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寄稿レポート:糸長浩司の欧州エコロジカルレポート(4)
デンマークのオルターナティブ・エコロジーの今 part.2


 1ヶ月あまりのデンマークでの調査旅行を終了して、現在はフィンランドのヘルシンキに滞在しています。7月はフィンランドとスウェーデンの旅です。6月の後半からのデンマークでの調査内容について報告します。以下の4点について報告します。
 6月の後半は、フォルクセンターでのストローベール建築の第2回ヨーロッパ大会への出席、世界のエコビレッジの支援団体のガイヤビレッジでのデンマーク・エコビレッジ大会への出席、身体障害者との共生のエコビレッジ・ヘルサでのストローベール建築作業参加、地方都市でのアーバンエコ、コペンハーゲンの再開発地区の調査、最後に、『風の学校』での風車とバイオガス発電等のデンマークの自然エネルギー開発状況について日本エネルギーフォーラムの団体研修への参加という、デンマークを東から西への2回にわたる移動の忙しい旅でした。
 今回も分量が多くなっていますので、目次を見て、興味のあるところだけでも読んでください。

糸長浩司 日本大学生物資源科学部助教授
パーマカルチャー・センター・ジャパン代表

目 次
1. アーバン・エコロジーとアーバン・パーマカルチャー
2. ストローベール建築
3. 多様なエコビレッジとビレッジの形
4. 風車発電とバイオガス発電(デンマークの食糧生産と自然エネルギー自給戦略)
 
     
1.アーバン・エコロジーとアーバン・パーマカルチャー

(1)地方都市のアーバンエコロジー
 デンマークのアーバンエコロジーの試みは、ここ5〜6年程度盛んになっています。地方都市の市街地内の居住地環境の改善にエコアップ的な視点での整備事例が出ています。今回は、環境省の出版した『デンマークのアーバンエコ事例』等の資料に掲載されている地方都市の事例地を訪れました。
1) オーフスの市街地内集合住宅の中庭のエコアップ
 オーフス駅の裏の市街地の中庭の再整備である。以前は個別所有で塀で区分された中庭に小川を流したり、緑化したり、こどもの遊び場の形成、共同のゴミ置き場の設置等である。また、南面テラスのガラスでのパッシブソーラー建築が見える。中庭が建物との続きで個別に分担されてきた中で、緑化した共同空間の創造であり、比較的明るいみどりの多いオープンスペースとなっている。

2) コーディングの集合住宅内の中庭でのピラッミッド型リビングマシーン(植物による温室型汚水浄化施設)
 ユトランド半島の中程にあるコーディングの町。この町の中心部は歩行者天国と、ボンネルフの道路の組み合わせで、比較的こじんまりとした快適な歩行者空間を作っている。近代と歴史と快適性を兼ね備えた町並み整備のされている中心市街地である。駅から、このボンネルフの道路を歩いていくと改善された集合住宅の中庭に、巨大なガラスのピラミッド型の温室が目に入る。中庭に、葦等の植物の池が配置された温室である。雨水は便所の水として利用され、集合住宅の便所と雑排水の汚水は、一次の沈殿層を経過した後、この温室で栄養分は植物に吸収され、浄化された水は外の池に流れ、最後は地下浸透していく仕組みである。温室の中では花を育てる仕組みにもなっている。池の周囲には子供の遊び場がある。先に、英国のフィンダフォーンでのリビングマシーンとは仕組みはことなるが、河川浄化を人工的な集約化したものである。以前、ベルリンの市内での屋外型の同様の実験施設を訪ねたが、これはそれの温室版である。温度調整はコンピューターでしている。管理は市の職員がしているらしいが、稼働はしているようだが、十分に快適な温室環境になってはいなかった。外の池も多少富栄養化している感じである。

