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森、里、川、海をつなぐ自然再生

森、里、川、海をつなぐ自然再生
全国13事例が語るもの

自然再生を推進する市民団体連絡会編
(中央法規 税別2,310円)

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地元学による里地づくりの評価

機関誌『環境情報科学』
『環境情報科学』 34巻1号 特集:持続可能な地域づくりの潮流と戦略-第三の道の可能性を評価する
(平成17年5月12日掲載)

持続可能な地域づくりの実践と評価
「里地ネットワークと地元学」
Local study workshop by Network for Sustainable Rural Communities (NRSC.)
.竹田純一 Junichi Takeda


はじめに
 里地とは、その特徴を一言でいうなら「都市から自然へ至る中間領域」、都市計画域でも自然保護地域でもないこの地域は、 制度的に明確な規定を備えていないことを背景に、乱開発や過疎化が容易に進み得た地域である。
 内藤正明(1996)は、里地には、食糧生産を担う「経済的機能」生物多様性の保持や二酸化炭素の吸収源としての森林環境を保全する 「環境保全機能」、人の心をいやす景観などが存在することによる「審美的機能」の3つの重要な機能を位置づけた。
 このような機能へのニーズの高まりと過疎化あるいは過度の開発に対する危機感から、身近な自然を生かした里地振興が求められ、 1998年里地ネットワークは誕生した。英文名称は、Network for sustainable rural communities 持続可能な第三のシナリオづくりを小さなモデルを示しながら提案する組織である。

   図1里地里山の位置

1.里地と里地里山
環境基本計画(2000)では、「里地自然地域」は、循環、共生、参加が可能な場であり、持続可能社会のモデルは、この里地自然地域(通称: 里地)で実現可能であると記している。私は、この3つの理念を、地域内循環、人と人、人と自然の共生、住民参加と位置づけ(テキスト「里地」 1998)、持続可能なコミュニティーの一つの尺度としてとらえてきた。
 一方、新・生物多様性国家戦略(2002)では、生物多様性は、人間を含む生物の拠り所と位置づけ「里地里山自然地域」 における生物多様性の保全を警鐘している。ここでの持続可能性の尺度は、身近な生物との共生である。

図2里地里山植生区分と環境省モデル事業地域

2.里地・里山の危機
 里地では、昭和30年代以降、郷里を離れ都会へ向かう一貫した離農傾向は変わらず、特に、中山間地域、過疎地域と称された地域では、 人口流出と高齢化、若年層の食料生産以外の産業への転換が著しく、今もこの傾向は変わらない。過疎高齢化の極端なケースでは、過疎、 独居老人集落という状況さえ出現している。この若年層離れの傾向は、里地における食料生産機能を低下させ、 里山の放置と田畑の耕作放棄を加速させている。この結果は、人の心をいやす審美的機能さえも喪失させている。この放棄は、 人の行かない里山を生みだし、不法投棄の場所として狙われ、大気、水質、土壌汚染を伴う環境負荷の危機にさらされている。

3.生物多様性の現状
 生物の観点からは、かつての土地改良に伴う水田水路の乾田化や環境の単一化、農薬化学肥料などの影響により、生物多様性は喪失しかけた。 しかしここ数年、魚毒性の低い農薬が開発され、身近な生物への直接的な影響は軽減されてきた。この結果、メダカやホタル等、 化学物質等の影響を直接受けていた里地里山の生物は、徐々に回復する兆しが見え始めた。新・生物多様性国家戦略(2000)では、 絶滅の危機に瀕している生物の約半分が、里地里山に生息していると指摘している。開発による危機、放置による危機、移入種、 化学物質による危機を警鐘し、生物多様性の保全に向けた各主体毎の転換を求めている。この基本戦略にもとづき、環境省では、 里地里山の保全に関わる調査事業を開始した。2004年からは、里地里山の保全再生に向けたモデル事業を開始した。

4.里地ネットワークの取り組み
里地ネットワークでは、里地のもつ3つの機能と、生物多様性の保全の観点から、 図に示すテーマを設定しローカルで小さなモデルづくりを通じた社会提案を行ってきた。

