生き物の里の保全指針づくり(上地区柳川)

フイールドリーダー研修
柳川生き物の里 保全再生活動 管理方針の検討

日 時 :平成17年9月2日(金)13:00~16:30、 3日(土)8:30~11:30
場 所 :上地区 柳川生き物の里
講 師 :守山弘先生(農業工学研究所 研究員)
参加者 :2日 約25名、 3日約40名
       柳川生き物の里管理運営協議会(地権者、上小学校、東海大学)、
       まちづくり委員会、渋沢小学校、神奈川県農地課職員、
       秦野市環境保全課、森林づくり課、事務局
内 容: 9/2  13:00 集合 上地区の概要、柳川生き物の里の概要説明
          15:00 現地調査(湧水を基点として生き物の里及び周辺の踏査)
              守山先生より指導
      9/3     8:00 現地踏査、守山先生より指導、 管理方針の下書き
          10:00 上公民館にて管理方針、今後の管理作業等について検討
          11:30 解散

 


○上地区柳川 生き物の里
秦野市上地区は、丹沢の裾野にある湧水に恵まれた小盆地です。市の南半分を占める秦野盆地とは水系を異にしており、標高230m~500m (秦野盆地は低地部標高約100m)に位置する独立した盆地で、丹沢の伏流水があちらこちらから湧水しています。 すり鉢状の地形のほぼ中央に湿地・水田があり、その周囲に畑と里山、集落があるという、とても美しい田園風景をもっています。柳川 「生き物の里」は、中央部の湿地・水田地帯のうち約1haを、市が条例により水辺の生物の生息地として指定した保護区です。地権者、学識者、 小学校、自治会員で構成された管理運営協議会が管理を行っています。現在、年に2回の草刈りを行っていますが、 よりよい保全指針を得たいとの地元からの声もあり、今回、フィールドリーダー研修という形で、モデル事業懇談会の委員でもある守山弘先生に、 現場で指導をしていただくことになりました。
研修では、まず公民館で上地区の概要と生き物の里の概要の説明を受けた後、現地を踏査し、翌日、 管理方針についての意見交換と検討を行いました。

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ここはかつては田んぼでしたが、大分ヨシが繁茂しているようです。このあとは、 うっすらとかつて畦畔であったであろうとことを選びながら奥まで歩いていきました。

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指定区域に隣接した休耕田です。柳川は湧水が多いだけでなく地下水位も高く、田んぼでも自噴しているところが多いそうです。 この田んぼは、耕作していた当時は腰までもぐるほどだったとか。休耕している現在でも、夏でも冬でも、年中このように水が溜まっています。 もちろん、長靴でなければ開水面に近づけません。

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○現地踏査
現地にて、地権者を含む地元の農家の方が昔の様子を説明し、守山先生から様々な指摘とアドバイスを頂きました。
この時間は大変有意義でした。何より、地権者の方々、地元農家の方々が10名ほど集まられ、 かつて今よりももっと豊かに水が湧いていた様子や、水田耕作に伴う水の経路、温水用などの水田の管理方法を話してくださいました。 そして守山先生は、現在もある様々な植物やその場の様子をもとに、 水田であったころの水辺の再生が里地里山らしい生物の生息環境をとりもどすことを具体的に指摘・アドバイスしてくださいました。

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○地元から
一番奥の水源は、しみ出すように水が湧き流れ、周りには観察用に丸太が並べられています。今でも水が湧いていますが、地権者の方々によると、 かつてはとは大分様相が異なることが分かりました。昔(数十年前)は、大人の身長ほど(6~9尺)も下に掘り下げられたマスに水があふれ、 地元の人々の水飲み場、野菜の洗い場等として利用され、小学校の子供たちも水汲みに来ていたそうです。そこから左右に巾2尺の水路がのび、 ホトケドジョウ、サワガニ、アカガエルなどが現在よりもたくさんいたとのことでした。アカガエルは学校帰りにバケツ一杯集め、 皮をむいて食べたものだ、などの思い出話も。台風で斜面が崩れた際に、土砂が入ってしまい今のような状況になったとのことでした。 また水源から水が直接入る田んぼは、水温が低いため稲をつくらず、水をため温めるだけにしており、 そこにはドジョウやタニシが沢山いたそうです。水源を囲む斜面の林は、現在はマダケや潅木が繁茂して人は通れない状況ですが、 かつてはこの中に通り道があったのことであったとのことでした。
この後の検討会の席では、水田の構図を地権者の方がお持ちになり、 かつての畦畔や水路も明らかになり集まった人々が共有することができました。