3) スラゲレスの中庭のエコアップ
 コペンのある島の西端の都市のスラゲレスの集合住宅の中庭のエコアップ化の事例。
 駅前の街区である。テーマは、街路の緑化と、中庭のエコアップであるが、整備されて5年程度は経過しているが、モデル的な整備をトップダウンでした感じでは、整備後の利用状況等は見た感じでは芳しくない。中庭は、私的な空間を共同空間のみどりのあるオープンスペースとしての開放、し、農園や池、公園、植物栽培のための共同利用のグリーンハウスを建てている。ただ、利用状況はよくない。デモンストレーション的な場所としての先進事例地として評価されたようだが、所詮、行政の先駆け的なトップダウンでの整備であったのであろう。本当の意味でのボトムアップ的なエコ化ではないのがこの結果を招いているとも考えられる
(2)ハイテクエコ建築への志向
 2年前に設置されたエネルギー・環境省と住宅建設省の共同設置機関である「デンマーク・アーバン・エコロジー・センター」の開催した、ドイツのベルリンのポツダム広場の再開発でのハイテクエコ建築シンポに出席した。ポツダム広場の再開発の建築群が、エコロジー建築の理念でのデザインと建築技術に関するドイツ人女性の講演である。レンゾ・ピアノの高層ガラス建築や、磯崎新のプロジェクトであり、1992年から始まり、ほぼ9割は完了しているという。ここでのエコ建築群は、エコ計画に基づく、省エネ対策とガラスの二重壁でのパッシブ・アクティブソーラー技術、池による空気循環等のエコテクが使われており、かつ、多様な技術をエコの観点で統合化、管理しながら全体事業を進めている感じである。コージェネ対策を徹底し、一次エネルギーの利用を極力抑える対策が取られている。地域暖房、冷房等の都市エネルギーシステム開発。このプロジェクトは、建築やエコ・エンジニアの技術者の現代のエコテクを駆使した総結集の作品ということか。ただ、ポツダム広場という都市の中の環境に巨大な建築群が林立することは必要ないのではないか。
 参加者は、企業系の人もいたようで、比較的好印象での質疑であったが、ひとりだけ、高層建築への疑問を呈している人がいた。デンマークのエコ建築関係者は、ドイツのエコハイテクから学びたいということか。主催者側のねらいとしては、コペン等でのオフィースビルのエコ化をどうしていくかという視点での興味としては大きかったようである。主催者の一人の女性のリエは、フォルクセンターのストローベールヨーロッパ大会にも出席していたが、彼女に、デンマークは巨大なエコテク建築をアーバンエコとして進めるのではなく、スモール・スケールでのエコ建築、都市改造と、また、住民が最初から参加したアーバンエコを進める方向を考えてほしいと話したが、彼女も、比較的ストローベール的なローテク・エコ建築の方が好みのようではあったが、小生の今回のデンマークの調査レポートを後で送ることを頼まれた。
 
