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里地事務局長 竹田純一執筆原稿: 継承されてきたモノやコトのエッセイ(1)
暮らしを伝える道具たち
「でろはきかご」

NEWS森づくりフォーラム 2002/7/15 巻頭エッセイ
暮らしを伝える道具たち「でろはきかご」
里地ネットワーク事務局長 竹田純一

 
       
佐渡の前浜海岸で、柄のついたザルを見せてもらった。柄の長さは、身の丈ほど。細長いこのザルは、真竹でできていて、非常に軽い。ドロや石をすくう程頑丈ではなく、魚をとる程深さはない。ドジョウ程度ならちょうど良いのかも知れないと私は内心考えていた。しかし、海や川で水面をすくうには、ザルの目が細かく水は抜けない。と、するとドジョウをとっても土が目詰まりする。「旅のモンにはわからないっチャ」旅のモンとは、ヨソモノ、つまり、外部者のことである。地元の集落に定住していない人は、皆、旅のモンだ。だから息子や親族でも、旅に出ている間は、旅のモン。旅から帰ってくると、ようやく、地元のモンになれる。これは結いの習慣と相まっていて、旅のモンと公民館構成員を明確に分けている言葉でもある。 事務局長竹田純一のプロフィールは、こちらへ
       
さて、本題のザルの話。「やって見せんとわからんチャ」「見せてやれッチャ」と80才近いおばあちゃんの言葉に、青年が実演してくれた。「こうするんじゃ」と、田んぼの中に入り、稲穂の表面をさらっとさらうように掃いていく。「で、何してるの?」思わず一緒にいた娘が聞き返した。「わからんかのー」。地元のおばあさんが答える。佐渡では、集落ごとに方言が違う。不思議な多様な文化の混在している場所だ。「ほれ、やってみー」と渡される。さーっと掃くように穂をすくう。「それじゃ入らんよ」「こうするんじゃ」とやや深く掃いてみせる。なるほど。小さな目に見えないような虫を取っているようだ。この時期、穂に虫がつく。それを、さっと落としながら、ザルにいれて掃いていく。深さは程々、ザルの目も細かい。軽いのは、これで、全部の穂を掃いてまわり、虫をとるためだった。  
       
福岡にある農と自然の研究所の宇根豊さんは、「虫見板」というのをつくった。紺色の下敷きで、文房具のように見える。しかしこれは、稲穂の間に入れて、穂を揺すると、「虫見板」の上に稲穂と同系色の虫が落ちて、下敷きの紺色との対比で、一目瞭然、穂につく虫を判別することができる優れものだ。この下敷きには、虫のイラストと定規が印刷してあって、すぐに、虫の名前、益虫、害虫、ただの虫の判別ができるようになっている。益虫は害虫を食ってくれる虫、害虫は、穂を食う虫。ただの虫は、悪さをしない虫。ただ、このただの虫が、実は赤とんぼやドジョウの餌だったり、田んぼの生態系を支えている大切な役割を果たしている可能性がある。  
       
このザル。害虫を取り、益虫は勝手に逃げていく仕組みになっている。小さな虫以外は、入ってもすぐ逃げる。穂にしがみつくようにして、穂を食うやつを捕まえる道具だった。軽くて振り回しても疲れない。一度に稲穂をたくさんすくえるようにザルは細長い。しかし幅は必要ない。深さといい、サイズといい、実に良いプロポーションに見えてきた。  
       
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