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寄稿レポート:糸長浩司の欧州エコロジカルレポート(6)
スウェーデンのエコ・コハウジング的「エコビレッジ」の実践


英国から始まってスカンジナビアを巡る4.5ヶ月のエコハビテーションの調査旅行は本日で終了です。日本への帰国は10月初旬ですが、それまでは、英国でゆっくりとまとめの作業に入る予定ですが、どうなりますか。また、旅に出る可能性もありますが。現地通信は、このスウェーデン編でとりあえず、中締めといたします。長い間、長文を読んで頂き感謝いたします。
 スウェーデンは丁度、サマー・バケーションのまっただ中で、忙しく調査している自分にあきれながら、エコビレでのサマーシーズンに建設作業をしている人達に会ったり、サマーシーズンでも仕事をしている行政職員や、エコ建築家に会うことが出来、それなりの成果はあったと感じています。また、今回の私の調査内容にスカンジナビアの人達も興味を示し、調査レポートを送る約束を随所でしてしまっているので、英文でのまとめ作業をするという仕事が残っている。
 今回のスウェーデンでの調査の結論的なことを先に述べると、スウェーデンのエコビレッジと言われているものは、どちらかというと、コレクティブハウジングの中で、建築素材や省エネ、パッシブ・ソーラー、コンポストトイレの使用等をテーマとして、エコロジー的な配慮をしているものをエコビレッジと名乗っている感じである。エコビレッジとしての自立性や自給を追求しているのはまだ出現していない感じである。しかも、エコ住宅の形態が類似しており、エコビレとしての独創性やユニークさに関しては、多少物足りない点もある。ただ、エコ住宅でかつ、コレクティブハウジングでの居住形態が、一つの住まい方として社会的な位置を獲得し始めているというということは重要な点であろう。

糸長浩司 日本大学生物資源科学部助教授
パーマカルチャー・センター・ジャパン代表

目 次
1. シュタイナー・セミナー=ヤナのエコビレッジ
2. スウェーデンのエコ・住宅、都市づくり事情
3. 郊外型・エコ・コレクティブハウジングとしてのエコビレッジ
4. 改造型のエコ・コレクティブハウジングとしてのエコビレッジ
5. 林間型エコビレッジ
6. ビレッジ・アクション・ムーブメント
 
