥海山
平成11年8月13〜28日

鳥海山大好きな人あつまれ!

「鳥海山大好きな人あつまれ!」という呼びかけに、8月8日(日)象潟町の会場には、幼稚園児から老人の方まで様々な世代の男女が40人集まりました。
 これから10日までの3日間、鳥海山大好きな人たちが力を合わせて、紙芝居づくりに取り組みました


(1)お手本から興味付け

 まずは、神奈川県鎌倉市のお母さんたちの育児グループ青空保育「なかよし会」が造った「ゲンジボタルのげんちゃん」の上演を、鎌倉市の竹田薫さんと渓吾君が演じてくれました。
 紙芝居というものはどういうものなのか。紙芝居を知らない子供たちも、遠い昔に記憶のあるおじいちゃんも、まずは紙芝居を見ることから始まりました。
 紙芝居の上演の後、「ゲンジボタルのげんちゃん」を製作するに至った経緯の話がありました。谷戸の保全活動を行っていく中で、ホタルの鑑賞会を行ったところさまざまな人がいたこと。ホタルをもって帰ってしまう人、田んぼに入って荒らしていってしまう人、ゴミを捨てていってしまう人など多くの問題を発生させてしまいました。この出来事を機会にホタル鑑賞のマナーについて考えなおすことになりました。そして、横浜自然観察の森が、実践している紙芝居による啓蒙活動を行おうということが、お母さんたちの話し合いできまり、この製作に取り組むようになったとのことでした。
「ゲンジボタルのげんちゃん」上演から、環境保全と紙芝居づくりの興味づけをすることすることができました。
 この意識の共有の後に、横浜自然観察の森でレンジャーを行っている大屋さんに、紙芝居づくりのステップを話してもらいました。

(2)情報曼荼羅づくり(アイデア・ラッシュ)

 「鳥海山のどこが好き」「どのようなところ」なのか、参加者に次々に単語で出してもらい、それを板書していきました。
 メダカ、高山植物、ブナ、ホタル、岩牡蠣、信仰の山、ハタハタ、アイガモ、漁師、鳥海マリモ、マスとサケ、火山、雪、覚林和尚、熊、九十九島、手長足長、水、鳥と海と山などなど子供から老人までいろいろな声があがりました。板書された内容について鳥海山麓以外の参加者や子供からの「それ、わからない」という声には、その場で説明が行われ、鳥海山麓の自然と環境のことが再認識され共有されました。

(3)グループ分け(人間KJ法)

 鳥海山の好きなとこら、アイデアや意見が出尽くしたところで紙芝居をつくるグループ分けが行われました。まずは、アイデアラッシュしたもののなかから、各人が興味を持っていること1つを紙に書いてもらいました。そして、「4つのグループに分けます」と参加者に伝え、仲間探しをしてもらいました。大人も子供も自分で書いたシートの文字を叫び、また、叫ばれた声を耳にして、あるいは、別な人のシートの文字を読んで、自分が書いたものと関係ありそうな人とくっついて行きます。決して、書かれている文字を読まずに、単なる好きなもの同士でくっついてはいけません。
 いつまでも、ひっつかずに、うろちょろしている人には、あっちだこっちだという声が浴びせられます。賑やかにがやがややった後、無事4つのグループに分かれることができました。
目次
里地里山保全活動
里地里山保全活動
00 里地里山保全活動とは?
01 秋田県鳥海山
ブナの植林
02 愛知県美浜町
竹炭焼き
03 島根県三瓶山
山地放牧と野焼き
04 長野県飯山市小菅
山の手入れ
05 三重県鈴鹿市
石組み
06 山形県最上町
地元学 (小学生版)
07 岩手県西和賀郡
地元学 (地域版)
08 北海道白滝村
水路と有機農業
09 神奈川県横浜市
ケビンの観察会
10 埼玉県武蔵野台地
落ち葉掃き
11 埼玉県小川町
自然エネルギー
12 新潟県佐渡島新穂村
棚田の復田
13 秋田県二ツ井町
杉の活用
14 三重県藤原町
里山テーマパーク
15 宮城県田尻町蕪栗沼
冬期湛水田
16 京都府綾部市
ふるさと拠点
17 沖縄県恩納損村
かまどづくり
18 神奈川県横浜市寺家町
ふるさと村
19 千葉県印西市
都市の里山
20 まとめのシンポジウム
(4)絵コンテづくり

