鳥獣・ヤマビル対策としての里山整備(北地区羽根、菩提)-ヤマビル生息調査-

日 時 平成19年9月5日(水)9:00~12:00
参加者 羽根、横野、戸川三屋、菩提の各地区、清水久保里山づくりの会、秦野市
指導・協力 (株)ヤマビル研究会

目的
秦野の里山はかつてタバコ生産のための苗場や堆肥に使うため落ち葉かきを行っていたが、タバコ生産の終了、 担い手の高齢化や人手不足により里山が荒廃している。その結果暗く湿った里山となり、北地区、 東地区ではヤマビルが増加して畑や山の仕事に支障が出ているため、もう一度明るい里山として整備し、 人と自然が共生できる里山の再生を目指す。

内容
秦野ではヤマビルの環境的防除方法として、平成17年より、里山あふれあいセンター周辺3.4haの里山で下刈、枝打ち、間伐、 落ち葉かき等の手法で整備を行っている。整備前後にヤマビル生態調査(指導・協力:(株)ヤマビル研究会)を行ったところ、 ヤマビル減少に効果があるとの検証結果が出た。
平成18年度は、焚き火の熱及び炭の散布による効果の検証も試行し、あわせて集めた落ち葉による堆肥作りも実施した。
本年度については、新たに菩提地区に1.2haのヤマビル生息調査区域を設け、羽根地区と同時に里山整備事業を実施し、 ヤマビルの生息数減少を図る。


今回は、ヤマビル生息調査として、平成17年9月、18年6月、18年9月に続く、第4回目の調査を行った。
○羽根地区ヤマビル調査
・昨年と同じ調査ポイントの調査
・今年1月の整備時に焚き火と炭をまいたところの調査
・新たに調査ポイントを追加
○菩提地区ヤマビル調査
・新たに区域を設け、整備前の生息数調査

この日は、前日に雨が降り当日は蒸し暑い日となったため、ヤマビルには絶好の天気であり、沢山捕獲されることが予想された。参加者は、 当初より参加してきた地元の方々が殆ど。調査は慣れたもので、途中から雨天となったが、順調に進められた。

調査方法は、いつもの通り、ポイントの周辺約3㎡で約3分間、呼気や振動でヤマビルを誘引して捕獲する方法で行った。

<調査結果>
箇所により増えたところもあるが、ヤマビルが出現しやすい気候条件だったこと等も考えれば、横ばい~やや減少という結果であった。 捕獲数の概要は下記の通り。

羽根()地区 3.4ha
落ち葉かき区 51ポイント
場所 調査ポイント H17.9 H18.6 H18.9 H19.9
合計 444 65 160 177
平均誘引捕獲数(頭/3㎡) 8.7 1.2 3.1 3.5
対照区 16ポイント
場所 調査ポイント H17.9 H18.6 H18.9 H19.9
合計 161 79 59 24
平均誘引捕獲数(頭/3㎡) 10 4.9 3.6 1.5
シカ柵区 15ポイント
場所 調査ポイント H17.9 H18.6 H18.9 H19.9
合計 44 2 41 18
平均誘引捕獲数(頭/3㎡) 2.9 0.1 2.7 1.2
H19新規調査区 16ポイント
場所 調査ポイント       H19
合計       46
平均誘引捕獲数(頭/3㎡)       2.9
焚き火炭散布調査区 4箇所
場所 調査ポイント 焚き火 炭散布
H18 H19 H18 H19.9
合計   10   22
■菩提地区 1.2ha
菩提地区 新規13ポイント
場所 調査ポイント       H19.9
合計       106
平均誘引捕獲数(頭/3㎡)       8.1


*捕獲数の詳細はこちら。
yamabiru

実際に捕獲した印象として、やはり里山整備の効果が実感された。適度な間伐と下刈り・落ち葉かきがきれいにしてある所は、 地面が比較的乾燥していてヤマビルは少なかった。一方、落ち葉や枝などを積んでおいた周辺や、 笹など刈ってもすぐに生長し草薮になってしまう所ではヤマビルが多く見受けられた。

焚き火・炭試験区では、合計捕獲数から見ると焚き火のほうが効果があった。炭試験区は、炭に効果がないというよりも、 冬の散布後一夏を過ぎて再び草が生え初めていたので、ヤマビルの生息できる環境に戻っているようだった。焚き火・炭散布は、 ヤマビルが集中して見つかる場所への処置として活用できる可能性がある。

2年にわたる整備作業の効果が出て林内はとても明るくなっていた。地元の人によると、嘗ては落ち葉を集めて苗床・ 堆肥として使っただけでなく、タバコの乾燥のために薪が大量に必要だったから、落ちている枝などは皆きれいに拾い、 株立ちの木は細いものを伐採して薪に利用していたためもっと明るかったという。その頃ほどではないかもしれないが、平成16年当初は、 この時期と言えば腰~胸の高さほどもある草薮で林床は覆われていた。今では本当にすっきりと明るい林になった。

今回始めて調査を行った菩提地区では整備前の調査として行った。平均誘引頭数は8.1で、羽根の整備前の調査8.7と近い数字だった。 今後羽根と同様の整備を進め、ヤマビルの減少と親しみやすい里山づくりを図る。


<ヤマビル研究会 谷先生講評>
 予想外に増えている印象があるが、何もせずにいると、もっと増えた結果になっていただろう。こういったメンテナンスが大切だ。 秦野での取り組みを先例として、登山道のヤマビル対策として落ち葉かき等の環境的防除を取り入れた地域があり、効果も現れ、 この手法が広まりつつある。
 今回の結果でもシカ柵を設置したところのヤマビルの数が半分になっていたこともあり、現在では、 落ち葉かきとシカ柵の設置の併用が一番効果的ではないかと思う。
ただ、実際には、フィールドにはいろいろな要素があり、様々なことを考慮しなければならない。例えば今年の冬は雪が少なかったが、 これもヤマビルが増える要因の一つである。
今年も整備を行って、来年も調査を継続するので、ご協力いただき、これからも経過を見守りたい。

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               調査風景

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明るくなった林内         捕獲したヤマビルの一部

2007年09月07日 [レポート]

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