     
1.シュタイナー・セミナー=ヤナのエコビレッジ

 北欧を旅していて、多くのエコビレ関係の人達から進められた場所が、ストックフォルムの近郊のヤナという場所にあるシュタイナー・セミナーとその関連のビレッジです。有名な哲学者のルドロフ・シュタイナーの思想に基づいて、子供の成長過程に合わせた自由教育から、人間形成、そして、バイオダイナミックスという有機農業まで幅広い人間形成、社会形成の実践的で精神的な場所を築こうとしている、スカンジナビアの拠点的な場所です。私も、建築の勉強を始めた頃、確か、上松さんの著書によるシュタイナーの建築関係の本を読んで、建築のもつ精神性・哲学性に感銘した覚えがあり懐かしい思いもあります。
 ヤナのプロジェクトは、最初は、ハンディキャップの子供達のシュタイナー教育の場として小さくスタートし、次第に大口の融資者が現れ、土地を買い足し、また、バイオダイナッミク農法に興味のある、関心のある農家が周囲で増えたり、移住してきて一大拠点となっている。ここで、学んでいる学生は、基本的にはシュタイナー・学校の先生になるような人達が多いのであろう。施設内にも、低学年のためのシュタイナー学校が併設されている。学生達は、人智学、芸術、バイオダイナミックス農業等を学ぶ場である。
 ここの建築を一手に引き受けていたのが、ここに住みながら建築活動をしていたアスムセンという建築家です。残念ながら、彼は98年に他界していて会えませんでしたが、彼と一緒に設計活動をしていた建築家達に会うことはできた。彼の作品は、日本ではあまり紹介されていないようですが、北欧の木を使った住宅や、シュタイナー・スクール、分ホール等を設計しています。デンマーク等で見たエコビレッジの建築形態にも多少の影響を及ぼしているような感じもします。色彩も青色やピンクを巧みに使い、心の穏やかになる建築です。
 彼の事務所は、農地のはずれの湖畔に近い場所に建つ、古い納屋を改造した建物である。現在も何人かの建築家が仕事をしている。その内の一人のデンマーク人の建築家にあったが、かれは、12年程度アスムセンと仕事をしていたという。彼に、アスムセンがいつ頃から、エコロジーという言葉を使用するようになっているかと尋ねたが、最初からエコロジー的な発想を建築において持っているという回答である。すなわち、自然の素材の使用等含めて、人智学を学んでいる建築家であるから、エコロジー的な発想は当然あるとは思う。
 主要な施設は、駐車場の入り口に、アート室とお店、劇場を兼ねた大規模な文化交流センター施設、その周囲に学生達の宿泊等、シュタイナー・スクール棟、図書館棟、奥に、バイオダイナッミ酢での農園と緑化センター、その反対側にクリニックセンターである。クリニックセンターは、開放されていて、雰囲気としては、老人ホーム的な感じではあるが、明るい感じの中庭がよい。この施設の周囲に、学生達やここで働いている人達のための宿泊棟が独特の形と色で構成されている。
 文化センター施設には見学者やレクで訪れている人達が多くいる感じで、建物内の景観は、シュタイナーのゲーティウムを連想させる色使いと形である。農園内は、ハーブ園はキレイに手入れしている感じであるが、その他の農園はバイオダイナミックスにしては、多様性に欠けるような感じである。夏休みか、それとも、最近雨量が少ないためか、農園に活気がない。
 敷地内の湖畔沿いの農地と湖の間には、数個の池が掘られている。この場所は、敷地内の数多くある施設の浄化池を兼ねているものである。多少、富栄養化している池もあることはあるが、とても自然な感じである。これら敷地全体のラントスケープデザインは、現在案内をしてれた女性建築家インゲヤードの事務所の所長である建築家のボルターがしている。
 ボルダーは長年、アスムセンと協同作業をしていたのだが、現在手がけている円形の教会を見せてくれた。アスムセンの設計のバイオダイナミックス農家の集団カントリーエレベーターの施設のそばに建つ教会である。円を二つ組み合わせた形で、素材がユニークである。藁と粘土と砂を混ぜて、ブロック状にしたものをインシュレーションを兼ねた壁素材としている建物である。教会の人達の参加で建物ができること、また、材料費と手間賃が安く済むし、エコ材である。ローテク建築。ブロックの大きさは、素人でも作りやすく、運び安い大きさにしてある。
 彼女にスウェーデンのエコ住宅がみんな同じ用な形になっているという批判をしたら、スウェーデンでの住宅シェアーに占める住宅協同組合の比率が高く、その標準化の影響が大きいという回答であった。住宅協同組合の評価は住宅の一定の質の向上という視点からは評価できるが、いわゆるエコビレッジ形成のようなDIYでの住宅地づくりに関しては、巨大組織での対応は難しいということになろうか。
 スウェーデンの「エコビレッジ」の多くは、エコ・コレクティブハウジングであり、住宅協同組合の関心がエコロジーに向かっている中で、老朽化住宅の改善も含めて、「エコ・コレクティブハウジング」が増えていく感じである。それが、標準化された方向で、規格品化の流れの中に進むことが、一方で「エコビレッジ」の独自の存在や個性が消されてしまわないかと、余計な心配の気持ちが起きてくる。
 
     
2.スウェーデンの地方都市での住宅地づくり事情

(1)地方都市の円楼風の集合住宅
 スメデン・エコビレッジのある内陸部の都市ヨンショッピングでみた集合住宅地である。Grastropという住宅地であり、教科書的なパターンの完全な円形であり、5つある。60年代の後半のガーデン・シティの試みで建設されたものであろう。中国の円形土楼のスウェーデン版といえる。直径は、約160m程度で、真ん中に円形の広場を持つ。各戸は、住宅の前後に庭を持ち、中心部に面した場所に、車庫を兼ねた小屋が建っている。この小屋の間は円形の歩道がつながっていて、行き来は自由である。歩道ネットワークが形成さて、中庭の2カ所から別も円形住宅地にアプローチできる。各戸は、表・ウラの庭は競うように、ガーデンをキレイにしている。一つの円形住宅地で、36世帯である。

