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佐藤年緒(環境・科学ジャーナリスト)
「森、里、川、海をつなぐ自然再生 全国13事例が語るもの」
自然再生の実践に学ぶ推薦の書
1.なぜ13事例が先駆的と言えるのか
この本は、全国各地で自然の再生を目指して地域づくりに取り組んでいる先駆的な13事例を紹介したものである。北海道から九州まで、森林、
山村、湖、川、海といった場で、住民やNPO(非営利組織)、専門家、地方自治体、国などが連携し、取り組んでいる実例である。
いったん失われてしまった、または失われつつある自然環境を回復させて、自然と人と共生する地域社会を取り戻そうと、
長年地道な活動して少しずつ成果を上げている事例である。
これらの取り組みを知ることによって、一口に「自然再生」と言っても、森林や農山村、都市、河川、
海といったフィールドによる特性に違いがあり、また地域の歴史、
活動を進めている人々の個性によって多種多様な活動の形態があることが理解できるであろう。
そして自然再生に向けた身近な取り組みを進める上で、何が大切なのかを知る指針となるだろう。
自然再生推進法が整備される以前から法律でも重要視している内容を先取りし、自主的に、行政や地域住民、
団体などと連携をとって取り組んできた経緯がある。そこに自然再生を目指す根本精神が流れ、
法律では示していない活動に不可欠とも言える方法や知恵、技術、例えば活動を進める上での動機や手掛かり、人とのネットワークのつくり方、
組織運営の仕方などに工夫がある活動である。さらに地域間の交流を意識した活動を繰り広げている点でも「先駆的な事例」なのである。
2.循環型社会をつなぐ4団体
その意味でこの本は、各フィールドで展開している個々の自然再生活動を紹介しただけでなく、その舞台である森、里、川、
海をつなぐ視点でまとめたことが最大の特徴となっている。地球環境は、さまざまな生物が相互にかかわり合うことで支え合い、水や大気、
物質などの循環によって成り立っている。人と自然と共生する地域社会をつくるにも、循環を視野に入れた広域的な視点が欠かせない。
源流の森から海に至るまでの流域圏内で、また農山村や都市との間で、自然再生の活動を担う人々がどう交流し、
認識を広めていくことが重要である。
各フィールドの“つなぎ役”として登場するのは、森林、里地、川、海で、それぞれの地域活動を応援する全国的なネットワーク組織である
「森づくりフォーラム」、「里地ネットワーク」、「全国水環境交流会」、「海辺つくり研究会」の4団体である。
森林、農山村、河川、そして海や港湾…と、これまでフィールドの場を超えて交流する機会は少なかった市民団体が、今回、
4団体のリーダーたちが初めて連携し、互いに異なるフィールドから見た目で、自然再生に取り組むには何が必要なのか、その共通点や違い、
課題を見つけた。互いの取り組みを知り、ときには山、川、海の幸を堪能しながら意見交換を重ね、その成果をまとめた。
4団体の連携は、環境省自然環境局自然環境計画課の応援を得ながら進められ、本を編集した主体「自然再生を推進する市民団体連絡会」も、
この4団体の連携に名づけたものである。
取り上げた13の事例は、それぞれの団体が日ごろ直接関与したり、応援したりしている地域の活動であり、「紹介するに値する」
と評価しているものである。取材執筆した担当者は、4団体に関連する地域活動を進める若手リーダーが中心だが、
日ごろの活動とは異なる分野をなるべく選んで取材することで、新鮮な目で異なる地域の自然再生活動や人々の姿をレポートしてもらった。
3.自然再生活動のリーダーは
この書で描き出したことの一つは、活動のリーダーたちの生きざまである。
リーダーがなぜ活動に取り組むようになったのか。何がそうさせたか。その活動がどう始まり、どう人から人へと伝わっていったか。
どういう自然を取り戻そうと願っているのか。次の世代にどう伝えようとしているか。今後、
自然再生の活動を進めていようと願っている人たちにとって、よきリーダー像を知る機会になろう。
この本は、これから地域での自然環境を保全しながら、地域づくりを進めようとしている人たちにぜひ読んでいただきたい。
また市民との力を協働で進めようとしている行政関係者、もちろん大学の研究者、
さらには地域の中でその役割を果たそうとしている企業の関係者にとっても、
これからの協働の時代の到来を受け止めることができるのではないだろうか。
4.各章の読み方の参考に
本書の構成を読み手の関心に沿って読めるようにするために紹介すると、
第一章では、森、里、川、海の全国ネットワーク組織を率いる4団体のリーダーに、その団体の活動を紹介していただくとともに、
その仕事にかかわるようになった自分自身の個人史も触れてもらった。
第二章では、森、里、川、海での自然再生の活動事例の13ヵ所を紹介した。森、里、川、海の順に列記したが、内陸の湖(諏訪湖)
や海に近い汽水湖(宍道湖)、河口部も、海や河川として紹介している。
第三章では、その13事例の経験を通して、何が自然再生にとって大事な視点かを各ネットワークのリーダーに座談会で話し合ってもらった。
座談会には4リーダーのほか、行政と市民活動をつなぐ役割を果たしている地球環境パートナーシッププラザの川村研治さんにも参加してもらい、
コメント(第5章で紹介)をいただいた。
第四章は、先に紹介したように自然再生法の成立経緯を見守った佐藤寿延氏(前環境省自然環境局自然環境計画課長補佐)
に法律の特徴と今後への期待を寄稿してもらった。
最終章では、これまでの13事例のレポートと座談会での議論を踏まえて、
これからの再生事業をどう発展させていく上での重要な要素やこれからのあり方をまとめた。
2005年06月23日 | メンバー
