水俣の環境再生を支えた杉本栄子さん、金刺 潤平さん、遠藤 邦夫さんが東京に来ます。

環境再生水俣「みなまたの歩き方」で紹介させて頂きました 杉本栄子さん、金刺 潤平さん、遠藤 邦夫さんが東京に来ます。 2月18日(土)東京商工会議所ビル7F 国際会議場です。水俣病経験を次世代に伝えるセミナーでの報告者です。お時間のとれる方、 是非とも、お越しください

【開催概要】
水俣病経験を次世代に伝えるセミナー ~公式確認50年の節目に~

 水俣病は、今年、公式に確認されてから50年の節目を迎えます。
 日本の環境問題の原点である水俣病の経験から、私たちは何を学び、
これから社会を担う子ども達に、何を伝えていけばよいのでしょうか。
 環境省では、水俣病の経験を次世代に伝えるため、平成15年度から
このセミナーを開催してきました。
今年は、水俣病被害者であり、時代の証言者でもある水俣病語り部の方々に
貴重な体験談をお話しいただき、あわせて、教育現場で、水俣病について
どのように伝え、子どもたちや若者はそこから何を学んでいるのかについて、
実践例を発表していただきます。
また、現在、市民、患者団体、NPOが中心となって、行政と共に取り組んでいる
「水俣病公式確認50年事業」についても、その意義と具体的な活動について
実行委員会の方から紹介していただきます。
50年の節目に、水俣病問題について改めて考え、教訓を学びとるよい機会ですので、
ぜひ、ご参加ください。

●日時:平成18年2月18日(土) 13:00~17:30
●対象者:小・中・高等学校の先生、環境・教育を学ぶ学生等を中心に、
    NPOや環境に興味のある一般市民
●募集人数:先着150名
●参加費:無料
●会場:東京商工会議所ビル 7F 国際会議場 
東京都千代田区丸の内3-2-2
http://www.tokyo-cci.or.jp/side_m/gaiyo/tizu.html
●主催:環境省
●ホームページ(http://mizumidori.jp/minamata)
◆プログラム   
13:00~  開会挨拶
13:05~  水俣病を取り巻く現状について
13:20~  時代の証言 水俣病語り部講演
         水俣地域語り部 杉本 栄子氏
         新潟地域語り部 権瓶 晴雄氏
15:20~ 教育実践の事例紹介
       大学生による新潟水俣病現地調査について
         立教大学 助教授 関 礼子氏
       水俣市における水俣病教育の実践について
         水俣市立水俣第一小学校 浜分校 教諭 田中 睦氏
16:20~ 水俣病公式確認50年の節目に
       50年事業の意義と概要
        慰霊部会 部会長 金刺 潤平氏
       次世代に伝えるために
        もやいづくり部会 遠藤 邦夫氏
17:30~ 閉会

◆水俣病を伝える展示・資料コーナー
ロビーにて、水俣病を伝えるための写真・パネル展示や水俣病学習に活用できる
ビデオ・DVD、副読本、書籍等を紹介します。

[2006年02月16日 おしらせ]

アクティブレンジャー (環境省) 今日から募集 全国13名

17年度から全国で採用を開始した環境省のアクティブレンジャーが、本年も募集を開始しました。
採用人数は、昨年度は60人でしたが、18年度は全国で新たに18人の募集を行うようです。 

詳細は、 環境省のHPに募集のお知らせが掲載されてます。 
http://www.env.go.jp/press/press.php3?serial=6832 
 
また、環境省HPの地方環境事務所のページに入って、募集地区を含む関係事務所のページを開くと、詳しい募集要項が掲載されています。  
例えば北海道地方環境事務所のページは 、 http://hokkaido.env.go.jp/to_2005/0213a.html です。

[2006年02月14日 おしらせ]

「協働公益活動の合意形成及び逆システム学による検証」

本稿は、2004年、2005年に行った中央大学 日本比較法研究所の特殊講義 「日本法制2010年」において、 「環境運動と公的主体」というテーマで行った講義をもとに、「日本法制2010年研究蔵書」の原稿として寄稿したものです。
中央大学においてご指導いただいた恩師小島武司教授、渥美東洋教授、 大澤恒夫弁護士をはじめとする法制研究メンバーの参考になる部分が一部でもあればと願いっています。

