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里地文庫
寄稿レポート:糸長浩司の欧州エコロジカルレポート(7)
英国のサステーナブル・コミュニティ・デベロップメント


 ご無沙汰しています。第6報を出して、長い夏休みを過ごしていたわけではありません。8月は実質的に研究・調査活動は停止していましたが、8月末から再開し、主に滞在地のバーミンガム市内及び、南ヨークシャーでのコミュニティ・デベロップメントに関する調査をしていました。その合間に、日本からのお客さんを案内したり、ストロベール・ビルディングのワークショップに参加したりもしていました。
 さて、今回の第7報で調査報告は終了です。2回〜6回の報告は、雑誌「ビオシティ」の10月頃発売予定の最新号にビジュアルな形で掲載予定ですので、併せて読んでみてください。
 今回の報告は、主に、ソフトな地域づくり、コミュニティとの関わり、自主的な共同活動、協同ワーク、金を使わない地域内での交換システム・LETS等について紹介しています。今回の主要なテーマである「エコロジカルな地域づくり」のハード面だけでなく、それを支える、ソフトな、社会、経済の地域的自立と共生のシステムに関してのものです。行政的政策的なものと、民間のボランティア、チャリティ、コーポ等での自主的な取り組みも併せて紹介しています。150冊余り購入した本と雑誌の抄録づくりを進めていますが、まだ、充分に消化し切れていない点もあり、不十分な報告となっていますが、ご了承ください。
 日本の状況に関しては浦島浩司的になりつつありますが、民主党の党首選では鳩山がなるなど、世紀末の心配の種が多く出てきている感じですね。半年間はあっという間でした。日に日に時間が経つのが早く感じるのは、50才を少し前にした年の性でしょうか。
 尚、日本での活動復帰は、10月の第3週から予定していますので、宜しくお願いします。

糸長浩司 日本大学生物資源科学部助教授
パーマカルチャー・センター・ジャパン代表

目 次
1. 都市のリジェネレーション、SRB、コミュニティ・インボルブメント
2. オルターナティブな地域経済活動/LETS、クレジット・ユニオン等
3. バーミンガム市の多様なボランティア、コーポのグループ
4. バーミンガム市のアロットメント事情
5. 南ヨークシャーでのユニークな活動紹介
補足:ストロベール・建築のその後
 
     
1.都市のリジェネレーション、SRB、コミュニティ・インボルブメント

 1990年代に入って、英国での都市再生の政策的プログラムは、「シティ・チャレンジ」(1991年)、「SRB(SINGLE REGENERATION BUGDET)」(1993年)等の政策で、荒廃しているシンナーシティのエリアの再生のためには、コミュニティ参加、地域参加をいかに生み出していくか、創造していくかという点、また、地方自治体の主体性の発揮と官僚主義を打破して地域住民とのパートナーシップをどう組み込んで行くか等が主要課題として進められてきた。SRBとは、荒廃している地域での再開発に関して、多様な団体のパートナーシップで事業を進めるための補助金であり、地方自治体、ボランティア団体、民間企業との共同参加でのプロジェクト推進であり、ブレアーの第三の道に通じる補助金の方向でもあろう。トータルで12億ポンドの資金が用意された。
 また、92年の地球サミット以降での、ローカル・アジェンダ21のサステーナブル・デベロップメントのキーワードでの各自治体レベルでの行動指針の作成と実施が進められ、先進的な自治体ではその成果が出始めている感じです。行政とボランティア、チャリティ団体との共存とパートナーシップで、地域住民をいかに巻き込んで、地域のポテンシャルをあけでいくかという点にある。そのことが、軽い行政となり、かつ、地域社会の自立的で持続的維持形成につながるというシナリオだと思います。貧富の拡大、エスニック・マイノリティ、過度の失業率、都市バンダリズム等数多くの課題を抱えて、21世紀にどう踏み出すか、盛んに、「マレニアム/千年」の用語が飛び交っています。
 バーミンガム市の事例で、グランドワークも関係している劣悪な都市住宅地での都市再生のプロジェクトを紹介します。バーミンガム・グランドワーク・トラストでSRB担当者のディーンの話を聞く。ディーンの担当している箇所は、バーミンガムの北西部で10年以上前に、バンダリズムが激しく、失業率(15%で今まで働いたことのない失業者が内26%を占める)、低収入(地区の65%の世帯)、定住性の低さ、エスニック・マイノリティの人達の住む地区で、そこの再開発事業である。
 5つのハウジング・アソシエーションが中心となってSRBを獲得する目的で、ハンドワース地区再開発トラストが構築されている。7年間の事業で総事業費で1800万£約36億円の事業で、内約400万£をSRBで獲得する予定である。その他の予算の中には、国が「ニュー・ディール」政策として進めている失業者対策としての失業者への職業訓練を兼ねたような仕事づくりの予算獲得も予定されている。
 SRBを獲得するためにも、共同体として12ほどの組織の参加で構成されている。ここでいう組織とは、ハウジングアソシエーションの他に、倫理的な資金提供をする倫理銀行、グランドワーク・バーミンガム、地区内の学校関係等のボランティア団体等が含まれている。この組織の中には、テーマ別の委員会と、住民の各18の近隣地区の委員会が組織される。理事会、核となる事務局、テーマ別委員会、地区委員会が構成され、その下で、各種の事業展開がされるシステムである。
 事業目的は住宅改善や住宅地環境改善のフィジカルな環境改善だけでなく、新しい仕事の創造、住宅改善等の技術を住民が取得する機会の提供、教育改善、地区の安全性の確保、コミュニティ意識と結束等があり、物理的環境改善だけでなく、社会的経済的な再生を目的としている。地区コミュニティの参加を事業に組み込む、シンボルブメントすることで、地区のコミュニティ・キャパシティ・ビルディングを高め、サステーナブルな居住地を都市の中に再構築しようとする事業である。失業率の改善、定住性の増加等も大きな目的となっている。このような地区の再生のためには、単に物理的環境改善だけでなく、社会的、経済的な改善、活性化が求められている。
 
     
2.オルターナティブな地域経済活動/LETS、クレジット・ユニオン等

 経済の急激なグローバリゼーションの波に押されて、地域経済は破綻寸前である。あるいは、既に破綻しているのかもしれない。それに対抗して、地域内での閉じた地域経済の再生のための新しい経済行為の手法が出てきている。

