ボランティア養成研修 報告書
里地里山の保全整備を実際に進め里地里山の保全・活用を社会に定着させるためには、地元農林家だけでなく大勢の市民の参加が必要です。 都市部(秦野でも中心の町場)で生まれ育った人々は、里地里山に関心があっても活動に参加するきっかけをつかめない場合や、 整備作業をすることに不安を覚えることも少なくありません。また、土地をもっている農林家も、人手があれば整備したいと思いながらも、 基礎的な知識や経験がない人を自分の土地に入れるのをためらうものです。そのため、ボランティア養成研修を通して山や里に入るルールや、 管理を行うための基本的な考え方や道具の使い方などを座学と実践を通して学びます。
研修は、次の4回シリーズで実施します。
1回目 2005年10月29日(土)里地・水辺の保全、基礎講座(雨天翌日)
2回目 2005年11月26日(土)里山(竹林)の整備活動(雨天翌日)
3回目 2005年12月3日(土)里山の保全 下刈り、枝打ち、間伐(雨天12月10日)
4回目 2006年 1月28日(土)里山の保全 落ち葉かきとたい肥づくり(雨天2月4日)
1回目 里地里山・水辺の保全
日 時 平成17年10月29日(土) 9:00~15:00
場 所 秦野市上地区
参加者 市民18名、秦野市約10名(森林づくり課ほか)、里地ネットワーク2名
内 容
9:00 集合 上公民館
9:00~10:00 講義 市民による里山林整備指針(自然環境保全センター中川重年氏)
里山の保全の意味、山にはいるときの注意などの座学
10:20~11:00 里山保全現地視察
四十八瀬自然村の活動、炭出し体験(四十八瀬川自然村)
林整備方法についての説明 (中川重年氏)
11:00~12:00 枝打ち・間伐体験
12:00~13:00 昼食(現地)、移動
13:00~14:00 水辺保全現地視察 柳川生き物の里の見学(現地)
14:00~14:15 はだのの里地里山(森林づくり課長)(上公民館)
14:15~14:40 まとめ、今後の予定、終了
ボランティア養成研修1回目ということで、中川氏による講義、里山と水辺保全それぞれの現地視察と活動紹介、ノコ・ ナタによる伐採と枝打ち体験を行いました。
■講義『市民による里山林整備指針』(中川重年氏)
ポイントを抜粋します。
・秦野ではなだらかな斜面を切りひらいて畑をつくってきた。これは人が自然に向かっていった力だが、現在は自然が元に戻している状態。
鹿やヒルが降りてきている。自然にもどることは悪いことではないが、人間と自然が拮抗している状態には特有の環境と生態系がつくられている。
その一部が里山として管理活用され受け継がれてきた。その特有の環境を失うことで、生息できなくなる動植物もある。
そのような環境を維持するために、棚田の保全や雑木林の保全の取り組みが盛んになっている。
・里山の中で、特に竹の繁茂が目立つ。伐採した竹の利用が現在の課題である。炭焼きでは焼くのに時間がかかり広大な面積が管理できず、
積んでおくと膨大なゴミになる。
・里山の管理方法にはいくつかの方法がある。
1.照葉樹林にする:管理する中で照葉樹が生えてくると放置してもよい森になる
2.広葉樹の若い萌芽更新林にする:里山の特徴は、若くて細い木があること。そのような本来の里山に戻す。
萌芽更新するには根元にでたものを残すと萌芽が自根をおろしやすいのでよい。
3.広葉樹の高木林にする:太くて高い木を残すと公園のようになる。
2が伝統的な里山の管理方法だが、
・里山の利用方法もさまざまある。森林浴、森林療法、森の中で音楽を聞くなどの楽しみ方が最近注目されている。 またエネルギー利用にも、伝統的な薪や炭のほかにペレットやチップなどの形で現代の生活様式にあった利用をする方法がある。 森林バイオマス利用を促進していくことは、里山保全・森林保全を進める上で重要な課題である。
■里山保全現地視察、枝打ち・間伐体験
市内の活動団体NPO法人四十八瀬川自然村の活動現場を見学しました。
同団体ではこの雑木林のフィールドで伐採したコナラ等の広葉樹で炭を焼いています。窯と炭出しの現場も見学しました。
四十八瀬川自然村のメンバーからは、整備方針として、光が指す見晴らしのよい里山づくりを目指しているとのことで、枝打ち、伐採、
草刈りなどの作業の意味について具体的に説明がありました。
また 中 川氏から、萌芽更新による林の管理方法について説明がありました。実際に伐採・
萌芽した株を前にした説明で、座学の内容ともつながり大変わかり やすいものでした。
「萌芽したものは実生よりもずっと早く大きくなり、自根を降ろすことで木が若返る。萌芽はこみあって生えてくるので、
なるべく外側で地面に近いところから生えているものを残すとよい」というような説明がありました。
その後、参加者がノコギリを使って、過剰な萌芽枝を伐採する「もやかき」も行いました。また隣接する杉林では、
ナタを使っての枝打ち体験も行いました。
■水辺保全現地視察
その後柳川生き物の里に移動し、本日の作業の様子を見学しながら、生き物の里の特徴や保全整備方針、そして本日の作業について話を伺ました
(柳川生き物の里の保全再生活動の報告を参照)。
参加された方々は、とても熱心で、萌芽枝の伐採や、はしごで木に登っての枝打ちも初めてとあり、
真剣ながらも楽しく参加されていたようです。 4回シリーズで基本的なことを見学し体験します。
このような研修により保全活動に参加する人々が増え、「里地里山」が水と同じように、市民が誇れる市のシンボルとなるよう、
秦野スタンダードとして定着していくことを願います。