(2)エコシティを目指すヨーテボリ市
 スウェーデンで第二の都市で西端にあるヨーテボリ市は、スウェーデンの中でもエコロジカルな都市づくりに熱心な都市として知られている。国の研究機関が出している『エコシティ』の指針本でのケーススタディの都市となっている。
 その実践事例として、エコセンターに行く。なかなか良くやっている団体である。総予算は、年間2.5百万sekで、常住スタッフが7人で他にボランティアが10人程度という。敷地は、元の郊外の病院跡地であり、近接して、老人ホームや、シュタイナースクール、また、ユーゴからの難民の最初の滞在場所の施設もある。この敷地は、二つの建設会社の所有地である。広大な敷地内には、企業の事務所もある。
 エコセンターの組織は、ヨーテボリのフレンド・オブ・アース、環境団体、行政等での合同の運営で、企業も出資をしている一種の第三セクター的ではあるが、案内をしてくれた所長は、フレンド・オブ・アースのメンバーである。環境市民団体と行政、企業での一種のグランド・ワーク的な団体であろう。環境教育、それも実践的な環境グッズ関係、住宅関係も含めての企業の商品の展示場所ともなっている。スウェーデン人の合理主義である。病院の施設を改造したところがセンターとなっている。
 展示内容は、地球環境問題一般、エネルギー、食糧、コンポストトイレ、エコ建築材料、マスストーブ、自動車等の輸送関係等である。多様なコンポストトイレの展示には驚いた。色々な会社がある。彼の説明では、今後、スウェーデンでの需要は増加するという。サマーコテージでの需要である。ここの自治体が導入を決めたいということである。
 彼の話では、英国のCATは兄弟的な存在であるという。また、このセンターの試みには、EUの資金も使われており、ドイツとの連携が強い感じである。ここは、ヨーテボリの環境運動や環境教育の情報交換や情報拠点となっているし、また、実質的なエコ商品が展示されているので意味がある場所となっている。このような場所でのエコ住宅への普及活動が、国民の自主的なエコ的な建設活動や関心を高めていることになろう。

 ここで作成しているエコサイトのマップの事例地の団地を見に行く。60年代以降の各種の集合住宅が岩盤の上の緑の間に林立している風景で、山岳都市を思わせる、市の北にあるベルグションという団地である。各開発時代での集合住宅の見本市のような団地形成である。幾つかのコミュニティブロックから形成されている。パッシブ型の住宅もある。
 驚いたのは、円形土楼のタイプの中層集合住宅が、2カ所に建設されていた。完全な円形ではなく、1/4や、3/4の組み合わせである。断崖絶壁の所での円形集合住宅は、中国での円形土楼の雰囲気を思い出すほどである。中心部は、剥き出しの岩があることから、この岩を避けて円形集合住宅の計画をしたのかも知れない。どちらにしろ、北緯の高い地域だからできる冒険的な(多少デザインの暴力的な)試みではある。
 住民達のエコ活動も始まっており、古い時代に建設された集合住宅のブロックの斜面緑地が何と、パーマカルチャー的なデザインで、住民の参加による菜園が建設中であり、ハーブや野菜が比較的よく管理されていた。団地でのコミュニティ・ガーデンに相当するものであろう。東の低地帯の林間地にはアロットメントがあり、比較的よく生産管理されていた。エコセンターの所長が今後は、都市での食糧生産にもっと取り組むべきであるという意見を述べていたことが印象に残った。