 グループ分けが済んだ所で、各人が思い描いているものを絵コンテ・シートに記入していきます。このシートはA4サイズで、上半分が絵を記入する欄、下半分が説明する欄になっています。「環境、人の結びつきで絵コンテづくりを行ってみてください」とだけ参加者に伝え、あとは参加者の自由に描いてもらいました。絵の下手・上手いは関係ありません。自分が感じていること、捕らえてみたいこと、人に伝えたいことを表現していきます。小さな子供も自分の思い描いていきました。傾向として、大人は理屈に走り絵が細かく、子供は一つのテーマを大きく描いていました。

 
(5)個人の思い描いているものを共有

 各人が絵コンテを作成し終わったら、それぞれが作成した絵コンテ・シートをまわし読みし、まわし読みが終わったらそれぞれが作成した絵コンテの説明を行いました。
 そして、グループに集まった時に掲げていたテーマと照らし合わせ、どのような内容の紙芝居を製作したいかグループ内で話し合いました。中には、やりたいことが既に決まっている人達もいましたが、参加している人それぞれが抱いている気持ちを共有し、それをもとに製作していくというプロセスも紙芝居ワークショップでは大切な要素なので、作成された絵コンテをもとに話しの展開を進めてもらいました。
 そして、一通り絵コンテの情報を共有し終わった頃を見計らって、コンセプト・シートの掲示・説明を行いました。内容は、下記です。

<コンセプト・シート作成>
 ・チーム名
 ・メンバー全員の名前
 ・紙芝居テーマ
 ・いつやるの?
 ・どこでやるの?
 ・どんなとき?
 ・だれに?
 ・だれが?
 ・伝えたい思い

 コンセプトシートを示したことで、各人それぞれが作成した絵コンテを、どのように紙芝居製作へつなげていくかが、明らかになったようでした。特に、何が問題で、どのようにしたいか。そのための方法として、特に誰に訴えたいかを明確にするにすることで、各人の製作した絵コンテを共有していくのに大きく役立ったようです 。

 
(6)発表・質疑応答

 4つのグループはそれぞれ「九十九島のメダカの学校」「熊からのねがい」「森と海の恋物語」「水と生物とくらし」というテーマで紙芝居がつくられることになりました。
 コンセプトシートに沿って発表することで、目的や伝えたいこと、対象者などが整理されていきました。また、発表を聞いている人にもコンセプトを共有することができます。聞き手は発表に対して、事実の確認、不明点、目的と伝える対象が正当かなどの質疑・アドバイスなどを行っていきました。発表・質疑応答をすることで製作する紙芝居の使われ方も明確になっていきました。

 
(7)ストーリーづくり

 各自で描いた絵コンテと作成したコンセプトシートとを照らし合わせ、ストーリーづくりをしていきます。事実の確認をするために老人の話しを聞いたり、あるいは図鑑や図書などにあたります。何を主人公にするか、どこで洒落やユーモアを折りこみ楽しく見せるかという工夫が検討されていきました。作成したコンセプト・シートが、起承転結でストーリーを作成するのに大いに役立ちました。ものごとの事実関係はやはり年配の方々が大きな力を発揮しました。聴衆としての受けに関しては、子供たちの意見が大きく参考となったようです。また、地域であたりまえとなっていて、見落とされていたことでも、地域外の人が一緒に参加することによって、改めて地域の魅力として見出されたこともありました。ストーリーが固まったら、再度、グループ全員で絵コンテの作成です。