同時に本稿は、地域社会を対象に、さまざまな公共政策を実施してこられた方々、行政担当者、学識経験者、専門家、コンサルタント、各種団体、 そして、市民、市民団体等の方々にご一読頂きたい内容を中心に執筆いたしました。地域共同体と個人の関わり、 地域共同体の中への環境政策の啓蒙の方法を、地元学、逆システム学、合意形成手法から、現場での体験をもとに解説を試みたものです。 長文になりますが、おつきあいいただければ幸いです。また、本稿に対するご意見ご指導等お送りいただければ幸いです。
 ご意見ご指導等の送付先: tegami@satochi.net


中央大学 日本比較法研究所 「日本法制2010年」研究蔵書 原稿
「協働公益活動の合意形成及び逆システム学による検証」

竹田 純一

目次
第1章 個人の生き方と環境問題
1.人の生き方と環境問題
2.協働公益活動の主体
3.利己的な個人と共同体の意識
4.環境政策を担う地域共同体
  地域共同体の分類
  地域共同体における維持管理
  自治内容の区分と地域共同体にもとめられている機能
  地域共同体を構成する個の集団
5.集落の形、自然環境と文化のしくみ
  災害と生活文化の智恵
  民俗学者のまなざし

第2章 合意形成と協働公益活動
1.合意形成の用語
1.合意形成のこれまでの経緯と概況
  パブリックコメント・パブリック・インボルブメント
  河川管理
  都市計画
  公共事業における用地買収
  道路整備と交通政策
  コンセンサス・ビルディング
  コンセンサス会議
  参加型まちづくり
3.合意形成の手法とポジション
4.地元学による合意形成事例
  新潟県佐渡市野浦地区における協働公益活動と地元学
  新潟県佐渡市久知河内地区における協働公益活動と地元学
  新潟県佐渡市城腰地区における協働公益活動と地元学
  愛知県美浜町における協働公益活動と地元学
  神奈川県城山町小松城北地区における協働公益活動と地元学

第3章 逆システム学とと協働公益活動
1.逆システム学とは
  対象となる現象
  現象の把握の仕方
  調査のポイント
  要素還元論と全体論の解析方法
  非市場的な諸制度の取り扱い
  生命科学における解析方法
2.地元学による地域共同体への介入と逆システム学による解析方法の比較
3.生命科学における調節制御のしくみ
4.フィードバックがこわれている事例1
  フィードバックがこわれている事例2
  フィードバックがこわれている事例3

第4章 協働公益活動の創出
1.多重フィードバックと制御系が地域共同体に果たす役割
  多重フィードバックの段階
  越えられない本質的な問題の壁
2.公共政策に果たす地域社会(個の集団)の役割の重要性
  公共政策への希薄な国民意識
  個人と地域共同体の価値感とパラダイムの転換
3.公的主体としての「制御系」の意義と役割の考察
  崩壊集落の農地、山林と自然災害
  公的主体としての集落組織とNPO
  新たな公共事業の萌芽
4.集落における制御系とは何か
  集落会合の基本的なスタンスとスタンスを変えるコーディネーターの役割
5.地域共同体における制御系の働き
  制御系はどの方向に機能するか
6.制御系の構築方法
  市街地における制御系の働き方
  集落における制御系の働き方

図表目次
図 1セーフティーネットの再構築
図 2 社会的合意形成
図 3 共同体の意識
図 4 共同体の意識形成過程
図 5 合意形成の手法とポジショニング
図 6 地元学による合意形成(事例1 野浦地区)
図 7 地元学による合意形成(事例2 久知河内地区)
図 8 地元学による合意形成(事例3 城腰地区)
図 9 地元学による合意形成(事例4 美浜町)
図 10 地元学による合意形成(事例5 小松城北地区)
図 11 地元学・事前の包括的合意形成の実現
図 12 利己的な遺伝子と反応の束 

 

