最初の調査地の女性で,バーミンガムから電車で20分程度行った農村部で小規模農地を購入し、アグロフォーレスト的なパーマカルチャーを試みている女性。彼女の家は、町中にある。自宅から車で20分程度いった、斜面地がフィードである。5エーカーの元の牧場地を5年ほど前に購入。値段は、7万£(1400万円程度)である。グループで購入している。管理は、ロベルトが一人でやっている。週末には仲間が来て手伝っている。
南斜面で、西側に小川が流れていて、入り口の近くに池が設置されている。入り口の東には、蜂の箱が3ケース。蜂蜜は、一瓶2£で販売している。羊を20頭近く飼育。羊小屋の南には、菜園。キャンピングカーあり。フラードームをグループの人達と作った。斜面の中で比較的平らな箇所が利用されている。将来はそこに、小屋を建設する予定。敷地全体は、トップは乾燥の箇所で下に行くに従って、湿気が増している。ダイレクトのコンポストトイレが作られていた。穴もなく、直接汚物が見える状況。野外トイレそのものである。利用頻度が低いのだから、これでよいのかも。池の周囲は、果樹を植えて、アグロフォーレストの箇所にする計画らしい。マルチチングシステム、スウェールシステムを作っていた。羊の餌は、小屋の中で干し草をくれていた。全体的には、パーマカルチャーの初歩的なデザインを実践している。雨水タンクも斜面を利用して10個程度のタンクに貯水していた。彼女は、パーマカルチャーのコースを開いたり、蜂蜜を販売している程度である。自宅の前庭は、パーマカルチャー的なデザインとはいかないが、多様な野菜と、鶏を小屋で飼っていた。卵をとるのが目的。どうも、英国のパーマカルチャーコンペで賞をもらったらしい。
ロベルトの英国でのパーマカルチャー的農場経営に対する意見は、英国では、近代的で大規模農家が多いので、パーマカルチャー的な試みの拡大は難しい。また、コミュニティ・エディブル・ガーデンの試みも少ないという。コミュニティの意識が英国では欠けている。彼女の近隣とのつきあいも、さほど緊密であるわけではない。パーマカルチャー的農業の可能性としては、ウェールズが適地ではないかという。農地が安いので、先駆的な試みが可能となっているといことらしい。都市近郊での試みは、土地が高いので難しいという。彼女のグリーンツーリズムに関しての評価は低い。農場が本来の環境的で伝統的な農業をしないで、近代的な大規模農業をしている反面で、宿泊等の経済ベースをすることは、人々の移動を盛んにすることにつながり、エネルギーの大量消費にもつながり、パーマカルチャー的ではないということか。
彼女の指摘する視点は、今回の田園調査でも大きな課題となってくる。英国の農村の環境保全的にも、コミュニティ的にも、経済的にも、いかに、エコロジカルな生活の場所として再生するかは大きな課題であり、今回の英国調査での大きなテーマとなってくる。
パーマカルチャーの動きの他に、「THE LAND IS OURS」という田園居住の自由性(自活自給的な暮らしをする目的での)を政府に求めているグループの活動もある。英国での土地利用秩序の硬直化と、大規模農場経営政策の環境的にも、農村社会コミュニティ・経済的にも大きな矛盾を含んでいることを意味している。
この人物には、まだ会っていないが、数多く購入したエコロジー系の最新本では、もっとも面白い本であった。シモンは、環境問題のライターで、革新的な新聞の「ガーデイアン」に執筆している。英国でのエコハビテーションに関する歴史と現状と将来展望が書かれている。また、パーマカルチャーに関しても重要な要素として述べられている。英国の田園での新しい住まい方を希望する人達に対して、行政の計画コントロールがきつく、なかなか新しい試みが出来ないことを嘆いている。仏ではもっと簡単であり、行政の理解があると判断している。英国の田園環境は、一つは大規模な近代農法による環境破壊、単純な農村環境、景観の形成を指摘し、併せて、そこに居住する人達も農村で経済的な自立をしているのではなく、都市への通勤者で成り立っていることを嘆く。もっと農村での自立した環境に負荷の少ない住まい方を計画し、実行していくことの必要性を述べる。いくつかの事例紹介がされている。
先に、述べた「THE LAND IS OURS」のグループのリーダー的存在であり、自信も英国の田園地域に小規模なエコ暮らしを実践している。このグループは、エコ的な暮らしづくりの基準をつくり、それをもって田園地域での新しい居住の試みを認めるべきであると主張している。別の機会に紹介したい。
ブラッドフォードのスプリングフィールド・コミュニティ・ガーデンは、パーマカルチャーでの最初の公共的な支援のあるプロジェクトで、デザインはパーマカルチャーアソシエーションの現在の代表者のアンディである。また、スコットランドで購入した最新本『the
living land』にも最新の都市での事例として紹介されていた。ブラッドフォードでのパーマカルチャーの活動が、地方政府、市民、パーマカルチャーリストの三角関係がうまく成立し始めている。その中心的な人物が、ブラッドフォード市のローカルアジェンダ21対策室の行政職員のジェミーである。彼は、前のパーマカルチャー・アソシエーションの代表であった。彼の努力で、パーマカルチャーのコースを市内の大学と協力して、行政の資金的援助も受けて開催している。英国でのパーマカルチャーと行政のつながりがもっとも強い市かもしれない。
スプリングフィールドの現場は、住宅地のはずれの農場を改造したものである。スタッフとボランティアがグリーンハウスの中で働いていた。計画図面とは異なる配置が多少あった。時期的にはまだ野菜の収穫時期ではないので、さほど農園事態が賑やかではない。下部の建物は、少し変わった6角形の建物が二棟連結した形で、スコットランドの既製品を取り寄せて組立たようだ。風車も廻っていた。この建物周辺は、ナーサリーと温室が設置され、関係者が仕事をしていた。身体障害者用のモデル農園の小型版の整備されていた。入り口横には、コンポストの生産コーナーもある。生産された野菜は地域で販売され、また、パーマカルチャーの講習会も開催されているし、BTCV(英国の代表的な環境保全ボランティア団体)の活動の場所としても利用されている。