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里地里山保全活動
第8回「食べる人々が創る農業」
北海道紋別郡白滝村字白滝・おやじの村
平成12年8月6日(日)〜8月13日(日)

「食べる人々が創る農業」は、大規模単一型の農業から、自分たちが食べるものを自分で栽培していこうという暮らし方をめざす取り組みです。家畜を飼い、肉や卵をいただき、堆肥をつくり、作物を育てていく。人々にとっても、自然にとってもやさしい農業です。作る人も食べる人も一緒になって、現在新たに母屋と農場の整備を行っています。8月6日〜13日の1週間、有機農園おやじの村の農業経営の体験と、新たに建設している農園の水確保のため沢からパイプラインの敷設、作業小屋の建設を行いました。
 白滝村の里地での楽しみとしては、どさんこ馬による森林・小川越えのホーストレッキング。それから有機栽培されたもぎたての「とうきび」は、茹でても皮ごと炭火で焼いてもとても甘ーく美味でした。


■北海道白滝村

 明治45年に開拓の鍬が入れられた白滝村は、北大雪の高原の村です。森林を伐り開き、土地を耕し、水を求め、大自然の中での人の営みを築いてきました。
 気温の日較差が大きいことからでんぷん質の高いおいしいジャガイモの産地となりました。この地では農業の大規模化が進められ、国内農業の中でも一人当たりの耕地面積が大きい農業を実践する村となりました。しかし、大規模化により単一化してしまった農業や農家経営により、自然災害や外国産輸入農産物の影響を受けるなどのもろさもあります。

■有機農園おやじの村


「有機農園おやじの村」のご主人・渡辺信吾さんは、農業の大規模化政策の中、大型機械の販売をするバリバリの営業マンでした。しかし農家の大規模経営化が進んでいく過程で、多くの農家が多額の負債のために破産・離農していく姿を目の当たりにして、自然と共生した小規模で多様性のある農業に地域での営みの方法を見出し、農園を開設しました。 農林漁業体験民宿の第1号ともなり、自然に近い状態で、どさんこ馬、ニワトリ、豚、アヒルなどを飼い、農作物は、栽培可能なあらゆる作物の栽培を心がける自給自足的な農業を楽しんでいます。豚やニワトリは1年ほどの飼育の後、加工業者にソーセージやハムにしてもらい、地域の人々や都会の消費者の人々と分かち合っています。

■「食べる人々が創る農業」


 自然や自然と共生した農業が「癒し」や「教育的な効果」があるという実践例があります。森林内に今新たに建設中の農園は、農地の開墾は豚の放牧による「鼻力」で開墾し、水は近くの湧水からパイプラインで導く予定です。施設をつくりながらじっくりと農場を築いていく予定で、直接農場を訪問して農場づくりや農業体験をするばかりでなく、消費者としての関わりなど誰でもどんな形でも参加できる農場づくりをめざしています。
目次
里地里山保全活動
里地里山保全活動
00 里地里山保全活動とは?
01 秋田県鳥海山
ブナの植林
02 愛知県美浜町
竹炭焼き
03 島根県三瓶山
山地放牧と野焼き
04 長野県飯山市小菅
山の手入れ
05 三重県鈴鹿市
石組み
06 山形県最上町
地元学 (小学生版)
07 岩手県西和賀郡
地元学 (地域版)
08 北海道白滝村
水路と有機農業
09 神奈川県横浜市
ケビンの観察会
10 埼玉県武蔵野台地
落ち葉掃き
11 埼玉県小川町
自然エネルギー
12 新潟県佐渡島新穂村
棚田の復田
13 秋田県二ツ井町
杉の活用
14 三重県藤原町
里山テーマパーク
15 宮城県田尻町蕪栗沼
冬期湛水田
16 京都府綾部市
ふるさと拠点
17 沖縄県恩納損村
かまどづくり
18 神奈川県横浜市寺家町
ふるさと村
19 千葉県印西市
都市の里山
20 まとめのシンポジウム
渡辺信吾さん手記

 定年まであと3年を残してやっとサラリーマンを脱出、百姓入門しました。
 人は「どうしてこんな村に来たのですか」と聞きます。
「人間が少ない村ですから」まずこう答えるのですが、ますますいぶかるばかりですので「この村は戦後農政の落し子みたいなものですから」とちょっと気張って付け加えています。
 戦後の混乱期も落ち着き、電気製品三種の神器もほぼ各家庭にそろった昭和30年代の始めにトラクターのセールスマンとなり30余年間、よくもまあ売ったものだと思いますが、ちょうどこの期間が北海道農業の一大変貌期となり、私はいわばその仕掛人に組み込まれてこの時代を過ごしたわけです。そして今住むことになったこの村は、この地方では最も早くトラクターが入りました。当時は30馬力級でも大型の部類、相当高価な財産ですから夜通しの賃耕作業などを重ねて償還に苦労をしたと当時の息子たち。今は立派な経営者になった村のリーダーの一人は私にそう語りました。そして今、農家数約60戸、100ヘクタール級の農業法人6グループ、かつて先人達が開拓の鍬を振るいながらも夢半ばにして去った標高500mの高原は、彼ら若人らが大型機械を駆使してみごとに開墾、本村を代表する一大耕地がそこに拓けています。
 さて農村は近代化の掛け声とともにいろいろな政策が打ち出され、いわく、都会のサラリーマンと同等の報酬が得られる、生活レベルが向上する、重労働から開放されるなどと宣伝されて、若人たちも発奮し大型化は進み、トラクターは1戸に2台、3台、さらに乗用車、トラックは当り前の時代になりました。
 わが村はそのままに実現したような農村です。近代化政策は本当に農民を幸せにしたのでしょうか。なるほど私がトラクターを売り始めた頃の生活風景に比べれば一段と恵まれたように思えます。しかし平均4千余万円の負債とはどういうことでしょう。彼らの勤勉な働きぶりは驚異的です。それなのに負債はむしろ増えていくというのです。農業近代化はすっかり色あせてしまいました。(後略)

<酪農学園大学「くらしのサイエンス No.18」(1995)より>

 
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里地里山保全活動
0. 里地里山保全活動とは?
1. 秋田県鳥海山/ブナの植林
2. 愛知県美浜町/竹炭焼き
3. 島根県三瓶山/山地放牧と野焼き
4. 長野県飯山市小菅/山の手入れ
5. 三重県鈴鹿市/石組み
6. 山形県最上町/地元学 (小学生版)
7. 岩手県西和賀郡/地元学 (地域版)  
8. 北海道白滝村/水路と有機農業
9. 神奈川県横浜市/ケビンの観察会
10. 埼玉県武蔵野台地/落ち葉掃き
11. 埼玉県小川町/自然エネルギー
12. 新潟県佐渡島新穂村/棚田の復田
13. 秋田県二ツ井町/杉の活用
14. 三重県藤原町/里山テーマパーク
15. 宮城県田尻町蕪栗沼/冬期湛水田
16. 京都府綾部市/ふるさと拠点 
17. 沖縄県恩納損村/かまどづくり
18. 神奈川県横浜市寺家町/ふるさと村
19. 千葉県印西市/都市の里山
20. まとめのシンポジウム
人と自然が織りなす里地環境づくり
トキの野生復帰プロジェクト

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