(3)コペンハーゲンの再開発とアーバンパーマカルチャー
 コペンハーゲンは市内の地区別の再開発の計画と実践が進んでいる。スウェーデンとの陸続きとなる大ブリッジが完成すると南スカンジナビアの国際中心都市としての機能を果たそうというわけだ。再開発のテーマの中には、アーバン・エコロジーが入っている。コペンのローカル・アジェンダ21の中でも唱っている。第3回報告で紹介した『エコシティガイドブック』もそんな背景の中で製作されたものであろう。また、今年は「エコマップ」というコペンの中心市内での有機パン屋、野菜屋、コーヒー点、ガーデン、情報センター等がマッピングされている。その中のいくつは、「パーマカルチャー・デンマーク」のNPOが行政の環境教育的なプログラムで地域住民と実践して整備したパーマカルチャー・ガーデン等もある。
 中央駅裏地区で、かつては風俗産業も多数あった地区であるベスタブロー地区の再開発地にパーマカルチャー・デンマークの事務所がある。この再開発地区の住民対応も兼ねた再開発情報センターとも連絡をとりながら仕事をしているようだ。このセンターは、行政の思惑としての再開発とここに住んでいる比較的低所得者層の人達との生活保障や社会的問題を対応するために設置されたものであり、建築家とソーシャル・ワーカーで構成されている。テーマは都市のリニューアルである。
 コペンの暗部として長い間あったが、コペンがスカンジナビアの国際中心都市となろうとしている中で、この地区の環境浄化と居住環境の改善を目的とした再開発の拠点場所となっている。この地区は、比較的低所得者層やドラック、風俗産業等であり、改善の急先鋒となっている。また、立て替え後は、ここに住み続ける人の率は半分程度であるという。理由は、家賃の高等の問題もあるし、また、立て替え時に移転した先の方の居住環境を選択する場合もあるという。ただ、このセンターで出している英文のパンフレットには、この地区の社会的な変革をするのだら、旧居住者がここに住むのに家賃が高くなるという心配はあるが、時代の趨勢で仕方ないというような表現になっている。ここら辺が微妙な点である。この地区の建物所有は個人所有が多いようで、環境の質が向上することでの収益の増大を市当局は唱い文句にしている。従って賃貸料の単価があがるということである。市当局は、この地区の社会経済的な質の変革を進めようとしている。一方で、住宅移転者の住宅対策等もセンターがしているようだ。一方的なクリアランセに対して地域住民の反対運動もあったようだが。また、折角住民の主体的な行動で整備したパーマカルチャー・ガーデンが、市の住宅開発計画地となり、住民の活動が低下している場所もあり、多少ちぐはぐな事業展開の箇所もあるようだ。
 パーマカルチャー・デンマークのトニーと対談する。パーマカルチャー・インスティチュート・ヨーロッパも名乗っている事務所である。彼らの最近の提案としては、コペンハーゲンとその近郊農村地域とのバイオリージョン的な連携を地域計画的に提案している。コペンの都市生活資源を供給する農村部との連携である。ただ、バイオリージョン的な提案をコンペでしたようだが、まだ政治家には理解されなかったという。
 バイオリージョンとの関連で、彼に郊外で展開されているデンマークのエコビレッジ的な動きをどう評価するかと尋ねたが、感触としては、積極的な評価ではない。郊外地で借金をしての土地の取得や建物建設等は、全ての都市住民にできることではないこと、都市そのものをどうパーマカルチャー的な意味で変えていくのかという点に彼の関心は強いようであるし、また、田園と都市との食を介した提携のようなシステムを構築したいようだ。バイオリージョンの思想の下に。CSA(コミュニティ・サポーティッド・アグリカルチァー)的な試みは英国でも、デンマークでも希望されているが、展開しきれていない。有機農家、小規模農家の数が圧倒的に少ないことが原因している。日本の状況は世界的にも希である。先進国でかつ、数多くの農村集落の存在、そして、数多くの農家の存在と、比較的生産性をあげることのできる気候環境、有機農業の歴史が長いこと等を考えると、日本こそ、この種のテーマの先進地であるともいえる。
 また、彼はコペンの18家族程の参加でのパーマカルチャー的農園をコペンの西のロスキルの郊外で作り始めている。既存の集落のはずれの農家の農地を借りて実験的に始めている。自分たちの食糧自給をテーマとしている。池や、温室等を整備中であり、週末はコペンから住民が来て整備しているという。ただ、圧倒的な大規模農業が展開されている田園景観の中では、些細な試みとも映る。
 