 市内でのエコ住宅の改造プロジェクトして、3層集合住宅を改造して、パッシブ型の建物に変え、かつ、南面に共同利用での野菜生産のグリーンハウスを建設した建物を見た。60年代建設の団地の再生計画であり、グリーンハウスが設置されている建物は外部もちゃんと畑をしていて、なかなか良く作物が育っていた。このプロジェクトの本ではコミュニティ活動も成功しているということである。しかし、不思議なのは、その他の建物でこの種のものが増えてこないということである。この種の取り組みが特殊事例である限りは、スウェーデンもまだまだということか、この分野では。

 
     
3.郊外型・エコ・コレクティブハウジングとしてのエコビレッジ

(1)ストックフォルム市内のエコビレ:アンダーステンショーデン
 ストックフォルム中心市内から地下鉄で、10分程度行ったところの住宅地の一角にあり、アーバン・エコビレとして有名な場所である。林間の中の岩の上に建設された住宅地であり、南面は市民運動公園となっている環境に恵まれた場所である。比較的完成度の高い、エコ・コハウジングといえる。建物は、フレームと屋根だけ、フレームと屋根と壁と床、完成品の3タイプを選択することで、後は、居住者が自主的な建設する過程をとっている。
 入り口の横が共同駐車場であり、その横はコモン・ハウスで、大きな煙突が建っているので、共同のセンターヒーティングをしているのであろう。そこから、南斜面の段差を活用した住宅配置となっている。林間歩道に沿って、住宅が並ぶ感じで、木々の間に、木造の住宅群が見える。南面したテラスと庭の活用方法は、典型的な北欧の姿である。樽の雨水タンクも個々の家にあり、全ての家がソーラー・パネルを設置している。コンポストトイレであり、小は近郊農家が取りに来るという。敷地の南側には、雑排水の浄化用のタンクと池が設置されている。