はじめに

私は1990年以降の15年間、「個人の生き方と環境問題」というテーマで、さまざまな活動を企画、プロデュースしてきました。
その一つの結論として、環境問題の解決は、自由できままな個人のライフスタイルから、それぞれの個人の嗜好に合った分野の「協働公益活動」 を行うことが、個人と環境問題の関係を改善するために有効であると考えるようになりました。この考えに確信をもったのは、 三つの概念との出会いです。

 一つ目は、「地元学」との出会いです。戦後日本の公害の象徴であり、環境運動の原点と考える人が多い水俣病は、40年の間、 人と人との関係、コミュニケーションが途絶えていました。水俣市では、この関係性をもとに戻すために、大字単位で地域の自然、文化、 風土と暮らしの見直し作業を“もやいなおし”運動として行ってきました。この人と人、 人と自然とのコミュニケーションを回復させた活動をふりかえり、地元に学ぶ地元学と命名しました。(吉本哲郎2001)この地元学から、 個人と環境問題、地域共同体と環境問題との関係性のあり方を見つめ直しました。

二つ目は、「合意形成」です。この概念は、公共事業を行う際に、地権者、利害関係者の範囲を特定し、行政側の主張と地権者、 住民側の意見の調整を図る手法です。この合意形成は、あくまで、行政側から、住民、利害関係者、国民側へ、 公共政策への合意を図るために構築されてきた手法です。一方、個人と環境問題の関係を見つめると、環境問題は、個人の暮らし方、 ライフスタイルが問われているために、国民の主体的な環境政策への協力が不可欠です。言い換えれば、 国民の主体的なライフスタイルの転換が必要です。この視点から、行政側からの合意形成に変わる、住民、地域社会側からの 「包括的な事前の合意形成」の必要性を痛感しています。

三つ目は、「逆システム学」(金子勝、児玉龍彦 2004)との出会いです。
市場経済を中心とする社会システムは、非市場的なセーフティーネットにより支えられているという概念です。市場経済は、個人、 企業の自由な活動が、自動調和的に最適な市場を形成するという考え方で構築されてきました。この考え方を支えたのは、 要素還元論と全体論です。しかし、市場経済も、生命科学も、この両者の概念では説明できないさまざまな現象が現れました。また、 人間の遺伝子(ヒトゲノム)の解析が進み、この両者からわかった結論は、これまでの、 原因に対して対処するような経済政策や病気の原因を特定し投薬するのでは、数十パーセントの確率で有効に働いても、残り数十パーセントは、 副作用が起こってしまうということです。ヒトゲノムの解析以降、生命科学の領域では、個別の原因に対する処方ではない、 多重な反応の束に対する処方の研究が進んでいます。市場経済でも同様に、年金問題や福祉政策、 ボランティア制度の促進のような非市場経済のしくみが、政策の中心で議論されるようになりました。もはや、生命科学も市場経済も、 市場や制度の中にある無数の企業や個人、商品を分析するのではなく、 日常的に現れているさまざまな現象に対するセーフティネットの張り替えが必要です。このパラダイムの転換が逆システム学です。

生命体も市場経済も、さまざまな要素が複雑に反応しています。その一つ一つの解析は不可能です。逆システム学では、 生命体や市場経済におけるさまざまな反応を「多重フィードバック」として捉え、その多重な反応を、コントロールし、 生命体や市場経済の維持存続を果たしている「制御の束」があると定義しています。これまでの、要素(原因) に対する結果を考察するのではない、それぞれの遺伝子の反応に対する、制御系遺伝子の反応(フィードバック)が、 生命体も市場経済も支えているという概念です。

これまで、都市に対する過疎地、経済活動に対するボランティア活動、賃金労働に対する年金などは、 市場経済のしくみに対する非市場的な副次的なしくみとして捉えられてきましたが、逆システム学では、市場経済は、 非市場的なしくみによって支えられていると結論づけています。私が、この間行ってきた環境を軸とするさまざまな企画やプロデュースは、 全て非市場的な周辺のしくみづくりですが、ふりかえってみると、社会の中に、この15年急速に浸透してきたしくみでした。まさに、 時代が求めていたセーフティーネットの一部を構成する機能だったように思えます。