     
2.ストローベール建築

 今回の調査旅行では、ストローベール建築との出会いが多い。英国でのCATでの一週間の建設作業、アイルランドでの円形のストローベール住宅の調査、そして、デンマークのフォルクセンターでのヨーロッパ・ストロベール大会への参加である。環境共生でローテクの建築技術として今注目されている。
 大会での基調講演は、米国のストローベール建築家の第一任者で、かつては超近代的な「バィオスフェアー2」も手がけた建築家のデービット・エイゼンベルグである。ハイテクからローテクに移行し、現在はアリゾナで適正技術開発センターというDCATという組織を立ち上げて、主に、ストローベール建築の普及につとめている。ストローベール建築はカルフォルニアが盛んであり、英国等から研修に行って、その技術を自国で普及させようとしている。講演内容は、環境問題、近代都市の抱える矛盾に対して、建築のあり方として、地域主義、土着主義的な建築材料の発掘と利用開発の話が主である。かつ、地域住民が直接気軽に、利用できる材料を使った建築等である。彼は、鉄からコンクリートに至る建築材料で近代的な建物を建ててきているが、どうもその行き着いた先が、ストローベール建築ということか。
 農業廃棄物となっていたストローベール、燃やせばCO2を排出する材料を住宅の中に固定すること、一方で木材の利用削減にもつながり、輸送環境負担の低減等があげられる。ストローベール建築の耐久性や湿度との関係、デンマークの気象条件等の関係についての質問に対しては、基本的には十分対応できるものという判断であるが、個々の地域での実験的試みとその結果の交流を通して、建築構法等を改良していけばよいという判断である。材料としての魅力を活かして、これをどう活用するのか個々の地域での近代的な知恵、技術を開発していくこと、また、彼との討論では、地域住民が使える技術として普及させること、特に、第三諸国での建築改良に対しては、人間資源をいかに活用するのかという点である。コロンビアの竹建築のスライドもあった。また、北京の北での試験的に建設をしたようだが、地震にも耐えたという。メキシコでのスラムの住宅改良や、モンゴルでの都市部での住宅改良の方法として実験的なプロジェクトも進められている。カリフォルニア州では、ストローベールの建築基準が出来ている。
 ヨーロッパ各国でのストローベール建築等のプロジェクトの事例発表。デンマークはここ5年盛んになってきて、DIYのNPOのメンバーが住宅で試みている。小生も、メンバーの一人がエコビレッジ・ヘルサでの自転車小屋のストローベール建築の建設作業を3日間ほど手伝った。構造材、壁材、天井材、屋根材等に活用し、形もユニークなものが出てきている。丸い屋根のストローベールの家。ストローベールではないが、薪を壁材に積み重ねて、それを粘土で固める方法が面白い。ドイツの発表者は、フォルクセンターのストローベールプロジェクトの責任者であり、湿気対策として基礎と屋根の構造を強調していた。南方でのNPOプロジェクトとして高床式でのストローベール建築の開発等。英国は、95年のフィンダフォーンでの世界エコビレッジ大会時のストローベール建築のデモが最初で、その後、英国のストローベール建築の第一人者になるバーバラジョーン女史が米国に行って帰ってから普及活動が始まる。現在は、SBBA(ストローベール・ビルディング・アソシエーション)が組織され、40〜50の建物が造られている。ミルトンキーンズの近郊で新しいコミュニティ形成をパーマカルチャーで進めている場所でも、ストローベール建築が始まっている。オートストラリアでは、ストローベール建築の企画化を進め、会社組織での活動が始まっているようだ。
 湿気の問題がある。ストローが腐るので壁内を重量で18%以下に乾燥させる必要がある。米国のカルフォルニアの基準を見ると、18%で相対湿度で60%以下。20−25%では危険であり、12%までが適切という。
 帰国後、ストローベール建築の実験に取り組みたいと考えていますので、興味のある方は連絡ください。

 
     
3.多様なエコビレッジとビレッジの形

(1)ヨーサイ・エコビレッジ
 2年ほど前に訪れた、オーフス近郊のエコビレッジである。デンマークのエコビレッジの先駆け的なところである。現在も、新しい住宅の建設作業が進められている。敷地全体は25ha程度あるが、多くは農地でビレッジ内の自給を目指して、地元の自治体から借りている。住宅地になる場所は購入してあり、個人住宅の部分は個人所有となっている。この地区の周囲には、コハウジングや環境共生型は住宅団地が開発されてきており、郊外のはずれの新興住宅地の開発の一つのパターンとして試みられているようであり、近在の人の評価と興味は高いようである。最終的には、500人程度のコミュニティ形成を目指している。現在、事務所横に、情報センター的な機能を果たす建物はストローベール建築を予定して基礎工事が終了していた。デンマークのエコビレは、ストローベールが一種のブームとなっている。