里地の歴史

1997年~2000年
全国の先進事例調査とシンポジウムを開催し、内発型、持続型地域づくりを実践している自治体に関する情報収集を行った。 水俣市における地元学の取り組み、熊本県小国町の交流と学習、北海道標茶町、鳥取県智頭町の地域計画作成技法を、 内発型の自治システムの指針として、里地ネットワークの行動理念に据えた。この概要は「テキスト里地」及び、「グリーンジャーナル」 (日刊工業新聞)に連載し後に「循環共生の旅」としてまとめた。この調査と併行して、環境保全型のローテク技術調査、 地域新エネルギービジョンの作成支援、廃棄物リサイクルに関する先進事例の収集を行い、自治(地元学+計画策定技法)、技術、 廃棄物に関する先進事例の把握を行った。
2000年~2002年
全国20箇所の里地里山保全活動をイオン環境財団と共に実践した。地域ごとに異なる風土と植生、ふれあいニーズに対して、 住民自治と合致する保全活動をめざした。手法の詳細と活動記録は、「里地里山保全ノウハウ集」「里地里山をデザインする」にまとめ、 その概要をHPで公開している。この保全活動と連動して、佐渡における「トキの野生復帰をめざした地域社会づくり」 と農林水産省と環境省の連携調査の事務局を担当した。トキは3年間の実践を通じて誕生した地域組織を核に将来の地域社会像を描き、 連携調査は、生物多様性と農村の新たな指針を「人と自然が織りなす里地環境づくり」を示した。
2003年~2006年
新・生物多様性国家戦略を受けた環境省の里地里山保全方策の検討を自然環境研究センターと共に行った。本年は、神奈川県秦野地域、 福井県武生地域、熊本県宮原町周辺をモデル地域として保全再生の素案づくりを行っている。 
佐渡では、ビジョンの実現に向けた交流シナリオの一つであるトキ交流会館で都市住民との交流と保全、経済的な要因の検討を行っている。
これらの取り組みを通じて、里地里山における持続可能社会の実現と希少生物の保全は、 集落の持続的な存続という点で不可分であることを確認した。
このような活動展開と社会基盤の変化の中で、日本財団では郷土学(地元学)への助成制度を開始し、 イオン環境財団では同財団の15周年を記念して1億5000万円の里山整備助成制度を設けた。
里地里山運動、持続可能社会をめざす各活動団体等への両財団の支援に心より敬意を表したい。

5.地元学とは、生き方、暮らし方、地域づくりの『哲学』である
里地ネットワークが行っている地元学を「えこのもりセミナー・コンセプト・プログラム開発会議」(2002)
http://www.jeef.or.jp/economori/cpkk/index.html
にて紹介させていただいた際、同会議では地元学を、コミュニケーションの活性化の技法と位置づけた。同時に、 循環型社会への導きを果たす働きがあり、その誘導者は、アニメーター(地域を元気づける人)の機能を果たしていると結論づけた。
地元学は、地元に住んでいる人自身が、自らの地域を見つめ直す活動である。地域の状況を正確に把握する地域の在庫リストの作成作業(犬井正、 獨協大学経済地理研究室)と解説するとわかりやすい。この過去から引き継がれてきた現在の集落の姿を、 残らず把握することができるのが地元学の特徴のひとつである。しかし、集落の全ては把握できるものではなく、把握している人もいない。 だからこそ、住民全員で、集落の今を見つめ直そうとする姿勢や考え方、哲学が重要である。地元学を行うことで、住民自身が知らないこと、 はじめて出会うことが非常に多いことに気づく。「知ろうとしなかった地元のこと」「調べた人しか詳しくならない」 「地域を見つめるまなざしの開発」「形ある物の意味を考える」「本当のことは、道化師にならないといえない」「耳を傾ける」「問いを発する」 「自分の言葉で語る」。地元学の提唱者、吉本哲朗の名言である。
このマナザシの開発は、そこに住んでいる地元の人ではできない。また道化師役も、地元の人が行えるケースは稀である。地元学には、 良い意味で外部者(ヨソモノ=若者、バカモノ)の存在が不可欠である。ヨソモノの目を借りて、地元に住む人が、 自らの地域の今を見つめる作業が、地元学である。集落の方向性や事業の目的をもたないのは、このためである。もし、 目的が決まっているのであれば、地元住民の参加は、限られた人のみになる。地元学とは、ある方向に結論づける道具ではない。 水俣の人々の心をかつてのように、水俣の豊かな自然や文化に戻したように、地元学とは、 集落のコミュニケーションを活性化させることができる哲学である。  

6.里地ネットワークと地元学
私が地元学を実施する場合、以下のどのフェーズで実施するか、または、実施可能かを地域ごとに予め想定している。
(1) 技法としての地元学(地図と写真付資源カードをアウトプットするワークショップ、乃至は研修)
(2) コミュニケーションを活性化させるための手法としての本来の地元学
(3) 地元学後に、アニメーター役を果たし、地域を元気づけることを視野に入れた地元学
(4) 地元学、アニメーター機能、プロデューサー機能を発揮し、集落ビジョン等を作成し活性化を図る
地元学は、地元の人が、地元のことを、地元のために見つめ直す作業(吉本哲朗「私の地元学」)である。地元の人が不在の地元学は、 狭義の地元学ではない。私は、さまざまな地域で地域住民とともに地元学を実施してきたが、それ以上に、研修や講習会で、 ヨソモノ中心の地元学(広義)を実施してきた。
その点から、これまでの地元学を振り返れば、佐渡の野浦、久地河内、城腰や、山形県戸沢村、神奈川県城山町、愛知県美浜町、 福井県武生市の地元学は、地元住民主体の地元学であり、また、持続可能社会の構築のための貴重な事例である。今後、アニメーター、 プロデューサーとしての機能を果たす者が継続的に関わることにより、持続可能社会へのステップをかけあがれるのではないかと考えている。
一方、ワークショップ的に実施した地元学でも、地元に時代にあったリーダーがいる場所では、 持続可能社会に向けた同様の成果を上げる可能性がある。

