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コペンハーゲンでのアーバン・エコロジーの見聞
2年前に入手した『アーバン・エコロジー・ガイド/コペンハーゲン』に記載されている住宅地や、コモンスペースを見る機会をもった。
デンマークの環境政策は、ここ10年ほど非常に熱心である。92年のリオの環境サミット以降、風力発電の開発、バイオガスエネルギーの開発等盛んであり、かつ、大きな経済効果をあげている。世界的にもこれらの技術の輸出国となつている。日本でもデンマークの第一の風力発電メーカーのミーコン社の風車が立川町に建っている。国内消費電力の10%を風力発電でまかない、そのほかには、バイオエネルギーとして麦藁を燃料にした発電施設や、畜産糞尿を集めて大規模バイオガスプラントで発電と温水を生産し、地域にパイプで供給しているプラントを、オーフスの近郊の田園地域で見てきた。そこで処理された液肥は、有機農家に供給されるエネルギー対策、畜産糞尿対策、有機農産物の生産との同時性を進めている。
アーバン・エコロジーの動向は、1995に中央政府の環境省から、『THE ECOLOGICAL CITY DENMARK』というレポートが、OECDに対するナショナル・レポートとして作成されている。都市の住宅地の再開発に当たり、パッシブ型の住宅への立て替え、南面や西面するバルコニーを二重ガラスで囲み、グリーンハウスをつくるタイプ、また、コハウジングのような集合住宅での入り口とコモンスペースとなる通路やテラス等は、ガラスの大屋根が設置される。また、熱吸収率をあげるための、壁面が真っ黒という住宅も見られる。殺風景な中庭をビオトープ的に改造している都市住宅も出てきている。ただ、その中でドイツで試みているような汚水の植物浄化システムまで採用しているものはまだないようである。
日曜日のコペンハーゲンの市庁舎前の広場では、イベントが開催されていて、環境系の団体の催しがあった。風力発電のデモンストレーションを市民がしていました。40mもある羽を設置して、コペンの湾岸に設置する計画を市民が提案しているものです。そのほかには、海の波力での発電機械の紹介等もあった。
都市住宅でのアーバンエコの試みは、コペンの事例を見た限りでは、パッシブとアクティブでのソーラーシステムの採用、ガラスによるテラスのグリーンハウス化、雨水の地下貯水利用等が中心的なところであろうか。中央政府が支援している情報センターとして、近年、オーフスに、「アーバン・エコロジー・センター」という機関が設立された。ただ、小さい機関であり、まだ、情報収集とセミナー開催等の活動だけのようである。来週には、そこが主催するドイツのアーバンエコに関するセミナーに参加予定。
以下に、ガイドブックで紹介されていたコペンハーゲンのアーバン・エコの場所の幾つかを紹介する。
●NO2, BO20, TJORNEGADE
9 インナーシティのコハウジング
比較的参考となる集合住宅で、コハウジングで改造された都市内の住宅。屋根は一面、古い建物と新しい建物が一緒に一つの街区を形成している。中庭は、みどりが適当に配置され、子供の遊びや、集会のできるグリーンがあり、丁度、街区住民の野外パーティの準備を住民達がしていた。中庭には、ゴミステーションもあり、分別収集されていた。みどりも比較的豊である。ただ、菜園のようなものは見えなかった。建物角は、コモンの食堂のようであり、今日の昼食の準備を若い女性がしていた。コペンの都市内の住宅は街路からは閉鎖的で中庭の感じはほとんど外からは見えないが、ここは、外に対して開放的であり、中庭でのアーバンライフが見られた。
●NO33, OKOLOGISKE LGANGSAETTERE, GULDBERGSGADE 8 アーバン・エコパーク
コペンでの若い連中の最初の都市内のエコ的な公共の場所の建設箇所であり、街区の中央部分を子供達が楽しめるような自然公園や、菜園、遊び場、池等が建設されていたが、どうも様子がおかしい。荒れている感じで、バンダリズムもある。池には水がない。グリーンハウスも利用していない。どうも、活動を熱心にしている雰囲気がない。事務所もない。そこで池にいた人に聞くと、どうも市当局がここに住宅計画を持ち上げたようで、いままで活動していた住民達が活動を中止しているようである。良くあるパターンである。彼の印象では、エコロジーブームが5年ほど前は盛んであったが、現在はどうかということか。
●NO5, MARIENDALSVEJ 14-18 シミアー型コハウジング
老人達の居住を対象としたコハウジングとエコ型の集合住宅のプロジェクトである。95年に出版された、『エコロジカル建築 デンマーク』等でも紹介されているエコ集合住宅である。内部等は別の日に訪れる予定にしている。開放的な中庭とそれに面したテラス等の感じが比較的落ち着いていてよい感じではある。ただ、シミアー型のコハウジングはその持続性に対して、多少不安を感じるところである。
●DANNEBROGSGADE 18 都市内集合住宅
旧来の集合住宅の一部を西向きのテラスをガラス張りにし、かつ、雨水を地下貯蔵している初期の計画のもの。建物周囲は、バンダリズムの宝庫という感じではある。壁面は、確か、以前、パーマカルチャーリストのリーハリソンがコペンの事例として、地域住民が再開発に対して反対し、立てこもっていたという団地の景観と似ていた。この場所かもしれない。壁にコミュニティの壁画が大きく描かれていた。