(2)地方中心都市の郊外型エコビレッジ
1) ヨンショッピン市のスメデン・エコビレッジ
 郊外住宅地群のはずれの森をゆけると、赤い壁とレンガ色の屋根が目立つ木造住宅群が牧草の先に展開する。入り口に駐車場とゴミの分別回収の共同置き場。その先に24世帯用の2戸連の住宅が緩い曲線系で並び、奥にコモンハウスがあり、その横は、浄化処理の最終過程である浄化池がある。その周囲は、居住者用の農園となっている。コモンハウスの先は森林で、行政管轄の保護区域となっている。
 案内役のリアは、依然のここのエコビレの責任者の女性であり、このプロジェクトを立ち上げる上での中心人物である。このエコビレはストックホルムの工科大学の建築の先生(ヴアリス・ボカデルス)達がよく訪れる場所のようで、東工大の梅干野さんも訪れ、日本でのテレビ放送のビデオでここが紹介されているもの、多分放送大学のものか、を見せてくれた。エコ住宅としての紹介である。エコビレをエコ村と訳していたのが印象的である。
 協同でのハウジング・アソシエーションの所有であり、住宅ロットの権利金は85,000SEK(350万円程度)である。毎月、組合には、6685SEK/月を払っているという。共同管理費としては、月600−700SEK程度である。
 ここのエコビレッジのプロジェクトは、1988年にヨンショッピングの市役所での政治的な提案として環境系の政党からの提案があり、市の音頭で計画づくりが始まる。1990年に、エコビレッジ・ソサエティーという組織を立ち上げ、リアが会長になる。そして、計画づくりでは地元の二人の建築家が参加している。美、エコ、健康に注目して計画づくりをする。都市に近くところで田舎的な暮らしを楽しむ。それに興味のある市民達が集まり、勉強会や先進事例地を見たり、電話等での意見を聞いているようである。最初に参加したのは、80家族で、協会に参加したのは32家族で、最後まで残ったのは、5か族であるという。この間に、スウェーデンを襲った経済ダウンがあり参加者が減少したらしい。そして、91年に、ここのコハウジング・アソシエーションで土地を市から取得している。
 この時点では、この種のエコビレがスウェーデンで9つあったという。ここが、10番目である。ただ、ここでのエコビレの定義は、広い意味での郊外住宅地の環境配慮型住宅形成という意味で理解した方がよい。環境配慮型の郊外コレクティブ住宅地の意味と考えて良い。自給自立型を目指したエコビレッジとは意味が異なる。
 浄水は敷地内の井戸を活用している。充分であり、雨水利用はされていない。住宅はパッシブソーラー、屋根での温水パネル、コンポストトイレでの大小の分離と、住宅地内での沈殿タンクと、処理タンクとその後の処理水の池での植物浄化した後、小川に流すシステム。小水は、近くの農家が回収に年に2回程度くる。壁は、伝統的な赤色の木壁である。
 コモンハウス内は、炊事、共同利用の大型の洗濯機、卓球場、集会室、ゲストルームで構成されている。デンマークのコハウジングのコモンハウスを小規模にした感じである。ここでの共食はないという。何かのお祝い等での集まりがある時に使用したりする。緩い感じの社会コミュニティを形成している。敷地内のガーデニング等は共同の作業チームを作って、順番に行っているという。4軒で一チームで4日間単位での順番である。
 案内してくれたリアの家で夕食をごちそうになる。彼女は、市の女性センターのようなところで働いているらしい。旦那は、市の博物館の先生である。ここの住民は、比較的、中流層の仕事を市内でしている。
 ここに住むマリンというフリージャーナリストの女性にあった。小生の今回のエコビレ調査旅行に興味を持ち、色々質問されたり、写真をとられたりした。逆の立場になってしまった。後で、英文のレポートをメールで送る約束をする。彼女は、エコビレに興味を持っており、フィンダーフォーンでの一週間の体験コースに参加していて、小生も参加していることをいうと近親観がましたようである。
 この時に、私が指摘した点は、スウェーデンの「エコビレ」は、郊外地型のエコロジー配慮型の住宅であり、自給・自足的な点や、社会・精神・経済的な意味での自立性・共同性を追求しようとしているわけでなく、緩い形での環境と共生して住みたい住民達による共同住宅地であり、エコ型コレクティブコハウジングであり、また、行政的な支援があるのも大きな特徴かもしれないという点である。スウェーデンの地方自治での特徴の反映かもしれない。
 この市は、現在北の方に大規模なエコビレッジの計画を持っている。市の都市計画担当者に図面は見せてもらったが、直接の担当者が夏休みのため詳細は不明であるが、どちらにしろ、地方都市近郊レベルで、森と湖と農地を活用した環境共生型のコレクティブハウジングは一つの都市計画の行政テーマになっていることは確かであろう。

3)古いエコビレッジのタガリッタ
 スウェーデンのエコビレッジとしては、一番古い部類に入る。80年代の建設である。ストックフォルムから西に2時間ほどいった内陸の中心都市のカールスタッドの郊外にある。住宅協同組合を組織してのコレクティブハウジングであり、南面し、グリーンハウスを持つ連棟の住宅群で、伝統的な木の赤壁と瓦屋根がの家並みが並ぶ。道路から回り込んだ南の入り口に駐車場があり、その周囲にコンポスト置き場がある。中央の西側にコミュニティハウスがある。土地の生産性があまりよくないとのことで、農作物の生産はあまり活発ではない。
 敷地の隣の小学校は3年ほど前に建設されたが、ここのエコビレの建築形態に合わせて設計されているという。確かに、エコビレの建築景観とマッチした色彩と形態になっている。グリーンハウスや、小さい学校菜園もある。
 住民の多くは、カールスタッドに通勤しているサラリーマン層である。環境問題に意識のあった人達が、集まって、環境配慮型でのコレクティブハウスを計画したものであり、その後の、スウェーデンのこの種の計画に関して、多くの影響力を及ぼした先進的な場所である。15年以上前の先進的な試みとしての評価は高いが、多少規格品化された住宅景観の風景と、あまり活発でない菜園風景は、エコビレとしての魅力に欠ける感じがする。

