Image Photo
里地ネットワーク
検索
里地ネットワークとは?主なプロジェクト研究成果里地とは?里地を知るリンク集里地里山運動
top > 主なプロジェクト > 里地里山保全活動
里地里山保全活動
(財)イオングループ環境財団の里山保全事業
第17回「進化したツーリズムを考えよう」

平成13年12月8日〜9日
沖縄県恩納村



恩納村(おんなそん)は、サミット先進国首脳会議の会場となり国際的にも知られる村です。万座ビーチホテル、ムーンビーチホテルなど、名前だけならほとんどの人が耳にしているのではないかと思うリゾート観光の名所です。

一方、NHKテレビ連続テレビ小説「ちゅらさん」にでてきた「おばあ」のような暮らし振りを楽しむ方々もそこには住んでいます。

17回目の保全活動は、これまで大規模なツーズム中心だった恩納村へのリゾート観光のゆきずまりから、地域の自然と文化を楽しむ進化したツーリズム(エコ&グリーンツーリズム)の検討を行えないかという課題をいただき、沖縄リサイクル運動市民の会、エコビジョン沖縄の皆さんと共に実施しました。

進化したツーリズム

進化したツーリズムを考えると、私は平成12年に合同出版から農と食の環境フォーラムの牧下圭貴氏とともに出版した「進化したツーリズムを考える、エコシティーみなまたの歩き方」という本をあらためて思い返しました。この本の冒頭にご登場ねがったのは、水俣市の高原でお茶農家を営む天野茂さんです。天野さん家族の仕事は、その土地の山で育ったお茶の木から落ちた実生の苗を集め畑とし、強い苗だからこそできる無農薬有機栽培を行っています。お茶は年に2度ほど茶摘をし、1度目は緑茶、2度目は紅茶と番茶としています。この天野さん家族は、日本の無農薬紅茶の20%を生産する農家でもあります。人にもお茶にも自然にも負担をかけない生産方法をとり、空いた時間を、田んぼやビオトープづくり、いのししとの一騎打ち、囲炉裏であぶる猪肉やマムシ、…、雑木で作るゴーカート(だいごろう)遊びなどで日々楽しんでいます。この天野茶屋は、全国から変わった人が集まる密かな拠点になっています。遊びと暮らしと仕事が、地域の風土と生活文化の中でつくられているのが特徴です。この天野家族を恩納村にお呼びし、「進化したツーリズムを考える」というテーマで、私と対談形式で講演(まんざい)を行ってもらいました。「あたりまえの生活を楽しんでもらうこと」でも「ヨソからきた人にとっては、石飛の暮らしはあたりまえじゃないんですね」石飛にくると「目が飛びでたり、口がふさがらなかったり、無邪気に遊んでますよ」「一度来た人は何度も来ますね…」これまでのツーリズムとは異なる天野流の「何も与えない、何もない、ありのままのもてなし」に会場は低くうなずくようにざわめいていました。

かまど作りとツーリズムメニュー開発

天野茶屋の名物はなんといっても囲炉裏、この囲炉裏で天野さんが狩猟採取したものを何でもあぶります。ではとばかり、沖縄ならば「琉球かまど」。食文化の見直しから地域に植える伝統的な作物の種類が復活し、料理が始まり、そこから枝集めや植樹など、里山づくりも始まるに違いない。美味しいこと楽しいことを中心にすえると運動が継続するはず。かまどを中心に、植生、里山管理、ツーリズムメニューの増加、…と勝手な仮設を立て、かまどづくりを開始しました。イオン環境財団の岡田理事長、琉球ジャスコの方々、沖縄リサイクルの方々、地元恩納村の方々、およそ100名ほどで、かまどづくり、昔ながらの海水を使ったゆしどうふづくり(ゆしどうふ)、サーターアンダギー(砂糖を油であげるという意味のおかし)、野草の天ぷら、紅芋料理などなど、シサーづくり(赤土で作る獅子、守り神)も行いました。

かまどの技術

沖縄では、ここ30年程かまどづくりは、ほとんど見かけられなくなりました。このため、つい最近もかまどを作ったことがあるよという三重県伊勢市に近い佐官職人の斉藤吾郎さんと土木屋であり自然観察指導員の城山清さんを招いて、かまどづくりの技術を披露してもらいました。

目次
里地里山保全活動
里地里山保全活動
00 里地里山保全活動とは?
01 秋田県鳥海山
ブナの植林
02 愛知県美浜町
竹炭焼き
03 島根県三瓶山
山地放牧と野焼き
04 長野県飯山市小菅
山の手入れ
05 三重県鈴鹿市
石組み
06 山形県最上町
地元学 (小学生版)
07 岩手県西和賀郡
地元学 (地域版)
08 北海道白滝村
水路と有機農業
09 神奈川県横浜市
ケビンの観察会
10 埼玉県武蔵野台地
落ち葉掃き
11 埼玉県小川町
自然エネルギー
12 新潟県佐渡島新穂村
棚田の復田
13 秋田県二ツ井町
杉の活用
14 三重県藤原町
里山テーマパーク
15 宮城県田尻町蕪栗沼
冬期湛水田
16 京都府綾部市
ふるさと拠点
17 沖縄県恩納損村
かまどづくり
18 神奈川県横浜市寺家町
ふるさと村
19 千葉県印西市
都市の里山
20 まとめのシンポジウム
地元の方の感想