(1)LETSLINK UK の活動が支える急激なLETSの展開
 先の第2回の報告で、デボンのコミュニティ・コンポスト事業のところで触れた、お金を使わない地域経済システム、LETSの英国での状況を述べます。パーマカルチャーの間では、LETSをローカル・エックスチェンジ・トレーディング・システムの略、あるいは、ローカル・エンプロイメント・トレーディング・システムの略として使用していますが、一般的には、先のローカル・エックスチェンジ・トレーディング・システムが使われています。また、英国では、最後のSをスキームと訳す場合もあります。私としては、現在の英国でのLETSの広がりが、低所得者層や、失業者の地域経済を支える一つの道具となっている面もあるので、後者のエンプロイメント(もう一つの労働形態、シャドーワークの経済化として、ワークの意味の入っているエンプロイメントの方が適切とも判断していますが、一般的には、エックスチェンジの意味で使われている)の方が適切であると判断していますが。後で紹介する「LETSLINK UK」のパンフレットのサブタイトルには、「LETSは、コミュニティと地域経済の再生のための新しい道を提供する」とあります。市場経済に影響されず、自分たちの労働の価値を自分たちで図って地域内で交換するというシステムです。
 英国では、400近くのLETSの組織が立ち上がっています。94年頃から急激に伸びている状況です。当初は、環境問題等に関してのある中流階層の遊びのような点がありましたが、現在の広がりは、地域の自立のための新しい地域経済、低所得者層の地域生活の安定化のための道具としても拡大してきているようです。その意味では、雇用というコミュニティ内での新しい仕事という意味合いでのEが適用されてもよいと思っているわけです。
 1998年に出版されたLETSの活動状況を分析したJONATHANの本に寄れば、平均的には、LETSの構成メンバーの1/4は失業者であり、マンチェスターLETSは43%、キングストンのサーリーは50%、ペンブロークシェアーのハンバーホードウエストでは70%であるという。彼はその本の中で、LETSの利点として、失業者の日常的な生活保証となんらかの労働の機会に恵まれることで、今までのスキルを維持したり、実質的な次の仕事を得るためのスキルや機会が得られること、コミュニティ内でのコミュニケーションが図られ孤立しがちな都市生活がチェンジすること、インフォーマルな学習の交換、地域レベルでの経済の再生(LETSの交換と実質的なポンドの交換の共存が大きいと思われる)、地域内での多様なコミュニケーションにより地域内での階級的差や年齢差等により障害が解消されること、不要なものの交換活用により環境付加を少なくする等の効果をあげている。
 リード大学のコーリン達の1996年の全英での調査では、350団体あり、3万人のメンバーで一年間の経済行為を換算すると、2.1万£になるという報告がある。また、有機農産物の生産と普及の団体であるソイルアソシエーションが進めている「ローカル・フード・リンク」の運動の中に、このLETSを組み込んで、農村地域の有機農家と地域内消費者の連携を図ろうとする動きも起きている。後で、バーミンガムの事例でも紹介するように、LETSでの地域通貨とポンドとの共存併記や組み合わせでの交換行為も一般化してきており、多様な転換方向が今後期待できる。
 この英国での急激なLETSの普及に大きく貢献しているのが、「LETSLINK UK」という団体(キャンパーニー・リミテッド・バイ・ギャランティーという、利益が個人還元できない有限会社)です。英国の最初のLETSは1985年にノルウィックで、87年にトットネスで2番目が出来、92年では全英で5団体だけ、余り普及はしていませんでした。90年にLETSに関する本を最初に書いたリズ女史とフレンド・オブ・アースのダニエルが共同で、英国版のLETSモデルをウエスト・ウイットシェアーで立ち上げ、丁度英国の経済危機の時でもあり、非常に地域経済に貢献したと言われている。
 そして、1991年に最初の英国内でのLETSの国内会議が開催され、その後、LETSを普及団体としての「LETSLIKN UK」が結成され、最初の7年間は完全なボランティア活動で、普及活動をして、現在の急激な発展につながっているという。一般の人達、特に、低所得者や失業者にも充分分かり、参加意欲が出るような普及パンフレットやコンサルタント活動等を手がけている。広く、ヨーロッパの諸国に対しても普及活動をしています。
 この団体のパンフレットの中では、LETS的な地域独自の交換通貨の使用の近代の歴史的出発的として、1830年代の空想的社会主義者のロバート・オーヘンの失業者対策としての「労働切符」の発行を紹介しているのは興味深い。
 また、近年は、地方自治体でのコミュニティ・デベロップメントの一つの手法として、自治体レベルでの助成でLETSを立ち上げている所も増えている。後で紹介するブラッドフォード等もその例で、55000£の資金が提供されています。交換行為なので、税等の問題が大きくのしかかってくる(失業者が何らかの労働をしてその代価を得るということで、失業者が収益を得たと判断するかどうかも含めて)が、現在はまだ、政府見解も曖昧な点があるようであるが、「LETSLINK UK」等は国会ロビー活動も熱心で、国会議員で関心を持つひともあり、ブレアー首相も表面的には好意的な意見を示している。この種の法的な対応では、豪州とニュージランドが先駆けているという。

