福井県の事業で、平成14年度より、アベサンショウウオと里地里山の自然環境の保全のあり方を検討してきました。
はじめて越前市(旧武生市)に降りた時の冬の印象は、日に数度雨が降るといわれ、「かならず傘やカッパをもってきてくださいね」、 と聞いたのが印象的でした。平成14年度は、訪れるたびに雨と雪が混じる荒天でした。写真もなかなかとれず、水辺の環境を把握すること、 水辺に近づくこと自体が大変な時期でした。あっという間に凍える手と雨の中での写真取りは、 カメラが何台あっても壊れるのではないかと思うほどでした。
この気候特性と水持ちの良いきめ細かな土質が、国内希少種1Aのアベサンショウウオの生息環境を支えていました。冬の間の降雪が、 ほどよい湿気を保ち、降雪や風雨が、他の生き物を寄せつけない水辺環境を作り出していました。
U字溝を必要としない程の水を通さないきめ細かな粘土のような土質は、 林から水辺への緩やかな環境変化を作り出していました。山際の水路、2段目の水路、 水田のキャッチ水路というような3段構成の水路も至る所で見かけました。崩壊しないこの3段水路は、 まさにこの地の土質をよく表現しています。
福井県越前市以外では、京都府の丹後半島等に、アベサンショウウオは生息していますが、その個体数はわずかで、今では、 越前市西部地域以外の生息地では、ほぼ絶滅に近い状態です。
写真 は、幼生のアベサンショウウオと卵塊(上)と、真冬、林から水辺へ産卵のために降りてきたアベサンショウウオの親(下)
アベサンショウウオの生息環境は、情緒的に表現すれば、厳しい自然環境と共生した豊かな心をもった人々の暮らしがある場所です。 里山の手入れを行い、水路は土側溝のまま、年に数度維持管理を行っている場所です。山への殺虫剤をまいたり、 農薬が直接かかるような場所では生息できません。日本人がかつて行っていたような自然との関わりを保ててる場所というのは、 希少種側から見ると、本当に全国でもめづらしくなったことがわかります。福井県のアベサンショウウオに関する情報は、こちらです。
http://www.erc.pref.fukui.jp/gbank/tokusei/d0007e.html
写真は、家の周囲の水路の維持を怠らず、里山の整備を行っている暮らしの例です。このような環境を維持するために、 その方策を検討したものが福井県の里地里山保全活用ビジョンです。
福井県越前市西部地域、特に白山地区とよばれる場所は、標高100mの盆地で、周囲を250mほどの里山で囲われています。 日本海側と市街地側との境は、ともに、500m弱の山で閉ざされています。この盆地を、保護するかのようにそびえています。
この地形条件を、水の流れから見ると、周囲を囲む大半の山の標高は150~200m。低地との落差50~100mですので、 林に降った雨は、地表面をゆっくり流れ、地下浸透し、120~110mの山際に湧水のような形で、水は流れ始めます。 その湧水を受けるかのように、人々は、山際の水路、中間水路、水田のキャッチ水路や生活のための洗い場や溜めをつくり、水の流れを、 非常にゆるやかなものにしていました。
日本の里地里山らしさの特徴を、数値的に表現すれば、50~150m程の雑木林に囲まれた谷地田のある環境というのが、 一つのモデル的な環境イメージです。雑木林、湧水、土水路、手掘りの溜池、水田をもつなだらかな環境です。 これが日本の里地里山に生息する水辺の生き物を支えてきた典型的な条件です。この条件が、白山地区には、今も受け継がれ守られていました。
この間、里地ネットワークでは、生物多様性国家戦略の趣旨を受けて、環境省のアドバイスをいただきながら、 ビジョン策定のための調査と併行して、生物多様性の保全をめざした地域づくりを行ってきました。
調査であり、地域づくりである、第一歩は、いつもの地元学です。地元学に始まり、発見したもの、 住民が意識したものを軸に、地域づくりを組み立て、人、もの、地域、そして、ここでは、希少種の保全につなげ、その後、 住民自身による地元学の継続を進めて、立ち去るが里地ネットワーク流になってきました。今、越前市西部地区では、 このステップの中間地点です。
調査の基本は、住民自身が歩くこと調べることです。このステップがないと、また、住民自身の発見がないと、感動もなく、 行動も起こりません。調査の目的は、住民自身の発見とそこから始まる行動です。
こどもたちも生き物調べで参加してもらいました。すると発見したのは、移入種のアメリカザリガニです。即刻、 ザリガニゲットチームを編成し、拡大を防ぐための取り組みを始めました。(ZaTT:Zarigani ATtack Team)。 白山小学校中高学年100人の協力で、バケツ3杯分のザリガニを捕獲しましたが、その後も勢力を拡大しているため、 徹底的な対策が必要になってきています。この移入種対策を怠ると、アベサンショウウオやゲンゴロウ、 ハッチョウトンボ等の貴重な生き物たちの生息環境が数年後にも脅かされそうな気配です。
住民との主な取り組みは食文化や産品、暮らしです。どのような作物を栽培しているのか、山の幸はどのようなものを料理や薬、 祭りに活用しているか、それらの取り組みと、希少種の保全のつながりや、地域の活性化と結びつく要素はないのかの検討を、 事務局では勝手に密かに行ないます。
このような経過をとって県のビジョンが完成しました。ビジョンの住民向けのイメージは、イラストで仕上げました。 (A4カラー16ページ)
コンセプトは、「希少な野生動植物に出会える里」「そっと見つめる、みんなで守る、力を合わせて復元する、こどもたちと生き物の未来」 です。越前市西部地域に残された水滴の中の楽園のような、この生き物の里が守られるようにというのが里地ネットワークの願いです。
今、住民や地域活動団体と市、県、国等の協働事業の枠組みの検討や、保全に向けた取り組みが始まっています。その一つが、地区毎に、 希少野生生物の監視員を育成し、生物多様性保全のリーダーとなり、地域やこどもたちを引っ張ってい事業(県)です。
一般の方向けには、8月に、この地域を体験してもらうためのキャンプも計画されています。ご関心のある方は、 里地ネットワーク事務局までご連絡ください。白山地域振興会が主催していますので、中継ぎを行います。
この紹介用のパンフレットが完成しました。里地ネットワークの会員のもとへは、8月初旬お届けしますので少々お待ちください。
以下がページのイメージです。
ここからダウンロードすることができます。
アドビ・アクロバット形式 takehu_all3.pdf - 8.8 MB (右クリックでダウンロード。 重たいので注意してください)

























