里山林整備指針の策定に伴う現地検討会

日 時 2006年4月16日 (日)午前9時~午後3時
場 所 北公民館、現地
内 容 ・講義 市民参加の里山づくりの進め方
    ・現地検討会
講 師 中川重年氏
  (京都学園大学バイオ環境学部 都市自然化デザイン研究室(元神奈川県自然環境保全センター研究員))
参加者 26人 (市内団体・ボランティア養成研修終了生)

秦野市内には整備の必要な里山が約1000haあります (秦野市調査)。その整備を進めるたモデル林現地図 めに、地主が整備する、市民ボランティアの参加によって実施する、 市が森林組合等に委託する、という方法で進められています。17年度の試行事業を省みると、今後のボランティア団体の増加、 フィールドの増加が期待されます。
生物多様性あふれる里山にするにはいくつかの方法があり、目指す状態によって管理方針も異なります。そのため、目指す里山のデザインを描き、 それに見合った管理を行い、効果的な保全整備を推進するための知識や技能を持つ人材を育成することが必要になります。そのための取組として、 「いくつかの方法」を実際にやってみるモデル林を設け、講師を招いての現地検討会を行いました。

モデル林の整備は、図のような4つのタイプに分けており、 今回伐採等の作業を行う予定でしたが、雨天のため講義と視察、 意見交換のみとなりました。

DSCN3787講義
■講義と意見交換

中川重年先生からは、市民参加の里山整備を進めるにあたって重要なこととして、
・里山の保全にはその場所の土地利用等の歴史をよく認識して管理方針を考える必要があ ること
・活動団体の中・長期ビジョンをたて人材の確保と情報発信を行うことが重要であること
・保全活動ででたゴミを資源化し経済に繋げることが重要
との話がありました。DSCN3794意見交換

その後、20年後を見据えて各団体の保全活動を維持するために何が必要か、 と いうことで意見交換を行いました。ここでは、 若手の人材の確保と情報発信、 保全活動で出る材や粗朶の有効利用と経済活動への結びつきについて、特に多くの意見寄せられました。
尚、秦野市では、現在改築中の「くずは青少年野外センター」でチップボイラーを導入することになっており、 保全活動で出たものを持ち込めば引き取ってもらえる仕組みができあがります。まさに全国のモデル的取組みです。

DSCN3799現地2
■現地視察

羽根にある秦野の典型的な里山と、本日作業予定していたモデル林の2ヵ所に行きました。
羽根の里山はコナラ・クヌギが主でミズキの混じる林で、手入れされ林 床植物が多様で豊富でした。中川先生からは、 コナラ等の萌芽更新の方法やミズキ林からコナラ・クヌギ林への移行の方法、林床植物の解説等をしていただきました。DSCN3804現地

次のモデル林は、ミズキが主で、伐採後放置した結果、実生からでも勢いよく育つミズキが優先する林になったことが伺えました。 市内にはこのような状態の林が多いそうです。中・ 低木層や林床植物も先のところより多様性に劣りました(アズマネザサが優勢で刈り払い済み)が、 ミズキとコナラが混じる部分では里山らしい植物もみられました。そこで、 ・ミズキばかりのところは一部皆伐してコナラ等を植樹し育林する、 ・里山の林床植物がみDSCN3815ミズキ林られるところは草刈りの管理を続けるとよい、とのアドバイスを頂きました。この場所は今後、 神奈川育林隊の皆さんが中 心になって、継続的に管理していくことになります。

今回の催しは、地域戦略の中では、里山林整備指針の作成とボランティア研修(ステ ップアップ研修)に位置づけられます。 参加者の中には昨年のボランティア養成研修終了生の姿もありました。
秦野の里地里山保全活動は、少しづつですが着実に、広がりそして深まりつつあります。市によるチップボイラー導入を含め、 継続できる体制づくりも進みつつあり、今後が大いに期待されます。

↓現地で見られた植物(一部)、と・・・・

DSCN3802ヤブレガサ DSCN3808ナツトウダイ

 ヤブレガサ                ナツトウダイ

DSCN3809ヒメウズ  DSCN3826ヤマルシソウ

ヒメウズ                   ヤマ ルリソウ

DSCN3795シュロソウ DSCN3812ヤマビル

シュロソウ                 ヤマビル。早くも元気そうでした・・

2006年04月19日 [レポート]

里山林整備指針の策定に伴う現地検討会(詳細記録)

(4月16日の現地検討会の詳細記録)

■講義 市民参加の里山づくり 中川重年氏
○里山の生物多様性のこと
○郷土の歴史のこと
○仲間の維持発展のこと
○世の中への発信のこと
○自分の価値のこと
○出たゴミの後始末のこと