(2)南バーミンガムLETS
 バーミンガム市には、現在南北に別れて、二つのLETSが存在する。この南のLETSは歴史も古く、規模も大きい組織である。現在の登録番号での会員数は、581人だが、アクティブに活動している人は300人程度という。英国で一番大きいことを強調していた。会員は、住民への聞き取りでは、比較的中間層のホワイトがほとんどであるという。会の運営は、代表者、コアメンバー、12地区の世話人からなる会議で進めており、他の市にあるような、事務所的な機能を果たすショップや喫茶店はない。
 会員には、入会の同意書、LETSの小切手、会員アドレス、会員の提供するもの・サービスのリスト表が手渡される。年間の維持費として10ポンド支払う義務がある。その他は何もなく、交換活動を民主的、紳士的にするだけである。
 ここでの交換単位は、「ハート」である。1ハートの価値は、概ね1£であり、時間的には、一時間労働の標準が6ハーツであるという。ただ、ケース・バイ・ケースで多少の変動はあるが、リストでの価値をみてもそんな感じであるが、後は、相互の相談で決まるようである。ここのLETSは大きいが、他の地区のLETSの会員との取引に関しても今後は、取り組む方向のようである。インターネットが普及してきているので、その傾向は大きいとも感じるという。
 商店等の参加はそれほど多いわけではないが、有機野菜等を販売ショップ等は入っているが、全てをLETSの支払いではなく、10%まで等の制限を設けている。会員にLETSがこれだけ英国で普及してきている理由に関して尋ねたが、明確な回答は無かったが、ただ、楽しく、コミュニケーションが出来、かつ、一定の利便性があがるという点では普及しているのであろうという意見があった。
 交換対象となっている内容をリストの分類で見ると以下のようなものがある。秘書、法律相談、メディテーション、キャンペーン技術、教育・学習、翻訳、本・読解、健康・セラピー、精神・癒し、育児、家事、家の修繕、庭仕事、動物のめんどう、食べ物、病気や非健常者の世話、自転車修理、自動車での送迎、洋裁、音楽、スポーツ等で多様である。リストには、1時間当たりの交換レートがハートとポンドで併記されているものもあるし、相談で決めるというものもある。ハートとポンドの組み合わせもある。LETSの単位だけにこだわらず、緩い形でポンドも導入しているのが、普及している理由かもしれない。

(3)バーミンガム市のクレジットユニオンの動向
 英国のロッチデールは生協活動の発祥の地で有名なので、さぞ、クレジットユニオンも盛んかと思えば、最近盛んになりつつあるようである。アイルランドの方が伝統もあり、盛んであるという。
 バーミンガムには、現在31のクレジットユニオン、会員1.5万人(ちなみにバーミンガム市の人口の2%)、資金1000万ポンドで、全英での団体数の5%、会員で6%、資金で7%であるという。ちなみに、バーミンガム市は、ローカル・アジェンダ21のサステーナブルな行動指針の市民向けパンフレットの中の貧困対策の項目で、このクレジットユニオンと、LETSの振興を唱っている。市の肝いりで、「バーミンガム・クレジット・ユニオン・デベロップメント・エージェンシー」という会社が作られ、普及とコンサル活動を行っている。
 現在、地区的には全市のほぼ6割程度は形成されていることになろうか。3タイプであり、コミュニティ・クレジット・ユニオン、アソシエーション・クレジット・ユニオン、エンプロイー・クレジット・ユニオンである。コミュニティ・クレジットは、文字通りの地区が限定されているユニオンである。アソシエーションは、教区での運営である。職員ユニオンは、バーミンガム市職員のユニオンや警察官のものである。
 ユニオンの構成数は、50〜500程度のばらつきがある。英国の中では、後発の地域のようである。出来て、15年程度という。この会社は市内のクレジット・ユニオンの立ち上げや運営の手助けをしている。現在は、個々のクレジット・ユニオンの連携でどう、バーミンガム市全域でのネットを形成するか、また、まだ立ち上がっていない地区での立ち上げ等が仕事のようである。
 基本的には、ローインカムで金融業での高い利子でお金を借りるより、ユニオンで借りることのメリットである。利用方法としては、行事やクリスマス等での使用のようである。一人当たりの平均的な預金高は、1500£程度だろうという。30万程度ということか。最高での借金高の限度は、1000£と規定されている。
 豪州のパーマカルチャー・ビレッジで有名なマレーニーのクレジット・ユニオンのように、得た資金を環境活動に支援するようなエコ的な仕掛けというより、貧困者、低所得者の生活安定のための共同資金づくり、銀行づくり、相互扶助銀行としての位置づけが強い感じである。

 
     
3.バーミンガム市の多様なボランティア、コーポのグループ

(1)子供達の環境センターを守ろうとするグループ
 バーミンガム大学の近くにあるマーチィニュー・ガーデンという、2年前までは市の教育課が管轄していた環境センターの一つとして子供達への環境教育の地域の拠点の場所の存続を願う活動団体である。現在も、地元の熱心なボランティア活動と、市から手当をもらっている女性キャロラインに支えられて、パーマカルチャー的な農園や森林が維持されている。2年前に行政が手を引き、一企業の土地のため開発計画もあり、現在のセンターとしての機能の存続を住民が勝ち取ろうとしているところである。その収穫祭を兼ねたイベントに参加した。
 キャロラインは、環境センターが健在の時は、子供達への教育も兼ねた園芸指導者として活動していた人物であり、ここの環境整備の歴史も詳しい。行政が資金的な問題もあって、ここの閉鎖を二年前にしているが、その後、ここの住民活動に関しての援助を彼女は、行政の別の組織からの給料をもらって活動を継続しているという。ただ、その給付も来年で切れるらしい。ここの将来的な利用継続に関しては、道路の向かいの病院がここに拡張したいような計画があり、存続は半々の状況のようである。次の場所探しをしているような雰囲気もある。
 敷地内にはコンポストの場所もあり、ここで草や枯れ葉、枝等でコンポストは充分まかなっているという。コニュニティ・ガーデンの必要性は、彼女も同意したが、この近くの多くなアロットメントの利用者は少なく、使われない箇所もあるという嘆きもあった。また、ここでのガーデニングの活動にも、近くの高層住宅の住民は感心を示さないという、嘆きもあった。日本と同じが、それ以上に、土離れしている都市生活かもしれない。最近、行政もやっとコミュニティ・ガーデン的考え方も出てきたという。
 収穫祭のイベントは、有機菜園や果樹園で採れた野菜や果物と販売、グリーンハウスでの植物の販売、手作りろうそくの販売、巨大パンプキンの目方当て等であり、イベントとしては、敷地の奥にあるサンクチャリの自然観察案内ツアー、そして、サステーナブル・シティに関するデスカッションと多彩である。自然観察では、二年前までは家畜が放牧されていた草地が家畜がいなくなって、自然復元している様子や、その奥の保全区域の森林生態系の説明とガイドがあった。池は豊かな水性生態を形成している。また、先週倒れたばかりの木も観察の空間として位置づけられている。
 手作りのローソクや、プラント販売は、先に述べた南バーミンガムLETSのハート(ここのLETSの単位の名前)の数とポンドの併記であった。概ね、1ハート=1£の換算だという。手作りローソクを売っていた彼女は、LETSでの個々のもめ事の調整役である。彼女は、LETSに参加して、生活が変化したという。いつも、多くの人達とのふれあいがあること、LETSがコミュニケーション、コミュニティ活動の活性化に果たす役割を大きく評価していた。彼女の隣で手作りの袋入れのようなものを売っている女性もLETSの会員で彼女はローソクをLETSの小切手を使って交換していた。紙に、借り手と貸し手の名前と会員番号、ハートの数を記入し、それぞれが小切れを持ち、最後の一枚は、事務局に提出するようになっている。事務局ではコンピューターでカウント処理がされているという。何人かは、確かにLETSで買い物をしていた。また、ここのガーデンを守る組織も組織としてLETSに参加しているので、ここでの販売の植木鉢の値段もLETSのハートとポンドの併記であった。
 サステーナブルを話題としたミニ会議のファシリテーターは、CATで活動していた建築家であり、また、現在もバーミンガムとマカンスリの両方に事務所を持っているらしい。討議内容は、コンポスト、ソーラーパネル、行政の環境政策等多彩であり、何かテーマを決めて話会うという感じではなく、言いたいことをいうという感じの英国式の討論ではあったが。