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○守山先生から
具体的な指摘を踏まえて様々なアドバイスを下さいました。
セキショウという植物が残っているのは、この植物が寝針がよく土手を抑えるのに有効なため、水路や畦畔に使われた名残だということ、 モクレイシやネズミモチといった海岸性の植物と山岳性の植物が混在しており、 プレート衝突による褶曲という太古の丹沢のなりたちに由来していること、コクサギはカラスアゲハの食草で葉の絞汁が虱取りになる、 アオキの葉は味噌仕込みのカビ予防として使われてきた・・・など、 里山の知恵=自然資源を利用する知恵や自然環境の特徴についてのお話は大変興味深いものでした。そしてここの保全方法として、 まず湧水の泥をほって水量を確保し、水田だったころの水路や畦畔、温水溜め池を復元することで、 里地の水辺の生き物も増えるであろうとのことでした。そしてその具体的な手法や技術、復元後のイメージなどは、 地域の農家の方々に聞くのがもっともよく、そのことが地元の人々のモチベーションをも引き出すことを示唆してくださいました。

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○管理方針の検討
その後公民館にもどり、現場での話をもとに再度検討を行い、下記を主な方針として今後進めていくことが確認されました。
・かつての景観の復元し、それによってかつての自然環境と生物相の復元を目指す。
・水源を基点としてかつての水系(水源、水路、温水溜め池、田んぼ)を復元する。周囲の林の整備を行う。
・外部からもボランティアを入れ、継続できるよう、目に見える成果が得られる形で進めていく。
・水辺の再生保全によって田んぼ・湿地の生態系の基盤を整えことをめざし、整備後、東海大と協力し生物調査を行う。
これを実行に移すための第一回作業日も、10月29日(日)と決定しました。

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-----以下は研修の結果のまとめ-------------------------------------------------------------------------------

柳川生き物の里 保全再生計画(案)

■基本方針■
かつての景観の復元をめざすことで自然の復元し、またそれを通じて文化の復元と伝承を図る。
1.湧水水源を基点にかつての水の経路を復元する。
2.復元順位は、湧水地、水路、温水溜め池、水田の順に進める。
3.水辺の整備と併行し、湧水地を基点に周辺の竹林・林の整備を行う。
4.復元作業により生態系の基盤を整える(整備後も生物調査を実施)。
5.外部のボランティアも入れ、継続できる方法で進める。
6.復元およびその後の維持管理作業を通じて、子どもたちに地域の自然と文化を伝承する。

■作業予定■
<第1回作業日程>
 日 時 10月29日(土)雨天翌日 9:00~15:00
 募 集 30人
 集 合 9時上公民館前(自家用車orバス8:15渋沢駅発みくるべ行約7分)
 持ち物 長靴、軍手、スコップ、弁当、水筒
 内 容
(1)草刈り
(2)水路づくり
  ①バックホーでセキショウを株ごととる。スコップでとる場合は研いでおく。
  ②バックホーで水路を掘る。水源脇の二本は巾2尺。
  ③セキショウを植え付ける・・・人数必要
(3)水源の復元
①バックホーで泥あげ、搬出(地権者の畑へ、または水路の補強)
(4)温水溜め池づくり
  ①耕運機で耕起
  ②畦畔塗り
(5)竹林整備
  ①枯竹の搬出
  ②古竹の伐採、搬出
  ③焼却

 

2005年09月15日 [レポート]

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