4)マルメ市郊外のエコビレ:トープ
 スウェーデンの南の大都市マルメ市の東10kmほど行った郊外住宅地の一角にあるエコビレである。マルメとルンドの情報は、横浜国立大学の大原先生からの情報で尋ねた。96年に出版されている『ECO・GUIDE』という建築本でエコビレとして紹介されているものである。
 ハウジング・アソシエーションの計画開発であり、あまりに計画されすぎている感じで、エコビレとしてのアナーキー性に欠ける点はある。入り口には、「TOARP ECOBYAR」の看板がある。デザイン的には、昔の農村集落風景を再現したような景観となっている。37世帯を2区分した小コミュニティの区分になっており、2カ所の駐車場が敷地のコーナーに設置されている。コンポストトイレに関しては、最初は全ての家で利用していたが、現在は全て切り替えて、水洗トイレで公共のシステムにつながっている。畑で働いていた女性に聞くと、蠅の問題や臭い等で止めたようである。ただ、雑排水は、敷地の南端の池での浄化されて流される仕組みである。上水は井戸に寄っているが、周囲の農家の農地での農薬使用等での問題はありそうだが、消毒して利用しているという。
 コモンハウスでの共食は、全ての37家族が参加しているわけではなく、グループで実施しているようである。ベジタリアンのグループがいるという。農園は、全体によく利用されていて、コンポストもあれば、パーマカルチャー的な農法での農園もるし、チキン・トラクターでの区分分けした農園もあるという風で、今までみたエコビレの試みの中では、よく農業活動をしている部類である。個々を簡単に区分して、個人やグループで自由に活用しているようである。比較的、ゆったりとした菜園着き郊外住宅地という景観である。周囲の共同住宅地とは一線を画している感じで、いい意味で目立つ景観ではある。マルネからバスで20分程度であり、充分に通勤範囲内でのエコビレ住宅地の試みである。

5)ルンド市郊外のエコビレ:ソルビン
 電車でマルメから10分ほど北のルンド市、伝統的な大学都市の東に10kmほどの郊外住宅地のエコビレである。スウェーデンでは最初のエコビレの部類に属し、住民達の自主的な試みで始めているが、設計は建築家が関わっており、平面図を見た限りは、平行配置であまり面白みはないが、現地の雰囲気は、グリーンハウスが南面で突出していて、平行配置の中庭の景観を変化のあるものし、グリーンハウスの開放的な感じがよい。
 東端の土地は全て農園であり、一部コンポスト処理地もあり、また、農園内には鶏小屋もあったり、マルチ材としてストローを活用しており、パーマカルチャー的な濡れ新聞紙でのマルチングもしている農園もあり、農業に関しては熱心に取り組んでいる景観である。
 エコビレとしての自給性、経済的な自立性という点では、不十分であるが、農園やエコ景観としての質は、比較的高い状況である。7〜11年程度の年期の入っているエコビレであり、落ち着いたコミュニティの雰囲気を感じる。
 