(2)草の根のコーポラティブ・ネットワークの「ラディカル・ルート」
 この組織は、元々はコーポラティブ・ハウジングの活動をしていた若者達の組織で、その後、共同的な経済的な活動(ワーカーズ・コレクティブ)への資金援助を目的とした全国組織に発展し、ワーカーズ・コレクティブやコーポラティブ・ハウスの共同組合事業を立ち上げるための法的な手続きもしている。会員同士で資金を集め、それを有効に会員間で活用するという組織で、現在40程度のコーポが形成されている。現在の資金は、40万£程度である。
 主要には、ワーカーズ・コーポ(WC)とハウジング・コーポ(HC)のタイプを支援している。WCは、建設会社喫茶店、自然食品店、会計事務所、コンピーターサービス、料理サービス、本屋等である。後で述べる有機野菜の産直組織のオーガミック・ラウンドアバウトも会員である。良心的な資金投資をしたい人や組織からの借り入れる行っている。HCの会員の中には、ウェールズのCATの近くで、CATの周りに展開されつつある新しいエコロジカルでパーマカルチャー的なコミュニティづくりをしている「チッキン・シャック・ハウジング・コーポラティブ」等もいる。新しい形の倫理的投資とその共同的な組織的活用により、草の根的な経済システムもコミュニティを作り上げることで、社会変革をしようとしているグループということになるか。

(3)有機農産物の産直団体/オーガニック・ランドアバウト
 バーミンガム市内のワーカーズ・コレクティブでの「オーガミック・ランドアバウト」の事務所に行く。先の「ラディカル・ルート」の会員でもある。ウエスト・ミッドランド内の有機農産物を有機農家の組合から直接集荷して、都市消費者にまとめて配達するデリバリーの会社である。日本の生協クラブ等の産直活動を参考にしているという。日本の産直の消費者活動に関する世界的な評価は高いようであり、パーマカルチャーの大会でも、「TEIKEI」、「SEIKATU」という日本語は、この種の生産者と消費者のネットワークを表現する言葉として使われたりしている。有機農産物の評価は、英国の権威あるチャリティ団体のソイル・アソシエーションの認定マークを売り物としている。この事務所は、先の「ラディカル・ルート」と同じ建物で、ハウジング・コーポの所有する事務所を利用している。
 ここで紹介した「ソイル・アソシエーション」について若干の説明をします。このチャリティ団体は、50以上の活動歴があり、主にサステーナブル・アグリカルチァーの普及に努めている団体で、有機農産物の認定事業も行っており、厳しい審査基準をもって認定しており、この認定マークが入っている農産物への国民の信頼は高いものがある。第2回目に報告したようなパーマカルチャー農家でもこの認定マークを取得しているところもある(認定料が高いという理由で認定を受けていないパーマカルチャー農家もいたが)。また、最近は、地域内での都市と農民と産直交流のシステムとして、「ローカル・フード・リンク」の多様なキャンペーンを進めている。
 個々の地域での共同購入のボッキス・スキームや、都市の中心地でのファーマーズ・マーケット(最近、英国ではやっと普及し始めた程度でまだ活動は新しい。米国等を参考にしている。)、有機農家やシティファームでの有機農産物の認定と都市住民とのふれあい活動の促進等である。米国等でのCSA(コミュニティ・サポーティッド・アグリカルチャー)や、日本の生協活動等も参考にされているが、日本の有機農産物の認定や農産物の産直のシステムづくりでは多いに参考したい組織活動である。