 
(8)紙芝居の製作

 ストーリーが固まり、絵コンテも完成したら、紙芝居の製作です。厚手の画用紙にクレヨン、絵の具、切り絵、マジック、色鉛筆などを使って絵を描き、色つけていきます。
 そして、台本づくりもあわせて行われます。台本の形式は、紙芝居の裏に裏書する方法、別冊する方法の2つの方式に分かれました。
 ここまでくると、作業の分担も、助っ人もありです。あるチームでは絵の上手い人を読んできて描いてもらったり、方言でやりたいグループでは、他のチームの老人に方言に訳してもらったりと、チームを超えて紙芝居の製作に取り組みました。
 また、紙芝居を上演する小道具も必要です。紙芝居を入れる舞台箱は、ダンボールで作成しました。上演に際しては、拍子木、衣装などが上演者をその気にさせ、お客さんの気分も盛り上げて行きます。

 
(9)上演会

 さて、紙芝居が出来上がったら、各グループごとに上演です。上演のための練習時間も設けました。紙芝居で伝えたいことを伝えるには、やはり演技力が必要です。テンポ、めりはり、間、声、問い掛け、めくるタイミング。そして上演する人がそれぞれ役になりきることがポイントです。
 今回の上演では、各グループの上演の仕方にそれぞれ特色がありました。オーソドックスに一人で紙芝居を演じるところ。別冊の台本を利用して、役ごとに役者をそろえたグループ。台本がなく、アドリブだけで上演してしまったグループもありました。
 演目の素材は、どのグループも鳥海山に関わるもので、なかには製作者を登場する主人公にして親しみを持たせているグループもありました。
ちなみに、各グループの演目は以下の通りです。

 ●「九十九島のメダカの学校」
 ●「水と生き物とくらし」
 ●「森と海の恋物語」
 ●「くまからのねがい」

 
(10)意見交換

 上演をした後に、意見交換を行いました。そこでは、まずは事実関係の確認が行われました。例えば、「イトミミズは汚い水のところにいるので、メダカの生息地と合致しない」などというように。また、演じ方については、子ども達が理解できるかどうかの視点が大切にされました。そして、ユーモアも大切なポイントで、はたしてお客さんをたのしませているか等など。
 最後に、それぞれの紙芝居のテーマにある背景の環境についておさらいをし、ふだんの生活の中でどのように対応したらいいのかを確認しました。

 
(11)その他

 紙芝居ワークショップで1度製作したらそれでおしまいということはありません。既に存在する紙芝居をもとに、絵を換えたり、話しの内容を付加したり、抜いたりすることがいつでもできます。また、関わるメンバーが変わってもかまいません。1つの紙芝居をもとに常に色々な人が関わり、アレンジしていくこともできます。

 紙芝居ワークショップでは、製作、上演を通して地域の環境や資産を見つめることが大切です。それを参加者全員で共有し、表現していきます。その表現するものに新たな参加者を巻き込んでいくことを目指します。老若男女が一緒になって取り組みができるのも、大きな特色だと思います。

 
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里地里山保全活動
0. 里地里山保全活動とは?
1. 秋田県鳥海山/ブナの植林
2. 愛知県美浜町/竹炭焼き
3. 島根県三瓶山/山地放牧と野焼き
4. 長野県飯山市小菅/山の手入れ
5. 三重県鈴鹿市/石組み
6. 山形県最上町/地元学 (小学生版)
7. 岩手県西和賀郡/地元学 (地域版)  
8. 北海道白滝村/水路と有機農業
9. 神奈川県横浜市/ケビンの観察会
10. 埼玉県武蔵野台地/落ち葉掃き
11. 埼玉県小川町/自然エネルギー
12. 新潟県佐渡島新穂村/棚田の復田
13. 秋田県二ツ井町/杉の活用
14. 三重県藤原町/里山テーマパーク
15. 宮城県田尻町蕪栗沼/冬期湛水田
16. 京都府綾部市/ふるさと拠点 
17. 沖縄県恩納損村/かまどづくり
18. 神奈川県横浜市寺家町/ふるさと村
19. 千葉県印西市/都市の里山
20. まとめのシンポジウム
人と自然が織りなす里地環境づくり
トキの野生復帰プロジェクト

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