この三つの概念との出会いから、これまでの活動を、「協働公益活動の創出」という視点で整理しました。 十分な時間をかけて検証したものではありませんので、私の利己的な解釈に走りすぎている点は、読者の感じるところであると思いますが、 合意形成手法のさらなる発展と、社会システムのパラダイムの転換、そして何よりも、 個人と環境問題の関係を改善するための一助として活用いただければ幸いです。

[2006年02月04日 レポート]

第1章 個人の生き方と環境問題 (協働公益活動の合意形成及び逆システム学による検証)

第1章 個人の生き方と環境問題

1.人の生き方と環境問題

日本は戦後、さまざまな改革を実施してきた。その中でも中核をなすのは、先進諸国に並ぶ経済発展であることはいうまでもないが、 ここでは、この間の市場経済の発展と、環境問題の関係を、個人の生き方と環境問題、及び、 地域共同体と環境問題という2つの視点から整理するための前提となる要素の整理を行いたい。
(1)経済成長の原動力は、統一された教育と農山村から都市への人材の流出だった。都市圏の拡大と市街化、工場の集積が進むなか、 産業技術の基盤を支えたチッソが有機水銀を放出し、50年たった今もさまざまな被害と事実認識の相違が残る水俣病を生んだ。 この水俣病を契機に、以降さまざまな公害訴訟が起こった。日本の環境問題の原点は、水俣とよくいわれるが、環境活動を始める人の原点も、 この水俣との出会いである人が多い。これが第一番目の関わりである。
(2)ついで重要な要素は、都市へ人材が流出した農山村である。戦前の人口と比較すると半減程度で済んでいる地域から、 集落機能が崩壊している地域まで、現在も人材の流出は進んでいる。過疎高齢化が進む農村村の現状は、 公害問題と対局にある人為の減少という放置により生じた環境問題である。ここでの危機は、管理不足から来る治山、治水機能の低下、 管理されていない棚田や人工林地の地滑りが、気候変動にともなう豪雨が重なり急速に拡大している。これが第二番目の関わりである。
(3)また、一見、平和に見える市街地では、行き過ぎた消費生活がもたらす環境負荷の増大や、 生活実感のない都市生活が生み出す社会の脆弱さが目立ち始めている。一部の研究者を除き、数年前までは、ほとんどの人々が信じなかった、 異常気象やインフルエンザが昨今猛威をふるい、その恐怖は、世界をふるえ立たせているが、その根元は、 まぎれもない都市化された過度な消費生活と、市場経済がもたらす豊かな生活の代償である。ここに、環境問題と個人の第三番目の関わりがある。
(4)そして、もうひとつの環境問題との関わりは、学生闘争や公共事業での立ち退き、反原発運動などに見られる反対運動や反対訴訟である。 この間、さまざまな訴訟や抗議運動が行われてきたが、これらの運動は、1992年を境に徐々に代案提示運動に代わり、現在は、 交渉のテーブルを設けた協働の場が設けられることが多い。これが第四番目の関わりである。
以上は、非常に、雑ぱくな分類であるが、戦後から今日までの、個人と環境問題に関わる重要な要素として、 以下のような分類を行い次項以降の検討の要素とした。
(1) 公害裁判の原告側と被告側、及び利害関係者
(2) 農山村で、戦後地域の維持活動を行ってきた農林家
(3) 過度な消費生活を行っている都市生活者
(4) 反対運動、環境運動、市民活動に携わっている人、及び、抗議、協議の対象である行政等が設けた協働の場
このような分類をすると、各分類に属する人数は、(3)が大多数を占め、(2)は、全国民の10%弱、(1)は、非常に少数であり、(4) は、昨今急増しているが、人数は、国民のほんの数%程度である。

図1の「セーフティーネットの再構築」は、農山村(2)と都市(3)の環境問題における課題を示した図である。 これまで社会システムは、市場経済を中心に構築されてきたが、もはや、都市においては、温暖化対策、省エネルギー、 3Rの推進や都市緑化等を推進しなければ、温暖化と資源の両面から、社会を持続させることができなくなる。
農山村では、生物多様性の危機、治山治水、食糧やエネルギーの自給率向上がもとめられているが、所得や経済的メリットがないため、 担い手ができず、農村の維持管理を行うことができない状況に追い込まれている。
この両者とも、市場経済中心のしくみ作りのゆがみであることは間違いないが、結果として生じているこれらの現象への対処が行われなければ、 危機は、ますます深刻になるばかりである。