(4)フレンド・オブ・アース
 バーミンガム市内でのオルタナティブ系の多様な活動の情報拠点となっている場所が、フレンド・オブ・アースのバーミンガム事務所である。フレンド・オブ・アースは、世界的な環境団体の組織で、英国では20万人の会員を抱え、大きな政治的圧力団体ともなっており、全国に300以上の支部を持っている。最近では、遺伝子組み替え作物の導入や試験に関しての反対のキャンペーン活動をしている。また、アーバン・エコロジーにも関心があり、都市によっては、コニュニティ・ガーデンプロジェクト等にも支援している。
 バーミンガム市のフレンド・オブ・アースは、事務所の他に洒落たベジタブル系のレストランや有機野菜販売店も経営しており、市内のオルタナティブ系の情報交換と会合の場所ともなっている。中央駅に近くところで便利である。9月の調査の出発点は、市内のパーマカルチャーリストとこのレストランでの夕食から始まっている。
 フレンド・オブ・アースと市の行政との関係を考える上で、参考になりそうなエピソードがある。フレンド・オブ・アースの事務所手に入れた情報で、バーミンガム市の市役所の豪華な宴会場での、サステーナブル・フォーラムという、ゴミ問題・対策に関する市民参加の公開ワークショップに参加した。環境保護課のローカル・アジェンダ21の担当の主催であり、会議の始まる前に、ポスターセッションがあり、フレンド・オブ・アース、グランドワーク等の展示があった。また、チャリティ団体で、市内の資源ゴミの回収グループの展示もあり、200カ所の回収箇所があるという。新聞紙、缶が多いようである。ちなみに、バーミンガム市の一般家庭でのゴミの分別はされておらず、缶も瓶も生ゴミも全て一緒で週に一回の割で回収され、埋め立てられているのが現状であり、非常に遅れている。
 会議は、市のゴミ政策、企業ベースでの産業連関によるゼロエミッション的なシステムの構築の提案、ブリストルにあるコミュニティ・リサイクル・ネットワークのチャリティ団体の報告がメインで、その後、10グループ程度に別れて、円卓ワークショップをする。小生は、コミュニティ・インボルブのグループに参加。老人、婦人、フレンド・オブ・アースのメンバー、グランドワークと多彩であった。ファシリテーターは、ブリストル市の女性である。進め方は、テーマに対する実践的提案、その進め方、行政がどうパートナーシップを組んでいったらよいかである。最初は、老人から行政に対する不満の爆発、女性からも、住民の消費傾向の問題の指摘等がある。小生が最近調査した後で紹介する「コミュニティ・コンポスト・ネットワーク」の話や、日本でのシルバー・ボランティア団体での自転車の修理と販売の話、修理技術のコミュニティでの取得とそのコミュニティ・エンタープライズ化する話、LETS等の話をした。比較的、この提案は良好であり、この方向での班としての提案がまとまった感じである。
 その他のテーブルからの提案も、ゴミの問題を解決する方向としては、教育とコミュニティ・ビジネスの起業化も含めて、新しい起業展開の機会としてとらえて、それに対する行政支援の必要性が語られていた。
 グランドワークに詳しいバーミンガム大学の小山氏によれば、こういう会議でフレンド・オブ・アースとグランドワークが一緒になるのは、昔は考えにくかったが、最近は、多様なパートナーシップの展開が起きているという話があった。多様な組織をいかに、コミュニティ活動として組み込んでいくのかは、行政にしろ、環境団体にしろ大きな課題となっている。
 
     
4.バーミンガム市のアロットメント事情

 バーミンガム市役所の市民農園関係の部署のレジャーサービス部局の公園・自然保全課のアロットメント班で話を聞く。アロットメントの主要な担当者4人で、班長、南北の担当者、会計担当である。バーミンガム市は、アロットメントの利用促進のキャンペーンを今年張っていて、今月そのイベントが終了した。
 全市で118のアロットメント、700エーカー、7134区画で、賃貸者は5420人である。16のアロットメント協会は、責任者としてそれぞれを管理している。協会は全部84である。近年、13の協会がアロットメント自主管理協定に基づいて、自主運営をしている。残りの16の箇所は、市の市民農園係によって運営されている。協会は菜園協会としての役割だけでなく、新しい借り手の発掘や、貸し賃の徴収と保管をし、かつ、自主管理の協会は簡単なメンテナンスもする。現在120近くあるアロットメントは利用率が100%行っていない箇所が多数あり、その利用促進を図っている。
 最近の動向としては、全て市が管理するのではなく、上の述べたアロットメント・アソシエーションの自主運営を促進する方向に行っているようである。市の収入となる賃貸料の60%の収益で運営している。市の管理の手間を省くためのようでもあるし、また、コミュニティ活動の振興という視点もあり、また、コミュニティで責任を持って利用者を開拓していくことも目的にあり、現存のアロットメントの利用頻度をいかにあげていくかが課題のようである。
 優良で、歴もある南北のアロットメントを訪ねる。南の歴史的に古く、小生の住んでいる町の近くのウエスト・ボーン・ロード・アロットメントである。ここは、戦前からあり、高い生け垣で囲まれたプロットであり、入り口にしっかりと門のある区画が多数ある。有機栽培で長い間取り組んでいる箇所で、堆肥づくりも盛んであるが、奥の方に行くと、利用されないで荒れ地のままのプロットも何カ所かある。
 北は、丘の丘陵部に位置する400プロットもある英国でもっとも大きなアロットメントに属する、「アップランド・アロットメント・アソシエーション」に行く。ここは、自主管理運営しているアロットメントであり、しっかりとしたコミュニティハウスを持っており、事務所、販売室、キッチン、ミーティングルームがあり、この辺のコミュニティの中心的な場としても利用されている。南斜面一面が区画されたアロットメントであり、壮観である。有機堆肥、近郊の農家からの家畜の糞が要所要所に堆肥置き場的に置かれていて、そこからはカボチャ等が生産されていた。ここは、後で紹介するコミュニティ・コンポスト・ネットワークの構成メンバーでもあり、コンポストづくりは熱心なようだ。
 ここの運営は、会長1人、事務局長、トレジャー2人、秘書1名の事務局体制で、その下に、理事会が12人で構成されている。理事会と事務局全体で17名構成であり、内、男性14人、女性3人、アジア系3、アフロ・カリブラー系7人、ホワイト7人、障害者2人、60才以上8人という構成である。比較的バランスをとっての構成である。ここは、コミュニティ活動が活発のようで、シェル石油のベター・ブリテン・キャンペーンの支援を得ていた。掲示板には、ここからの寄付等の感謝状もあったり、また、ブラッドフォードの環境グループが見学に来るようである。

 
     