 7.地元学の評価と課題
 狭義の地元学は、集落住民の中に残されたわだかまりや偏見、情報の偏りをなくし、地域の過去から現在までの概要を住民自身が再確認し、 今ある生活文化と、専門家や役場の情報をもとに、住民自身が地域の将来像を描き、方向性を判断することができる。 行政主導の地域計画との違いは、事前の合意形成が成立している点に、哲学としての地元学と他の技法との相違がある。
 広義の地元学では、住民の参加が少ない場合でも、実施事務局側の姿勢やマナザシの置き方により、 狭義の地元学に近い提案を外部から地元に提案することができる。この場合、事後の地元学を行うことにより、フォローすることも可能である。
 地元学の実施から7年を経て、初期に実施した地域とのつきあいは、既に7年に及ぶ。これまで十分な時間を人材育成に励めなかったが、 その背後には、単なるワークショップでは、地域は活性化しにくいことにある。同様に、地元の人が集まった際に、 ファシリティーターが地元学を行っても、手法にとどまり、活性化を期待した住民の意識に応えられない可能性がある。 哲学としての意識がないとたどり着けないことがわかる。
一方、戦略立案能力の高いコーディネーターが、地元のためではなく、 政策のためにこの手法を活用することに対するいささかの不安がまだ私の中にある。
 最後に、持続可能社会づくりに、本誌に掲げられた他のすばらしい技法と合わせて、地元学が寄与することを祈念してやまない。

 

 

2010年01月01日 [里の再生]

佐渡島へ トキの野生復帰から学ぶCSRツアーを開催

生物多様性と低炭素社会の取り組みを考えるモデルツアー

2009 年10月17 日(土)~18 日(日)
企業CSR担当者の参加をお待ちしています。
詳細は、申し込みチラシをご覧下さい。

《企画趣旨》2008年9月、一度は絶滅の危機に瀕したトキが四半世紀振りに佐渡の大空を舞いました。 CSR活動の取り組みとして里地里山の復元等に力を入れる企業も増える中、環境省、新潟県、地元住民・・ 様々な主体の共同の下進められている「トキの野生復帰プロジェクト」を通して、生物多様性と低炭素社会の構築に向け何が求められているのか、 佐渡の大自然の中一緒に考えてみませんか?

《旅行企画・実施》株式会社JTB 関東
《企画協力》山村再生支援センター、GREENSTYLE 事務局、新潟県、トキの野生復帰連絡協議会


募集チラシfinal.pdf - 392.4 KB

2009年08月25日 [イベント案内]

北海道 農村コーディネーター 研修生募集(1年間)

「NPO法人ねおす」から、北海道の農山漁村に暮らしながら、都市と地域の架け橋となる人材を目指す研修生募集のお知らせです。

詳しくは NPO法人ねおす http://www.neos.gr.jp/

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農村コーディネーター 研修生募集(1年間)

 この研修では、北海道内の農山漁村における様々な仕事や交流事業の体験、地域の暮らし、歴史、産業、自然などの地域情報、資源を収集し、 整理発信するなどの研修をNPO法人ねおすがサポートしながら行います。そして、将来、地域やねおすと一緒に、 研修生が地域での役割や仕事を創りだし、都市と地域の交流を生み出すコーディネイターになることを目指します。

北海道の田舎の暮らしや地域活性化に興味のある方をお待ちしています!

◆研修内容OJT(実地研修)
・地域お仕事体験(農林水産業)
・地域情報の収集と発信・交流事業
 (子ども農山漁村キャンプ、ワーキンキングホリデーなど)の企画・運営アシスタント
・1か月程度の講座(スクーリングあり)
(研修内容は相談しながら組み立てていきます)

◆期間:2009年6月上旬~2010年3月31日(その後、スタッフ雇用の可能性あり)
◆主な研修地:北海道5箇所(地域は相談しながら決定します)
       予定地  黒松内、寿都、大樹、上士幌、新篠津村

◆募集人数:5名
◆研修補助: 研修補助費(最大月額14万円)
◆応募方法:履歴書を下記住所へお送りください。
 書類選考のうえ、面接を行います。
 
◆必要条件:普通自動車免許、パソコン操作の可能な方

◆お問合せ/お申し込み
NPO法人ねおす 担当:荒井
〒064-0952 札幌市中央区宮の森2条14丁目1-14  
tel 011-615-3923   fax: 011-615-3914  
e-mail npo@neos.gr.jp
※不明な点は、emailなどでお気軽にお問合せください。

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2009年05月08日 [森里川海]