○里山の生物多様性のこと、郷土の歴史のこと ~過去の土地利用をふまえた保全管理を ~
・保全生態学等では知見が進んでいるが、郷土の歴史をふまえることが重要。秦野の場合は割山という仕組みで管理者が細かく分かれているため、 林の状態はバリエーションがあり多様性に富む。
・[里山/農地]が一つのユニットとなっているのが里地里山の特徴。だが、農地は宅地化したり林に戻ったり、 里山は手入れされなくなる等によってユニットの構成が崩れているところが多い。
・過去の郷土の土地利用をふまえて現状を捉えないと、無駄な作業をしてしまうことがある。例えば、林でも階段状の地形の所は以前の農地。 そこで落ち葉かき等を行っても里山の植物は戻ってこない(農地では除去されてきたため)。里山らしい植生に戻るには80年ほどかかる。
・生物多様性豊かな里山とは、高木、中・低木、下草等がバランスよくあり、動物も生息できるシステムとしての里山。
・過去の土地利用を調べるには市史などを紐解くのも方法の一つ。

○仲間の維持発展のこと、自分の価値のこと、世の中への発信のこと
・20年後の団体のあり方、構成メンバーの世代交代を含め中・長期ビジョンをたてることが重要。
・世の中への発信が、人材確保の点でも自分たちの原点を確認する上でも重要。
・活動団体の情報発信・・市内の団体からの発信を。市内団体の連合として一元化する方法もあり。

○出たゴミのあと始末のこと
・切った枝葉や間伐材などは、林の中に置き放しではきれいにしたことにならない。経済的にあわなくとも搬出が必要。ボランティアの意思、 共同で林内作業車を使うなど工夫して搬出を。
・「ゴミ」は資源化することが重要。19年度完成予定の 秦野くずは青少年野外センターでは、チップボイラーを導入する予定。 ボランティアが作業してでた材を引き取って燃料にする予定でこれは県下で一番の取組である。

■意見交換(口頭・記述)「20年先の団体の活動維持のために必要なこと」
人材、情報発信等
・人材・後継者は10階の連続講座を毎年行って、残った人に継続的に参加してもらう
・大学の教授とネットワークをもち、教授に学生を連れてきてもらう
 →学校の場合、使命感を持った統率力のある指導者がいることが重要になる
・楽しみを織り交ぜながらでないと続かない。次世代の人材の引き込みは難しい。
・中高生が里山から離れていくことが問題。自我確立期なので親と離して子ども同士のグループで参加できる体制が必要。
・中高生の課外活動に組み入れ
・団塊の世代の取り込み
・若年層向けの体験コースをつくる
・目標設定の共有化
・分野における専門性の獲得(いつまでも素人では発展しない)
・市民に関心を持ってもらう・地域に広めるための広報(市民共有の財産)・・他グループと連毛いした体験活動の実施

経済活動との結びつき
・経済に繋げる(金にする)ことが重要。
 →バイオマス産業、環境教育インストラクター等
・インストラクター:きちんとした見識を持って解説ができる人材が必要(土地の歴史を踏まえ)
・材・生産物の資源化(資源の受け皿、循環の仕組み構築)・・行政・公共機関の役割重要
・バイオマス産業:「里山ビジネス」を。材の搬出先(活用方法)の確保。
秦野市ではボランティアが出した材を買い取ってチップボイラーに。
アサザプロジェクトでは粗朶を霞ヶ浦の沈床にしている(産地認証つき)。
オガ粉の利用、木粉→カイロや猫砂、薪をピザ屋に卸す、炭シーツ、ディスプレイ用の炭等
→これまでの伝統的なバイオマスの利用にこだわらず、今、必要なものに木材が使えないか、と考えるとビジネスチャンスに繋がる。


■現地視察1 秦野の典型的な里山(広葉樹林)
北地区羽根の広葉樹林。コナラ、クヌギ、ミズキなどが主の林で手入れがされており、林床の植物が非常に多様で豊富。
・フラットな面があるのでかつて農地と思われる。もと畑地の面と土手の面では植生が異なる。
・萌芽更新をするには、なるべく下で伐採し、萌芽したものの自根が活着しやすくなる。
・コナラ等の林に戻すには、部分的な海抜後、コナラ等の苗を植え付ける
・光が差し込むとミズキやアカメガシワが実生から生えてきて先に伸びるので、 コナラ等の林にするにひは苗を植えて大きくなるまで世話をする必要あり。


■現地視察2 モデル林
本日の作業をする予定だったモデル林。半分は、ミズキが主の林で、林床はアズマネザサが優勢。
半分は、ミズキとコナラ等が混じる林で、林床には里山らしい(コナラ・クヌギの雑木林に見られる)林床植物がいくらか見られる。
・ミズキばかりになっている部分は、皆伐してコナラ等の苗を植樹する
・林床植物が見られるところは下刈りを続ける

2006年04月19日 [レポート]

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