5.南ヨークシャーでのユニークな活動紹介

(1)リード市のシティファーム
 リードの町は綺麗で、洒落たアールヌーボーのアーケード街もよい。一時期、綿織物で繁栄した都会であり、その時の有名建築がしっかりと保全・活用されている。落ち着いた町並みとなっている。
 市の北の丘陵部の住宅地の一角で、このシティ・ファームを拠点として、自然遊歩道が展開されていく。シティファームの敷地内では、地元のグランドワーク・トラストが道路の補修改善をしていた。事務所でここの常勤スタッフで園芸担当の女性と会う。パーマカルチャーの一言で全てが通じて、快く、ファーム内を案内してくれた。
 彼女の周りには、ディスアビリティーの人達が集まっていて、農場の仕事をしている。作物の作付け体系はパーマカルチャー的であり、パーマカルチャーコースを開いている。ここのシティファームの歴史は古く、70年代の後半に構想され、82年にチャリティー団体として活動始めている。当初から、有機栽培的な方法は取っていたのであろうが、最近はパーマカルチャーの概念を導入している。ソイル・アソシエーションの有機栽培の認証マークも取得して、出来た作物は施設内で販売もしている。南斜面に展開されるハーブや野菜、ビニールトンネル等の構成は豊かであり、移動も車椅子での移動が可能なように全てスロープに作り替えられている。敷地内ではリサイクル・センターと称して、有用ゴミが集められ、リサイクルしている簡単な建物もある。
 去年、市の資金とマレミアム基金を活用して出来たばかり木造の会議室兼、情報センター的な施設の「エピセンター」はエコ建築である。丁度市の環境部局主催でのエコ系の会議をしていた。木材は地元産の木材で、屋上は緑化され、雨水は全て集められ家畜用の飲料として利用され、建物は南面ガラスのパッシブ型で、トイレはコンポストで汚水処理はリードベット(植物浄化システム)が建物の下の敷地に整備つれつつあり、処理後は川に流される。この新しい建物を中心として、パーマカルチャー的な暮らしの総合的なデザインができあがっているともいえる。旧納屋を改造したレストランと事務所の建物も洒落ているし、野菜スープは美味しかった。

(2)シェフィールドのシティファームとコミュニティ・コンポスト・ネットワーク(CCN)
 南ヨークシャーの地方都市、シェッフィールドの密集した市街地のはずれの鉄道沿いの小高い丘にシティ・ファームはある。比較的密集して、コンパクトに動物と菜園、コンポストコーナー、レストラン、ガーデンコーナーが設計されている。
 農場は、20人程度が働いている。多様なコンポストを作成している。農場の家畜の糞、近隣から集めた家庭台所のゴミ、落ち葉、草等を混ぜたコンポストでガーデンで販売している。また、この販売もユニークで、LETSでの売買も可能である。最近は、街路樹の葉っぱのコンポスト化も試みている。また、道路際には、ゴミの回収コーナーもある。池もあり、牛、馬、豚、鳥等の多彩である。簡単な洒落たレストランもよい。昼休みで、若者がギターを弾いている。健常者と非健常者が普通に働いている。
 CCNの担当者のディービットに話を聞く。かれはシティ・ファームの仕事とCCNの仕事をしている。CNNはEU基金を活用し、全英のコミュニティ・コンポスト運動のネットワーク機関であり、コンサル的なこともしている。現在英国で100近くのCCが動いている。第2回目に報告したデボンの動きが先で、その後、ブリストルに移り、最近、このシェッフィールドのシティファームの事務局が移っている。ここのファームでの活動が盛んであることにもよろう。
 ここら辺が英国の自由な、意識あるものが、その時に事務局的な役割をする。長期的な固定がないボランティアの動きである。融通性があるし、個々の個性が発揮出来る。この指止まれで、かつ、自己責任での活動である。このフットワークの軽さが、英国の多様な問題に対しての数多くのボランティア団体の活動を支えているのであろう。懐の深い、柔らかい構造でもある。事務所は、女性と二人で運営されている。CCの普及に関しては、当初は有名なトラスト団体のワイルドライフ・トラストが動いており、「CC」の進め方のパックを作成している。

(3)ブラッドフォードのコミュニティ・エコノミー・デベロップメント
 第2回目の報告でパーマカルチャーに熱心な行政職員がいて、ローカルアジェンダ21の担当者であり、ボトムアップ型のまちづくりを進めている市である。今回は、その市のコミュニティ・エコノミック・デベロップメント・ユニットを訪れた。2年前にローカル・アジェンダ21を具体的に実施していく上で、コミュニティレベルでの経済活動や社会的な活性化、コミュニティ・キャパシティ・ビルディングを経済的なレベルで構築していくための企画・対策室である。LETS、クレジットユニオンに関する普及活動もここが行っている。
 話をしてくれたフセインはバングラディシュ出身で、このユニットで扱っているものは、LETS、クレジット・ユニオン、コミュニティ・ビジネス、THE SAVERS COMMITTEE、THE COMMUNITY FOOD STROE PROJECTS等である。ブラッドフォードはLETSの導入を行政が率先して行ってきた市であり、そのほかに多様なコミュニティの活性化のための戦略を展開しようとしている。貧困対策や失業対策、マイノリティの地区に対して、単に金銭的な援助では地域の自立、健全な住民が育ってこないという中で、個々の地域のキャパシティ、活力を高めることが求められ、彼の部署はそれを経済的、経営的面から支援し、組み立てていこうというものであり、予算が充分にあるわけではなく、知恵と仕組みづくりでそれを達成しようとするものである。コミュニティ・ビジネスという概念が重要なキー・ワードとなってくる。彼の部署で定義しているコミュニティ・ビジネスとは、
1) 地域のコミュニティが所有と運営を行い、事業展開の主導権はコミュニティがとる。
2) コミュニティビジネスは、利益を生み出すと同時に、社会的環境的な事業に関係する。
3) 名称としては、コニュニティ・コーポラティブ、ソーシャル・エンタープライズ、コミュニティ・エンタープライズ
利益を求める点では他の普通の会社と同様であるが、次の点が異なる。
1) 社会的、コミュニティ的、環境的な利益を獲得するために、ビジネスをする。
2) 利益以前に、人々や環境を重視する。
3) 会社の財産はコミュニティに属し、個人的な利益のために売却されない。
4) コミュニティによって、事業は運営される。
5) 得た利益は、より効果的な事業や新しい事業を確立するために、コミュニティに再投資、還元される。
 具体的な事業として、低コストの育児所の経営、警備会社、住宅維持会社等が考えられる。
 彼が中心となって進めている現在のプロジェクトは、コミュニティ・デベの一つで、空洞化してショップもなく郵便局もないような、マイノリティの人達の住むシンナーシティの居住区での、食料品店をコミュニティ・エンタープライズで立ち上げることであり、そのための支援するトラストの立ち上げを準備している。
 この種のコミュニティ・ビジネスの展開による地区の再生と活性化の課題や方法は、農村地域でのEUが90年代から政策的に取り始めた、「READER」(農村地域における経済開発のための活動の連携、これは、第5回目にフィンランド編で報告した農村地域でのコミュニティ・運動の時にちょっと触れた。この情報の最新版は、今回、英国の受け入れ先となってくれたバーミンガム大学ジャパンセンターの小山副所長達が日本語で出版した『欧州連合「EU」の農村開発政策』井上和衛編・筑波書房が参考になりますので、一読をお勧めします。今回は、充分な時間がとれず、英国の農村地域でのこの種の村おこし活動に関しては調査しておりませんので。)事業と、一致するものを感じる。
 一次しのぎの金銭的な援助では地域の自立と再生がはかれないことは明白であり、地域での自立と共同・協同での日常的な生活を支えるための事業展開、コミュニティが切実に必要としている需要をどう掘り起こし、それをどう実現していくか、この過程に全て、住民が関わり、その過程で、地区としてのアイデンティティや自立の力がついてくる(コミュニティ・キャパシティー・ビルディングということ)ことになる。これは、結局は行政の負担の減少にもつながり、サステーナブルな地域社会の形成となる、というストーリーであろう。
 北欧のフィンランド等で展開された集落の再活性化活動に刺激され、EUが90年代初頭に導入した「READER」事業の急激な展開や、インナーシティでの、コミュニティ・インボルブメントで空洞化対策等をみると、地域的空洞化の都市及び農村では、同様の課題を抱えており、その再構築のために、いかに地域住民の主体的で自立的、協同的な試み、事業的、地域経済の再生を含めてた活動の展開が急激に進みつつあると感じる。ただ、ボランティア的な活動やLETSのような身近な社会的なつながりの中での緊密な人間関係での下からコミュニティ再生と防衛に関しては、農村より都市の方が人も多いし、かつ、密着的な空間領域である分、可能性も高いし、盛んであると感じる。農村地域での解体された、分散化した集落でのコミュニティ再生を下から、ボトムアップで築いていくのは別の意味で非常に大変であるとも感じる。ミルトン・キーンズの近郊でのコミューン活動をしているパーマカルチャーリストのサイモンとの話の中で、「エコビレッジ」の概念について尋ねたが、英国でのビレッジ概念は、分散した農家のある村を連想させるので、余り適切ではないという意見があったのが、印象的であった。幸い、日本は集落としての集住性はフューマンスケールを越えていない状況であり、「エコビレッジ化」の概念は有効であろう。

