Image Photo
里地ネットワーク
検索
里地ネットワークとは?主なプロジェクト研究成果里地とは?里地を知るリンク集里地里山運動
top > 研究成果 > 里地文庫 > 里地事務局長 竹田純一執筆原稿: 継承されてきたモノやコトのエッセイ(4)
里地文庫
里地事務局長 竹田純一執筆原稿: 継承されてきたモノやコトのエッセイ(4)
暮らしを伝える道具たち
「わらで編む里地の文化」

NEWS森づくりフォーラム 2002/12/15 巻頭エッセイ
暮らしを伝える道具たち「わらで編む里地の文化」
里地ネットワーク事務局長 竹田純一

 
       
 血行のよさそうなおじいさんが、稲わらをひと掴み。真中をわらで縛り四つに折り曲げた。鷲掴みにしたひと房を、180度に扇のように開き、もうひとつの房を、残りの180度に開いた。ヒモで束ねた半分のわらが、1分も立たないうちに、円状に広げられた。
あまりの速さに目を丸くしている間もなく、今度は、反対側の2束を同じように、円状に広げた。束ねたヒモを軸に、上と下、二つのわらの円ができた。
 このわらを中心に突起にある丸い円盤に乗せ、今度は、わらなえが始まった。一周のわらなえが僅か3分。円盤からはずれたわらを、縄を編むように円状に織り込んでゆく。みごとだ。そして、早い。さっきまで、ばらばらだったひと掴みのわらが、5分後には、傘のような、盆のような形に織りこめられていった。反対側も同じように織り込み、8分後、ハサミで飛び出たわらを切り落とし、形を整え、目の前に渡された。
 これは何かと聞くと、米俵のふただという。僅か10分。米を作る農家なら誰しも作ったもんだとじいさんは言う。米俵1個に2個のふたがいる。だから、何百個も作るから、10分でつくれて当たり前らしい。木の床に座るときには座布団。ものを運ぶときのちょっとしたお盆。みていると他にもいろいろと使えるように思える。
 口をあけて感心していると、「コウモリをとって遊ぶときの円盤にもしとったな。」と輝く瞳で語りかけてきた。最上川に注ぐ鮭川の漁師であるこのおじいさんは、たくさんの川網をもっている。鮭をとる網。アユ用の投網、これらの網が使えなくなったときに、このわらの円盤に網を凧の尾のようにつけて空高くなげる。コウモリがこの不思議な物体を追いかけ、網に絡まり落ちてくる。
 コウモリも食べるのか? と聞くと、食べやせん。漁師の遊びじゃと笑われた。魚だけじゃなく、コウモリをとって遊ぶこの漁師。他にも、色々なものを、いともたやすく編み上げてゆく。わらを数本手にして、右なえ、左なえ、そして、三つどもえ。数本のわらが、縄になり、ヘビになり、道具へと変わってゆく。
事務局長竹田純一のプロフィールは、こちらへ
       
 山形県戸沢村、最上川と鮭川が合流点にある庄内地方のこの村には、最上川の蛇行が作り上げた最上峡とその変化に富んだ気候のために幹が幾重にも枝分かれした不思議な杉の群落がある。20年にわたる農民同士の韓国との交流から、コーライ館(韓国物産館)ができている。また最近では、学校教育と社会教育を同時に進める全国でも珍しい村としての注目を集め始めている。ここで今年の夏から里地塾が始まった。村の小学校は全部で4校。この4校の学区を順にまわり、地元のお祖父さんお婆さんたちから、子どもたちが、戸沢村に伝わる里地の文化を、残すこころみである。夏に続き行われた秋の里地塾では、戸沢学区からさまざまな木の実が集められ、おじいさんの指導のもとに、工作教室が始まった。その一つにわらを編むこのおじいさんがいた。  
       
前ページ   次ページ
▼
■販売書籍
 ・人と自然が織りなす里地環境づくり
 ・里山シンポ
 ・里山ビオトープ
 ・ぼくとわたしの春夏秋冬
 ・里地セミナー レポート集1
 ・里地・里山で遊ぼう
 ・グリーンレター22号 特集「里地」
 ・地球温暖化対策から始まる元気な
  地域づくり事例集

 ・エコシティーみなまたの歩き方
 ・里地だより−循環・共生の旅
 ・里地(里地テキスト)
■里地文庫
 ・寄稿レポート
 ・里地事務局長 竹田純一執筆原稿
 ・おすすめ図書

■データベース

▲このページのトップへ ▲このサイトのトップページへ
(c) 里地ネットワーク Network for Sustainable Rural Communities
〒156-0051 東京都世田谷区宮坂3-10-9 経堂フコク生命ビル 3F 株式会社 森里川海生業研究所内
TEL 03-5477-2678 FAX 03-5477-2609