●NO13 EGEBJERGGAR 環境共生型郊外住宅地
モデル住宅地として整備された場所で、南側にそれぞれガラスのテラスを持ち、熱効率をあげている。周囲にも、数多くの環境配慮型の共同住宅が建っている。特徴的な物としては、円形の土楼型の集合住宅もあった。同じように、南側の外面の共同空間の部分やテラスに相当する部分がガラスの張りの部屋となっている。雨水の貯蔵、断熱、ガラス室の採用、ソーラーパネル、パッシブ・アクティブのソーラー住宅は、90年代のはじめ頃から、環境共生型の住宅の一般解としして普及しているようである。コートを囲む建物形態を多い。また、外壁を真っ黒に塗っている住宅もある。熱吸収をあげるためであろう。
変わった住宅が、池に面してあった。屋根が一種のこれら葺きといえるもので、外壁の板と同様の素材で仕上げられている。
●VILLA VISION オートマチック型モデル・エコハウス
研究所が郊外の田園地域に立地しており、その一角にモデル住宅として建設されたもの。全部電動で室内環境をパッシブ的仕掛けも含めて調整する。花びらが開いたり、閉じたりするような形態の一種のSFチックな建物である。ただ、環境的には、孤立して、工場の間にある感じであまり周囲の環境は良くない。トップの遮蔽は、電動で区分されたテントが覆ったり、巻き取られたりする仕組みである。ここまで、機械仕掛けですることもないとは思うが。ガイドブックではモデル家族がここでの生活を体験していると書いているが、今は、事務所的な機能だけのようである。この建物の後ろには、ソーラーパネル等の展示場所もあった。
●ENGHAVE PLADS アーバン・コミュニティ・ガーデン
コミュニティが中心となって整備したはずのアーバンガーデンのはずであるが、建物には落書きがされ、建物の前の農園か花壇も手入れが行き届いている感じではない。活動は不活発のようである。時期的にまだ、夏ではないからかもしれないが。主要道路の交差点の広場部分を活用している。期待していた、コミュニティ・ガーデン的な雰囲気にはほど遠い。騒がしい交差点の中の広場では。
●KARENS MINDE コミュニティ・ファーム
エコロジカル・コミュニティセンターというふれこみ。古い建物の一部は喫茶店になっていて、その周囲には小学校の子供達が世話をしている動物たちの畜舎と運動場がある。丁度子供達が動物の世話をしていたが、日曜日であり、喫茶店と事務所はしまっているようである。英国のシティ・ファームの小型版のようである。
●コペンハーゲンの解放区の自治区・クリスチァーニア
知る人ど知る、コペンハーゲンの解放区であり、かつての軍の施設を都市の若者が占領し、自治区を形成している場所である。コペンのかつての星形のお堀の一角を占領して、自治的な機構を構築し、自治運営している場所である。都市計画の中で、この場所を再開発する計画もあったが、現在は法的にも公認された自治区になっている。外観は、派手なペイントが壁が描かれていたり、メインストリートで大麻を販売したりもしているが、地区内はみどりもあり、占領当時からの思想である都市の中の自由で環境的にも優れた居住地の形成を自主的に進めてきた中で、多少、2年前より環境的にも良くなってきているし、雰囲気も明るい。多くの観光客が来ている感じである。ここで、昨年、オーストラリアのパーマカルチャーリストのジェフがパーマカルチャーのコースを開いたので、そのことを住民の一人の女性に聞くと、彼女も生徒の一人であった。その後のパーマカルチャーの試みは、一カ所の緑化をした程度であまり熱心にしてはいないという状況らしい。自立的な建設作業の住宅づくりがDIYで進んでいる。ここでは、有名な日本のリヤカーを前後逆にしたような、クリスチァーニアバイクという荷台付きの自転車が開発され、コペンの市内を走っている。 |
以上、コペンのエコアーバンの試みは、建物に関しては、テラスのパッシブ化。ガラスの利用。雨水の地下所蔵、中庭の緑化等である。多少、コハウジング的なコミュニティの試みと一緒のものもある。しかし、どうも、インナーシティでのバンダリズム等の問題か、他民族の共生の問題か、週末ということか、しっかりと鍵のかかった中庭と落書きの多い住宅の道路景観を見ていると、それほど、エコシティとしての試みが感じられる景観とはなっていない。また、訪れたコミュニティ・パーク的な試みの箇所も活動停止のような状況であり、どうも低調というイメージを抱かざるを得ない。道路は、相変わらず、車が激しく動いている。空気もさほど良い状況ではない。落ち着いた都市の散策という感じにはほど遠い。先に、報告した英国でのコミュニティ・ガーデンや、シティ・ファーム的な市民活動の方がアクティブであると感じる。
今週は、フォルクセンターでのストロベールのシンポに参加したあと、ガイヤ・トラストのエコビレッジに滞在予定です。
こちらも天候は不純ですが、ここの何日かは天気が良好です。日が沈むのが夜の10時過ぎですので、長い夜をどう有効に過ごすかは、北欧の夏のビジョンでしょう。
日本は梅雨とのこと、皆さんお体に気をつけてお励みください。
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