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里地事務局長 竹田純一執筆原稿:生物多様性と里地(2)
里地里山と生き物(下)

「動物たち」124号 平成14年10月号
財団法人日本動物愛護協会
共生への道を探る 6 里地里山と生き物(下)
里地ネットワーク事務局長 竹田純一

 
       
「里地里山保全に向けた活動」

里地里山の手入れを行うということの意味は、現在の社会システムの中では、ヤブになって見栄えが悪いから作業が必要だという程度の必然性としてしかとらえない人が多いかもしれません。しかし、前半でお伝えしたように、里地里山というのは、絶滅危惧種の半分が生息する生物多様性にとって非常に大切な場所です。このような環境を人間も含めた多様性の保全という観点、さらに、安らぎや憩いの場を保全し、継承されてきた英知を保全するという視点も加えたさまざまな保全活動が始まっています。
生物多様性を保全再生する活動を、全国的に捉えるために以下の数値を参考にしていただきたいと思います。
環境省自然環境局における里地里山における活動団体数:972団体
環境NGO総覧における自然保護を行う団体数:2024団体
環境NGO総覧における森林保全を行う団体:917団体
森づくりフォーラムHPの国有林など森林整備を行うNGOの数:160団体
これらの中の象徴的な活動をいくつか紹介することで、保全再生に向けた取り組み形態の多様性を紹介したいと思います。
事務局長竹田純一のプロフィールは、こちらへ
       
■農地と湿地の生物多様性の保全
(宮城県田尻町蕪栗沼)

北上川下流域が氾濫した際の貯水池として機能していた蕪栗沼は、東北地方でも有数のマガンや白鳥の越冬地です。この沼に飛来するマガンを初めとする生物多様性をまるごと保全するために、鳥類の専門家である日本ガンを保護する会の呼びかけにより、沼の干拓計画が中止され、地元農家が理事長を勤めるNPO法人蕪栗ぬまっこくらぶが設立されました。農家と鳥類の専門家、市民が参画した保全活動が積極的に行われています。沼に隣接した農地を、かつての湿地に戻し、周囲の農地では冬に水をはって、マガンや白鳥の餌場をつくる取り組みが、農家によって行われ始めました。このような農業は、手間と時間がかかるため一般的には敬遠されますが、農家自身の生物多様性保全への意識転換と、マガンや白鳥が訪れる田んぼのお米を購入する都市住民の消費行動、そして、農村と都市の新たな交流を通じた新しい新鮮な価値観が生まれ始めています。とはいっても、最初の一歩を歩みだすためには、、大変なエネルギーが必要です。農家の理解、冬に水を張る農業技術、鳥類の専門家と消費者の好買活動など、それぞれの役割が分担できないと活動は始まらないし、また、すぐに終わってしまいます。
 
       
■草原の生物多様性保全活
(島根県大田市三瓶山)

国立公園に指定されている三瓶山は、草地景観と草原に生える希少な草花で知られている草原です。ここではかつて、牛の山地放牧が行われ、牛の採餌活動や、毎年春先に行われる草原の野焼きなどによって、野芝とレンゲツツジをはじめとする多くの草花の生物多様性が保全されていました。
ここ数十年間の間、放牧と野焼きが中止されていたために、草原はヤブ化し、生物多様性は減少してしまい、美しい草原景観は失われてしまいました。
そのような状況の中で、野焼きを行っていなかったことが災いして、草が繁茂した草原い山火事が起こりました。町と消防署による検討が行われ、ヤブは危険であるから、野焼きを再開し草原の状態を維持しようということになりました。野焼きの準備には、農家が協力して、牛の採餌行動を活用した防火帯づくりが行われはじめました。最近では、市民が参加して、草原における生物多様性の保全活動が行われています。
この活動の背景には、三瓶山の草原景観と草原ならではの生物多様性を保全しようと活動している研究者と市民団体の活動があります。どのようにしたら草原の維持ができるか、伝統的な農業を活用した放牧の再開で、草原の維持管理ができるのではないか。また、放牧により牛の糞が果たす役割や機能などが研究され、官民一体となった保全活動が形成されました。
 
       
■谷津田における生活文化と生物多様性の保全
(三重県、神奈川県、高知県など)

三重県の赤目の里山や横浜市、鎌倉市の谷戸田では、かつての農地の管理方法を生かした保全と里山の再生活動が行われています。赤目の里山では、この農地管理の方法に加えて、都市住民の癒しの場としての里山づくりや、市民農園、椎茸栽培、トンボやメダカのビオトープ、体験宿泊施設など、さまざまな里山の原体験を楽しめる場作りが行われています。昨今では、環境教育や福祉、癒しの場として注目を集めています。
一方、横浜市にある寺家ふるさと村や恩田の谷戸、鎌倉市にある山崎の谷戸では、生物多様性の高い谷戸田一体を保全するため、市民による粘り強い活動が行われ、行政担当者や開発事業者への働きかけによって、里山(谷戸)自体、又は、谷戸の一部を公園として保全する試みが行われています。このような環境への配慮をもとめる市民活動の重要性は、生態系保全への関心の薄い開発事業者や行政担当者に対して警鐘を鳴らしています。
高知県中村市のトンボ王国では、荒廃農地の保全を行うために、休耕田の湿地化を図り、谷あいの谷津田を全面ビオトープ化した公園づくりが市民団体と自治体との役割分担のもとで行われています。水族館などの観光施設とあわせた地域振興が行われ全国から注目を集めています。

 
       
■里山トラストによる生物多様性の保全
(東京都及び埼玉県の武蔵野台地、他)

武蔵野台地周辺には、里山、平地林、落ち葉堆肥の仕組みや、オオタカを頂点とする豊かな生物多様性があります。これらの自然環境を不法投棄や不法な焼却場から守ろうと、市民及び農家が自然環境調査や里山保全活動だけではなく、保全活動の場自体を保存しようと、相続などで手放される里山の買い上げや借り上げを行っています。さもなければ、不法な開発や不法投棄によって、里山の生物多様性が壊されてしまうからです。

おわり
 
       
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