(2)障害者との共生型エコビレッジ・ヘルサ
 ヘルサは2年前にも訪問しているが、今回はストローベール建築作業の手伝いも兼ねて3日間ほど通った。このエコビレッジは、シュタイナーの理念に基づいて、精神薄弱児の人達と健常者が共に暮らす集落を作っている。既存の集落のはずれに50エーカーほどの土地を取得し、住宅、障害者の居住棟、センター棟、畜舎、農場等が整備されつつある。この種の試みはヨーロッパで始めただという。10年間の討論結果として、このエコプロジェクトがスタートした。ファンデーションの構成メンバーは200人程度という。この50エーカーは、財団が最初に取得し、その後、このプロジェクトに参加して、移ってきた人達の住宅の用地は、各自が財団から購入する形となっている。障害者の住む建物は、財団所有のものである。基本的には、個人の住宅地だけが個人分割されていて、その他は財団所有と考えてよい。施設職員の給料は国からの援助で支給される。その他の施設の拡充やエコビレッジの多様な整備は、財団が独自に資金集めをしたり、構成員の中からの寄付等の活用になる。ある資金が手に入った時、それをどう活用するかは集団討議される。ここでの作業グループは、全部で約20ほどあるという。代表的なものに、パン製作と販売、織物、バイオダイナミック農法でのファーミング、ガーデニング等である。ここのグループに障害者も含まれている。健常者と障害者の共同でのグループ構成で、グループ内の集団討議で物事を決定しているという。各グループとも、毎週火曜日にミーティングをしている。シュタイナーの思想を元に、健常者と障害者の共存の地域づくりを目指している組織でもあり、集団民主主義的な装いがあるし、ディセントライゼーションという言葉を強調していた。意志決定が少数化することの問題を意識している。ピラミッド形式ではない組織のあり方である。
 ここに住んでいる人達や財団の関係者の多くは、何からの形での障害児の親がかかわっているのであろう。新しい建物として、シングルマザー達のための住宅を建設予定という。健常者の若い人達の入居を進める目的もあるし、デンマークではこのシングルマザーは一般化しているという。離婚率が非常に高いようである。彼は、子供二人に母親という家族が多いという。そういう人達にとってはここでの環境はよいという。また、ここの生活は、いわゆる集団生活的な色彩はさほど強いわけではない。近い将来に、芸術関係の人や、出版関係の人達も移住してきて、多様な仕事の場としても形成されていくという。昔のデンマークの村には、多様な職人が住んでいたわけであり、そんな村を創造したいのかもしれない。そこでは、障害者も一緒に生活できる場が形成されている。障害者だけの大きな施設は多くあるが、最初から、健常者と障害者の共存を試みている村づくりはヨーロッパでもここだけではないかといっている。
 この施設全体の構想計画は、デンマークの環境建築家でパーマカルチャーリストのフロイトの事務所が住民と一緒にデザインしている。

(3)ガイヤビレッジ
 デンマークのエコビレッジをリードしているガイヤトラストの研修所を兼ねた「ガイヤビレッジ」でデンマークのエコビレッジの大会に参加した。ビレッジと行っても、ここは、まだ居住者は少なく、これから新しい住宅建設を始めるという場所である。ガイヤトラストの所有地である。ここで、ガイヤトラストの主宰者のジャクソン夫妻に会う。今回の集まりは、現在エコビレッジに暮らしている人というより、今後、エコビレッジ的な暮らしをしたい人達や、その具体的な計画を煮詰めている人達の集まりであった。ロスキルやシルケボルク等の地方都市近郊での具体的なエコビレッジ計画の話があった。また、ワークショップでは、デンマークのパーマカルチャーリストのハミッシュやフロイトがパーマカルチャーの講義をしていた。
 ハミッシュ達とのデンマークでのアーバン・パーマカルチャーの動向を尋ねるがあまり詳しくはしらない。どうも、デンマークのエコハビテーションも、都市派と田園派に二分している感じもある。日本と同様か?。