「あの2日間、恩納村には笑顔が広がったさ〜」
恩納村での第17回イオン里地里山保全活動は、わたぼうしみたいにふわふわした笑いの種運んできた。一日目の講演会の参加者は、水俣という日本の中でも有名な地域に住む天野さんから海の向こうの山間の話しを楽しくのんびりと聞き、何度か会場には笑いが沸いた。水俣型ツーリズムの体験談は、亜熱帯の地で独特な文化を育んできた沖縄の人々に自然と受け入れられていた。
2日目のカマド作りと有機農園作りはいくつものミニイベントを次から次へと展開し、まるで祭りの夜店のように盛りだくさん。みんな夢中になって作ったり食べたり、遊んだり、懐かしんだり、学んだり…。参加者みんなの口元がどんどんほころんで、とても満足げ。帰る間際に受付で書いてもらった感想を見れば、この催しが花まる印だった事は明らかだ。今後の課題は、笑いの種が絶えないように、カマドに火をつけて、体験学習とコミュニケーションを繰り広げることだろう。
 
ツーリズムは進化していく

 昨年より環境省・農林水産省の呼びかけで、「共生と循環の地域社会づくりモデル事業」が佐渡島と屋久島で実施され、島興しに活力が注がれているが、近々この沖縄でもその一連のモデル事業が始まろうとしている。
 このモデル事業は、これまでのハード面における徹底した基盤整備に対していくつかの提案を示そうとしている。それは、次世代までを含めた人と人との共生の課題、身近な生き物を中心とする多種多様な生き物、地域の固有種などを育む亜熱帯特有の自然と人との共生の課題、ひいては今を生きる我々人類のライフスタイルと自然環境との関係を問い直す事業でもある。
 農林水産省では、構造改善局が2001年1月、農村振興局と名称変更され、農村整備の方向性に新たに「環境との調和」という理念が加えられた。この「環境」という言葉には、様々な概念が含まれているであろう。農村に代々伝わる自然の恵みを活用して暮らす智恵、地域で生息する様々な生命と共生する智恵、そして、地域の恵を活かす食文化やそれらを風土と共に活用する智恵など。生物の多様性保全だけではなく、先人から伝えられた伝承技術や生活文化を地域特有の社会環境と捉えた「環境との調和」が根本的に求められていると解釈している。
 地域固有の植物や農作物の種を復活させ、地域で育て、人々の手で収穫し、恵みとして感謝しながら食する営みの中から、揺るがない叡智が湧き出でてくる。
 こうした土地固有の生活文化の見直しは、山や里、川や海の環境、さらにはそれを次世代にどう繋いで行くかという教育のあり方について考える引き金ともなりうる。
 12月8日、9日の両日、恩納村で(財)イオン環境財団(岡田卓也理事長)、沖縄リサイクル運動市民の会及び特定非営利活動法人エコ・ビジョン沖縄(古我知浩理事長)、恩納村エコツーリズム研究会(仲西美佐子会長)らが主催し、モデル事業の足掛かりをつくる。
 8日には午後2時より恩納村コミュニティーセンターにて環境政策の先進地として注目されている熊本県水俣市でお茶農家を営む天野茂さん一家を招き、様々な人々が訪問している水俣のグリーンツーリズムについての講演が行われる。天野さんは水俣市の山間部で全国の国産無農薬紅茶の2割を生産し、水俣市エコツーリズムの「環境を学ぶ体験プログラム」において、お茶作りの体験と無農薬による作物栽培と山里の暮らしの紹介や、休耕田をビオトープにし、自然界で生き物が共に生きている様子を子供達と身近に観察することを実践している。まさに地に脚のついた彼らの取り組みからは、多くの刺激を受けるであろう。9日には午前9時半より夕方まで南恩納地区で伝統的なカマド作りと薪で炊くゆしどうふや野草の天ぷら作りなどのてぃーあんだ料理のイベントが行われ、温故知新を基盤とする「進化したツーリズム」を考える契機となりそうだ。両日ともに参加費は無料。是非多くの方々の参加してほしい。催しについての詳細、問合せは恩納村エコツーリズム研究会TEL966-2441まで。

里地ネットワーク事務局長 竹田 純一


掲載日:12月7日 沖縄タイムズ

 
前ページ 17/20 次ページ
▼
里地里山保全活動
0. 里地里山保全活動とは?
1. 秋田県鳥海山/ブナの植林
2. 愛知県美浜町/竹炭焼き
3. 島根県三瓶山/山地放牧と野焼き
4. 長野県飯山市小菅/山の手入れ
5. 三重県鈴鹿市/石組み
6. 山形県最上町/地元学 (小学生版)
7. 岩手県西和賀郡/地元学 (地域版)  
8. 北海道白滝村/水路と有機農業
9. 神奈川県横浜市/ケビンの観察会
10. 埼玉県武蔵野台地/落ち葉掃き
11. 埼玉県小川町/自然エネルギー
12. 新潟県佐渡島新穂村/棚田の復田
13. 秋田県二ツ井町/杉の活用
14. 三重県藤原町/里山テーマパーク
15. 宮城県田尻町蕪栗沼/冬期湛水田
16. 京都府綾部市/ふるさと拠点 
17. 沖縄県恩納損村/かまどづくり
18. 神奈川県横浜市寺家町/ふるさと村
19. 千葉県印西市/都市の里山
20. まとめのシンポジウム
人と自然が織りなす里地環境づくり
トキの野生復帰プロジェクト

▲このページのトップへ ▲このサイトのトップページへ
(c) 里地ネットワーク Network for Sustainable Rural Communities
〒156-0051 東京都世田谷区宮坂3-10-9 経堂フコク生命ビル 3F 株式会社 森里川海生業研究所内
TEL 03-5477-2678 FAX 03-5477-2609