     
4.改造型のエコ・コレクティブハウジングとしてのエコビレッジ

 既存の老朽化した建物を改造してのエコ・コレクティブハウジングの試みの事例であり、スウェーデンのコレクティブハウジングの研究者である、小矢部育子先生の本にも、エコ・コレクティブハウジングの事例としての可能性が紹介されているEKBOである。
 ストックフォルムの中心市街地から地下鉄とバスで30分程度で着く湖畔にある。以前は青少年の野外センターとして活用していた施設を、コレクティブ・ハウジングとしてエコ的に整備し直している。敷地の周囲は、ストックフォルム市民のサマー・コテージと市民農園と、湖がある。
 案内役のグンラング女史に会う。建築ジャーナリストで、GENの存在も良く知っていて、ヨーロッパのエコビレの本のスウェーデン編は彼女がオルガナイザーした。彼女は、スカンジナビアのオルターナティブな居住関係の本を編集している。彼女は、ここに住んでいる色々な人達を紹介してくれた。何とその中に、デンマークで世話になったピーターゼンの友人のスティグがいた。確かにストックフォルム近郊のエコビレに住んでいると言っていたが、まさか、このEKBOとは、何と不思議な偶然が重なるのか。それとも、この種のオルターナティブの世界が狭いと言うことか。どちらにしろ、今回の調査は幸いな偶然と閃きで多様な場面で人の輪に触れる不思議な旅ではある。
 さて、ここのEKBOの事業は現在進行形である。完全な共同組合での土地と建物の所有であり、その居住権を買うという形で住んでいる。彼女は、最初に25万SEK(約400万円程度)を払い込んでいる。つき当たりの維持費は、4000SEK(6万円)程度である。ここの事業はスウェーデンの最大の住宅協同組合のHSBの融資を受けているとのこと。
 住みながら徐々に改造しようとしている。古い建物の改造のために、多少、エコ的には、課題の残るところもあるのであるが。半地下の部分が有効に活用されている。コンポストトイレの屎尿のタンク置き場、糞の固形物の収納場所、ペンシェルという製材粉剤の固形化したものと石油を燃料とするセンターヒーティングの燃焼場所、ランドリー、ゲーム室、サウナ等多様に使いこなそうとしている。コンポストトイレの処理は大規模なものであった。屎尿は、最終的には、近くの農家が取りに来るという。販売かどうかは定かでない。
 住民は30世帯住んでいる。予定の家族数である。全部で大人50人、子供20人程度というから比較的子供世帯が多いことになる。敷地の南面は、湖であり、周囲は森と市民農園である。環境的には恵まれている。郵便の仕訳を玄関の共同連絡場所にある郵便コーナーでしていたのが印象的な風景である。
 まだ自給的な側面では、エコビレという視点からは弱い。作物もほとんど生産している風はない。コンポスト化は進めているが、なかなか、そこまで手が回せないのであう。完全に住み始めてまだ一年経っていない状況である。ここのメンバーの中に、スウェーデンのパーマカルチャーの中心的な人物がいるというが、まだ、そのような農園は整備されていない。
 車のシェアリングはしている。共同的な管理作業活動をしている。建物には翼が3方向にあり、それぞれの翼での共同管理活動のようである。ここでのエコビレは、ソーシャル・コミュニティの形成という視点が強いのであろう。共食は毎日しているということであったが、夏休みのこともあり、そんな雰囲気に食堂はなっていなかった。

 
     