(4)デンマークのビレッジと日本のビレッジ
 インド社会学者の書いた、デンマークでの農村集落の調査の本を読んでいる。この本は、クヌッド達の集落の事例調査であるが、デンマークの農村集落のコミュニティとしての状況は日本の農村集落のまとまりよりも寂しい感じである。基本的には、農村集落のコミュニティ形成は破壊されているといってもよい状況ではないか。19世紀での農地改革での散居集落の形成が進み、塊状集落的なまとまりはなく、分散型の農村居住環境となり、その後の近代化での農地のより大規模化が進み、また、都市化の中で農村集落への移住者の率が高くなる。車の普及等での分散的な暮らしの展開で、コミュニティの形成は難しい。日本と異なって畑作は水管理等での共同性を必要としない。かつては、複合経営農家が一般的であったものが、近代化の中で100f規模の大規模化での、専門分化した専業農家での生き残りとなっている。多少、有機農業も展開が出始めているが主流とはなれない。広大な農業地帯の中で、農業関係者の数は限定されている。農業を介してのコミュニティ形成はない。また、分散化しているが故のまとまりも少ない。
 農業経営の規模の論理が、ヒューマンティーのスケールを越えしまっている中での、コミュニティ形成は容易ではない。あたらしい形のサステーナブル・コミュニティ形成が求められるゆえんである。
 都市的な過密居住を避けて、郊外地に居を構えたいという暮らし要求をかなえる上で、デンマークでは、コハウジング、エコビレッジへの発展系があると見る。ただ、本来自給性も高く、コミュニティ形成のあった既存の農村集落の再生という形でのビレッジづくりはまだ進められていない。
 日本の集落形成とその維持の状況は世界的にも、これ事態がサステーナブル・ハビテーションの世界遺産に相当する価値をもっているのではないかと感じる。内紛や内戦はあったものの、基本的には同一民族、文化価値を形成している人間達での地域形成が1500年以上も続き、また、特に、250年以上の長期の間、江戸時代という「安定」した地域社会形成の仕組みを形成できる時間があったことは、世界史的にも事例がない。その意味で、かつて、サステーナブル・コミュニティ、サステーナブル・エコ・ハビテーションの時代を日本は、世界に先駆けて持っていたことをもっと強調していくことが必要であろうし、その歴史的な状況の中での日本の地域再生、エコビレッジ化をどう進めるのか、また、新しいサステーナブル・コミュニティの形をどう形成するのかが問われている。

 
     
4.風車発電とバイオガス発電(デンマークの食糧生産と自然エネルギー自給戦略)

(1)風の学校
 鈴木さんという日本人で、デンマークに30年近く住んでいる人が、風の学校というデンマークの風力発電やバイオガス、エネルギー環境政策の研修所を97年に開設している。日本の環境団体や生協とのつながり、また、彼が所属しているNEG・MICON社の風車を日本に40台以上納めている実務家でもある。日本の風力発電や畜産のバイオガスプラント関係者の視察のメッカとなりつつある。
 今回は、日本エネルギーフォーラムという自然エネルギーの普及を進めているNPOの視察団と一緒に、デンマーク内のウィンドファーム(100台程度の風車が田園地域に並ぶ)や、共同バイオマスプラント(畜産糞尿と家庭の生ゴミ等の共同処理)、バイオマス発電農家等の視察を風の学校がアレンジした。宿泊施設も持っており、15人程度は泊まれる。
 ここでの報告は、風の学校の研修内容を抜粋したものである。