(4)アース・センター
 南ヨークシャーのコニスブローという炭田で栄えた町の駅に面した箇所に整備中のエコ・パークがあり、ロンドンの大規模なマレニアム・ドーム(2000年記念ドーム)の向こうを張った、環境型のテーマパークである。エコロジーをテーマとした大規模な情報・教育センターづくりで、炭田跡地の170ヘクタールを使って進められていて、この四月にオープンした。まだ建設途中で、この建設費の半分は政府が基金であるマレニアム委員会から出資されている。政府のニューディール政策とも関係して、地元の雇用対策も兼ねた事業の色彩もある。構想から、整備、運営の段階で、環境系のチャリティ団体等の参加もある。比較的環境運動で過激な活動をしているフレンド・オブ・アースの前の事務局長の構想提案で、始まった事業とも言われ、フレンド・オブ・アースの雑誌等で宣伝している。
 三段階での整備構想で現在は入り口周辺の主要施設が整備された段階でのオープンである。秋に占めて、環境整備のすすめ、来年また春からオープンするということらしい。敷地が炭田ということで、殺伐した風景の中に、多少の緑化と建物が建っている。パークの全面には河川があり、リバー・ダムという名称もあり、雨量の多い時には河川水位が上昇する。その水位上昇を調整するような湿地帯が河川沿いにある。駅から橋を渡ってパークの入り口である。入り口には二つの大きな施設があり、一つは炭田の丘を利用した半地下建築であり、壁面は地元産出の石灰岩である。トップライトがある。この施設は情報提供、教育、ショップである。反対側にレストランがある。ガラス張りの建物に太陽光のコントローラーとして木板がブライド代わりで張られている。
 敷地内は、水と緑、野菜、ハーブ、ロー的の建物、五感、生き物、自然芸術等がテーマとなっている場所があり、敷地の一部はパーマカルチャー的なデザインのアグロフォーレスト等もあります。敷地の中央部には、施設内の汚水浄化の植物浄化システムのリビングマシーンが機動しており、温室のような感じであり、先に紹介したスコットランドのフィンダフォーンの施設とまた異なった趣である。
 CATを大規模にした感じであるが、まだ、未完成で何となく寂しい景観ではあるが、開発前の殺伐とした景観から比べると、自然が育っている感じではある。柳をテーマとした環境芸術や創作、木のフレーム型のドーム、モンゴルのパオ等の展示は面白い。
 