5.林間型エコビレッジ:アスペキュレン

 ヨーテボリ市の東40kmほどの町の農村地域に建設中のエコビレッジである。農村集落のはずれの林間の中に建設中である。エコビレの責任者のステファンの奥さんが、エコビレッジ的な暮らしをしたいと考え、提案して、仲間が集まったようである。土地を探す上で、有機農家との連携を当初から考えていたようで、有機農家で賛同してくれそうな農家を探したようだ。そして現在の農家を見いだす。この農家も、18年前に始めた有機農家である。森林部も持っている。その森林の一角がエコビレの開発地である。
 このエコビレの仕組みは、12家族が会員となって1990年に共同経済組合(コーポラティブ・エコノミック・アソシエーション)という会社を設立し、エコビレの企画を始める。そして、適当な場所を現在の場所に選定できた。土地は、この会社が購入し、個人分の住宅地プロットは分割販売され、個別所有となる。その他の共有地は会社所有の形式となる。
 敷地の入り口は共同駐車場と車庫で、それからフットパスで各自の住宅地に行く。中央部分にコハウジングの建設予定地。入り口のすぐそばには、アパートが建設されている。これは、元の土地の所有者の有機農家が建てた集合住宅で、アパートとして貸している。ここでの自力建設のための人達の仮の宿としても活用されている。木造で集中床暖房を採用し、そばには、自然の沼地があり、現在まだ個別の住宅は2軒程度しか建っていないし、コモンハウスもない状況なので、みんなの集まる場所となっている。
 敷地の入り口には、居住者の案内板があり、14人の名前が刻まれている。職業は多様なようだが、基本的には高学歴の人々たちのようではある。30代から40代であろう。小さい子供達や妊娠中の人もいた。キンダーガーデンは近くの村の中心部にあり、バスの迎えがある。
 ステファンの建物は、ストローベールの建物であった。まだ3/4程度の仕上げてあるが、引っ越して住んでいる。5人家族である。子供達の部屋は現在壁を仕上げている段階で、壁のプラスターには、子供達のそれぞれの手形が押されていて、手作りの家造りの雰囲気が出ている。台所と食卓が南面して、北からの玄関の正面にある。その隣の半地下はリビングルームになっている。台所には、オーブンがあったが、マス・ストーブではない。マスストーブだと熱が出過ぎるとのこと。南面には将来、グリーンハウスを建設して、台所と風呂の廃水処理を兼ねた施設として整備する予定。この実験的な施設は、共同住宅のグリーンハウスで実験済みのようである。簡単な土壌浸透方式での処理である。
 便所は大小区分されており、既製品で便器がある。ユーリンはタンクに集められ、有機農家が処理してくれる。将来は自分たちの敷地の中での肥料として活用したいという。大も乾燥させて肥料として使う。上水は前から有った井戸水を活用していて、充分で質もよいという。
 共同住宅のテラスでエコビレの人達と話をした。話題はスカンジナビアのエコビレッジのことや小生の今回の調査のこと等である。色々なタイプのエコビレの話や、スウェーデンのエコビレが郊外型のコレクティブ・ハウジングの傾向が強いこと、また、コミューンのイニシアティブが大きいことを言うと、ステファンが住宅アソシエーションの支援状況が大きいとも言っていた。彼は、建築関係の会社を持っているので、そこら辺の事情も詳しいようである。この場所は、デンマークにも近いことから、デンマークのエコビレには訪ねているようである。トーラップとヨーサイは訪ねていた。
 また、エコビレはどう自立的に暮らしていくかということでの経済性の保証に関して、エコツーリズム的な試みの可能性も話題となった。
 ここのエコビレはまだ建設途中であり、訪問者はそんなに多いわけではないが、先月は韓国の建築グループが訪ねてきているというから、比較的知られ始めているということになる。

 
     
6.ビレッジ・アクション・ムーブメント

 フィンランドと同様、農村地域での村落社会の維持のための住民達の自主的な活動に関しての、スウェーデンの全国連絡組織がストックフォルムの中心市街地にある。夏休みで、主要なスタッフは留守で資料だけを事務所で入手した。詳しい調査は、別の機会に、フィンランドと併せて、現地調査をしてみたいと思っている。
 正確な名称は、英文では、「ポピュラー・ムーブント・カウンシル・ファー・ルーラル・デベロップメント・イン・スウェーデン」(農村開発のための住民運動委員会/農村住民活動協議会)という。調査機関でもあり、支援機関でもある。国から資金は出ているが、独立した組織である。ヨーテボリ大学の経済学部の先生が研究支援している論文をある。
 1996年現在で、現在組織されている農村活動グループは3500組織あり、関係者は7万人で、影響を受けている人達は、数百万人という。年間のボランティアでの活動時間は延べ480万時間、経済試算では3.6億SEKで約、54億円である。活動グループのマップを見ると、全国に展開している様子が分かる。また、北部地域での条件の厳しい地域での活動数が多い感じである。ここら辺の状況は、フィンランドと同様である。
 スウェーデンの活動は、1987年のECの農村開発キャンペーン以降での動きが活発なようである。住民達の活動内世は、農村地域の生活基盤の維持や整備や、教育、ツーリズム等の新しい経済活動等であり、フィンランドと同様である。280に行政区が統廃合されてきたことと、また、都市化の進行の中での農村自治、農村社会・文化の維持のための下からの活動であり、それを行政的には、資金等で上から支えようという仕組みである。
 日本の農村での住民達の自主的な活動がもう少し、全国的な組織としての交流等を含めて、情報交換され、その経済効果等も試算されていくと良いと感じるし、この種の国際交流をもっと活発に進めて、情報交換をしていくことが必要であるとつくづく感じる。今回は、エコビレッジ的な調査が主で、スカンジナビアの北部での農村活動に関しての調査旅行は次回の楽しみな課題としたい。

 
       
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