(2)風力発電
 デンマークの環境産業として、世界一を誇るのが風力発電産業であろう。風車の製造台数は世界の約半分をデンマークが占める状況である。70年代のオイルショック以降、デンマークは国策として、エネルギーと食糧の自給体制を確立することをあげ、風力発電、廃棄物発電(ごみ捨て場のガス利用)、畜産糞尿からのバイオガス発電、ストローベール発電等のバイオ発電等が盛んになっている。
 20年後には、風力発電で電力需要の30%をまかなう計画で、大規模な1000KW以上の発電能力のある風車を数多く建設する計画がある。それも、海上計画である。現在の主流は750KW級という。ここ、5〜6年の拡大はすさまじいものがある。世界的な風車需要が拡大すること、それも規模の大きい風車需要があることを見越して、その研究開発が進んでいる。また、NEGとMICON社という二大メーカーが近年合併して、世界一の風車製造会社となった。元々は、小さな町工場の巨大産業化である。
 国内での風車の設置場所は、風力調査や景観調査の上で、国の土地利用計画の中で決まっていて、許可がいる。大規模農地を持つ農家にとって、現在は風車は大きな経済的利益をあげてくれる発電所となっている。投資した資金は5〜6年程度で回収され、その後は売電収益が純益として入ってくる。かつては農業しかなく、比較的貧乏な農村地域がフィンドファームの設置で経済的な利益をあげて裕福になっている農村もある。まさに、風土産業である。一部は、共同出資での風車設置もあるが、近年は、個々の農家での投資による風車と電力会社の設置する風車が多いようである。非農家の人にとっては、風車の持てる農家はうらやましい存在となりつつあるのではないか。風が金を運んだ来る。
 国民一人当たりの設置台数は高い。日本は0.37W。ドイツ37.46W。米国7W。デンマークは、296.54W。これをデンマークは国民一人当たり1KWの発電をしようとしている。
 
(3)バイオガス発電
 風力発電についで、大きなエネルギー源がバイオガスである。畜産国家のデンマークでの家畜の糞尿処理は国家的な課題であり、この環境対策とエネルギー対策の両方を兼ねた施策がバイオガス発電の開発である。畜産の糞尿を9ヶ月を貯蔵するタンク設置が農家に義づけられた。70年代に一度バイオガスの開発が進められたが、情報不足であまり普及せず、その後、政府の施策として、一般家庭の生ゴミ等を混ぜた共同バイオガスプラント開発が進んで現在に至る。個々の農家からの糞尿を埋設パイプで搬入し、ガス抜きしたスラジーはまた、パイプで個々の農家に送られ、肥料となる。ガスは発電所にパイプ輸送され発電される。その販売コストが農家の収入になる。その際に、生ゴミや、食品会社の産業廃棄物等を混入させるとバイオガスの発酵能力が増大するので、混入して処理している。基本的には、温度調整がポイントである。温度調整と何をブレンドするかという技術開発が進んできている。風力発電に続いて、バイオガス発電で、大きな収益を得ている畜産農家も出てきている。フォルクセンターが指導している養豚農家がその事例であり、デンマーク一の効率のよいメタンガス発酵を実現している。糞尿1立方メーター当たり、60立方メーターの発酵能力である。非農家にはうらやましい存在である。糞が金に化ける。
 小農家の人達が集まって、バイオガス装置の開発の延長で、集中バイオガスの開発が進む。市町村が共同バイオガスの促進援助をしてくれる。市町村が発生したガスや電気の利用先を明確にしているなかで、アウトプットのガスの売り先が最初から明確であるので成功している。この点での日本は、売電での通産省、消防関係(ガス)等での解決課題が大きい。デンマークはエネルギー自給という基本的な国策の元に、個々の制度や仕組みの体制を整えてきているのに対して、日本は国策としての環境対策、エネルギー対策、食糧対策がないままに、肥大化した独占産業化の巨大資本の利益を維持したままでの小手先の仕組みの組み替えで対応してきた。この体制と制度を一日も早く変革していかないと、新世紀の食糧とエネルギーと環境問題の解決に遅れをとることは明らかであると感じる。
 
 風・土を活かして、風・土の業を起こし、風土の合った持続的な暮らしの場、コミュニティの形成を目指したい


 
       
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