     
補足:ストロベール・建築のその後

(1)南ヨークシャーの円形ストロベール・コンポストトイレ・プロジェクト
 第2回目に報告した英国のストロベール建築家の第一任者のバーバラからの情報で、ヨークでの円形ストロベールでのコンポストトイレ建築のプラスター塗りに行った。
 環境活動をしている女性、ジェミーを中心とするヘブデンブリッジ町の環境団体のプロジェクトであり、デモンストレーションを兼ねている。この町では、雄志が集まってCATのようなセンターを町に整備することを考えていて、その計画に彼女も参加していて、ストロベールのデモ的な施設整備も兼ねているようである。直径5メートルほどのコンポストトイレは、田園風景の丘の上の彼女の敷地内にあり、将来的には、グリーンツーリズムの宿泊者用のものとして計画しているらしい。
 今回のプラスター塗りの作業参加者は、バーバラ、マンチェスター大学建築学科の産業デザインの教師、地元の環境活動仲間の数人、有機野菜の販売会社の職員、彼女の息子、シモーネというイタリア人の若手・ストロベール建築家とその恋人等である。彼は、何と、5月の小生もインタビューを受けたCATでのストロベール建築のBBC放送の中で、別のプロジェクトでの国立公園内でのストロー建築でカメラに映っていた青年であった。驚きというより、ストロベールに関しては、バーバラを経由して、情報が一元化なのかもしれない。
 この場所はヒース国立公園も近い、ヘブデンブリッジの谷間の町並みの上の丘の頂上にある。30年以上前に旦那が購入した19世紀の建物で、敷地面積は少なく、200坪程度であり、周囲は大規模農家の牧草地である。敷地は見晴らしがよく、建物のすぐ後ろは、ヒースのウォーキング・コースのフットパスのネットワークがある。敷地の西側の一角に、直径5M、高さ2.5M程度の円形のコンポストトイレがストロベールで建設中である。土台は石積みで斜面に高いところで1M程度の基礎の上に、円形のストロベールの壁構造である。屋根は木造の傘構造である。
 現地に着くと、バーバラ達が開口部に金網でストロベールを固定している最中である。米国では壁全体を金網で覆う工法を取り入れているが、彼女はこの金属的な対応を嫌い、弱い開口部だけに限定している。壁はコーナーの4カ所をワイヤーで、桁としっかりと固定する方法でよいとしている。屋根の重みで構造的には安定するという。一日目の作業は、プラスターは塗らず、この金網等での入り口や二カ所の窓の固定作業を手伝った。針金で、U型をつくり、かすがいのような固定方法を採用した。夕方は、バーバラ女史から、ライムの歴史や科学的特徴、主産地等についての講義が、ワインを飲みながらあった。
 翌日はプラスター塗りである。消石灰の缶が一缶30KGで、これに砂90KGを混ぜて、プラスターを作る。1:3の比率である。比較的ゆっくりとしたペースでこね回してよい。足でこね回すのが効率がよい。しかし、とても、疲れる仕事である。比較的柔らかい感じのプラスターである。これをバケツに入れて、ストローベールの壁に、手で直に押し込みならす感じでつけていく。金網のところは比較的付きやすいが、木や、ストローの箇所は根気がいる作業ではある。この建物は、土台が1M程度あがっているので、壁下の部分でのプラスターの押さえが肝心であり、かつ、難しい。バーバラ女史のまねをして小生もコテを使ってする。プラスターの重さで落ちやすい。
 作業は、11時頃から始まって、途中昼食を挟んで、6時頃には外壁の一回目のプラスター塗りは終了していたはずである。小生は5時前に帰ったが、この時はほぼ終了していた。雨をさけるために、全面に布がぶら下げられた。明日は、二回目のプラスター塗りをするという。一回目のプラスター塗りは、5mm程度の厚みである。あまり厚いとプラスターの重さでクラックが生じるので自然とそのくらいの厚みになる感じである。二回目も従ってその程度の厚みで有ろう。故に、1cm弱の最終厚みであろう。残念ながら完成は見に行っていない。

(2)ミルトン・キーンズ郊外のコミューン/レッドフィールドでのストロベール建築
 巨大なショッピングセンター等の利便施設をニュータウンの拠点に集めたことで有名なミルトンキーンズの町の近郊にあるコミューンの「レッドフィールド」でのストロベールでの納屋づくりのワークショップに参加した。田園風景の中の大きな牧場の一角にある、古いビクトリア様式の3階建ての建物と農地等敷地が「レッドフィールド」である。
 ロンドン近郊からのパーマカルチャーリストの卵達が数名参加していた。講師はここの住民で、英国でのパーマカルチャーの普及活動で活躍しているサイモンで、『PERMACULTURE PLOT』の編集者でもあり、英国でのパーマカルチャーの活動状況は周知している人物である。彼とは、デンマークのストロベール会議で会っている。
 彼は昨年造ったストロベールの納屋の中で説明したが、これは外部だけプラスターが塗られ、内部はストロベールそのままであるが、比較的乾燥した状況ではあった。構造的には、入り口の窓枠だけ木造の枠が作られているが、それ以外はストロベールの壁構造といってよい構造である。屋根の重量でストロベールの壁を押さえ込んでいる。
 今回の作業現場は、敷地内の野菜畑とグリーンハウスのある敷地のコーナーの元々ある煉瓦の塀を一方の構造体として、反対側にストロベールの壁を立ち上げて、納屋とそのよこにグリーンハウスを増築する計画である。土台が完成しており、ストロベールの一番下になる部分を固定する木の杭が上に向かって打たれていた。また、グリーンハウスの予定の床は、ストローと砂とライムを混ぜて断熱材が一部しかれつつある状況である。材料は基本的に古材のリサイクルである。
 このコミュニティは、22年になる。法律的には、居住者が参加している一つのハウジング・コーポラティブとして存在しており、夕食等は毎日交代で作って共食である。現在大人17人、子供7人程度であり、家族としては3組である。年齢的には、30才〜40才が多いようであり、ほとんどは、外で生活費を稼ぐために働いているが、サイモンのように、ここでのコースや宿泊提供、セミナー等の会場としての提供等での収益についている人が3〜4人程度いる。基本的には、居住者は家賃をコーポに払う形式で、コーポの抱えている借金と建物の維持費をまかなっていることになろう。先に紹介したバーミンガムの「ラディカル・ルーツ」達と一緒に、英国内でのコミューン活動を紹介している『DIGGERS & DREAMERS』にも掲載されているコミュニティである。オルターナティブな居住形態を自主的なハウジング・コーポの形で追求しようとしているグループはその他に、英国内に25程度あるという。小生が宿泊したのは、敷地内のコミュニティーが持っている宿泊棟であったが、夕食は、丁度、コミュニティの収穫祭も兼ねた晩餐でごちそうであり、その後は、音楽等での宴会である。
 小生は途中参加で途中帰宅という一泊だけの怠け者参加であったので、今回のプロジェクトも完成まで見ていないが、入り口と窓の仮枠の固定と、桁と樽木を固定し、屋根を掛ける作業が進み、併せて、グリーンハウスの床下のストローを活用した断熱材の敷き詰め、それと同時に、壁材としてのストロベールの積み上げ作業が行われた。ストロベールを積み上げたり、適宜にカットする方法は、バーバラ女史のテクニックと同様である。彼はバーバラの弟子でもあるので。多分、完成したことであろう。

 
       
 長い間、拙い現地報告を読んで頂き、ありがとうございました。この調査・研究成果をいかに発展させていくか???????。
 良い知恵と、情報の提供を宜しくお願いします。
   
 1999年9月27日  バーミンガム大学 糸長浩司

 
       
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