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里地ネットワーク〜その理念と方法
はじめに
雑木林、田んぼ、小川といった身近な自然に恵まれ、長い歴史の中で、自然と共生した暮らしが伝えられてきたところ、そんな日本のふるさとのような地域が「里地」です。
ところが、戦後50年、都市化・工業化が進む一方で、里地は「過疎化」「高齢化」「農林地の放棄」といった厳しい状況におかれています。こうした中、まずは短期的な経済的利益を上げることが優先され、地域の自然や生活文化のありようや住民の参加を軽視した形での地域開発が進められることも多かったのではないでしょうか。その結果、里山、雑木林、田園、小川といった「ふるさとの風景」も失われていきました。
しかし、「里地」には、里地ならではのよさがあります。それは、豊かな自然、美しい田園風景、新鮮で安全な食べ物、地域固有の生活文化や歴史…どれも都市生活の中で失われてしまった宝ものではないでしょうか。さらに、里地は都市とは異なる未来の可能性を持っています。里地には、日々の暮らしや農作業を通じて育まれてきた人と自然、人と人との間の深い交わりを中心とした生活文化があります。また、生業(農業や工業)と生活との密接な関係を活かして、生ごみを堆肥に再利用するなど地域の中で程良い規模の物質・エネルギー循環を目指すことが可能です。まさに、里地は、これからの「循環・共生型社会」のモデルとなっていくことができるフロンティアなのです。
現に、日本各地で、里地ならではのよさを大切にしながら、それを活かして地域に活き活きとした生活文化と経済活動を実現させようとしている人たちや行政、企業等の活動がはじまっています。東京一極集中から地方分権へという追い風もあります。
里地ネットワークは、里地のよさを活かした地域づくり、すなわち「里地づくり」の芽を育て、広げていく人たちのネットワークとして生まれました。里地ネットワークは、里地と都市の地方自治体、企業、NGO(非営利組織)、大学、研究機関等とパートナーシップを結びながら、情報・人材の交流、地域づくりの企画、立案、実施、運営を行うための活動情報ネットワークです。
多くの皆様に支えられながら里地ネットワークの活動もようやく軌道に乗り始め、このたび、「里地づくり」に欠かせない考え方や方法について、「里地憲章」の形でまとめました。この憲章は、里地ネットワークに参加する人々の活動の指針となるものだけでなく、これから里地での地域活動、事業を直接行なう人々の指針となることを願っています。
なお、この憲章は、里地をめぐる社会状況等の変化を踏まえ、逐次改訂していきたいと考えています。 |
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