第三章で引用する逆システム学では、この再構築のしかたを、セーフティーネットの張り替えと結論づけている。 この張り替えは容易にできるものではないが、今の日本社会には、 本質的な環境問題を解決できるようなセーフティーネットの張り替えがもとめられている。

図1 セーフティーネット
図 1セーフティーネットの再構築

政府の基本政策の転換を、セーフティーネットの張り替えを速やかに実現させる意味からも、国民に求められているのは、 自由な経済活動を行う利己的な個人ではなく、将来世代にわたり、社会の存続方法を選択できる、戦後とは異なる日本人、つまり、 公的な活動を主体的に行える新たな公民への転換が必要である。この公民は、公民権を与えられている意味での国民ではなく、 行政と連携した協働公益活動を行う新たな公民像である。


2.協働公益活動の主体

個人と環境問題の関わりは、個人と個人の関わり、個人と学校の関わり、個人と企業との関わり、 個人と社会の関わりを考えればわかるとおり、さまざまな選択肢がある。しかしながら、環境問題は、時々刻々、環境負荷を増し、全ての主体が、 環境配慮を内在化させないかぎり、だれかに、どこかに、しわ寄せがゆき、結果的には、すべてが自分自身に返ってくる。選択、 非選択とは異なる主体的な環境活動、つまり、生活自体の環境改善が不可欠であるが、強制されていないが故に、または、 隣人が行っていないが故に、環境に配慮しない暮らしが、日本社会全体で行われているのが実情である。
 典型的な例は、2005年、小池環境大臣が、Cool BIZ、クールビス、ウォームビズを立ち上げた際の、一部の経済界の反発である。 しかし、経済効果があるとわかると急速にマスコミにのり全国に広がった。つまり、ビジネスチャンスや家計の収支、 個人に直結した利害がない限り、他人事という意識が日本人と環境の関わりの平均的な姿である。 金銭中心であるこれまでの利害の意識から個人を含む地域社会の存続という意識に徐々に変えていかなければ、今のしくみは崩壊する。 この崩壊を避けるために、利己的な個人から、地域社会の存続を考える協働公益活動の創出が必要である。
協働公益活動は、日々の暮らしの場での環境活動の提案である。足下の暮らしから目をそらし、 他所での活動や他の環境テーマの活動への参加ではなく、暮らしの場で、行政と協働した公益活動のが前提である。 自分の住んでいる地域を見つめ直し、コミュニティーとの関わりをつくり、コミュニティーが有している環境課題の中から、 自分に合った活動を主体的に担う活動である。このことは、環境活動だけではなく、希薄な人間関係から生ずる犯罪や悲惨な事件の予防、 人間性の回復にも有効に機能する。この協働公益活動は、個人と行政、及び、コミュニティーとの協働作業である。その公益活動の契機は、 次項のワークショップ手法により形づくることができる。

図2 合意形成
図 2 社会的合意形成


3.利己的な個人と共同体の意識

地域社会では、さまざまな個人が生活をしている。この個人の意識と地域共同体の意識を、 各地のワークショップ等を行った印象から図示すると、以下のようになる。
共同体の運営者である区長や公民館長、自治振興会や地域団体の事務局の意識は、共同体として担わなければならない役務に関心が集まっている。 しかし、共同体を構成する各個人の関心は、個人個人さまざまで、男女、年齢、仕事、趣味等によって、個人個人で同一であるわけもなく、また、 その個人で構成される共同体自体も、他の共同体とは、性格を異にする。これまで調べてきた地域の中で、隣同士の地域共同体の性格は、 数個先の地域共同体の意識とは似ていても、隣同士は、正反対であるケースが非常に多い。これは、隣接しているが故に競争と区別、 隣とは違うという心理的な作用が働くようである。地域共同体の意識は、沢ひとつ、斜面ひとつ、字ひとつ違えば極端に異なるケースが多い。

図6 集落の方向
図 3 共同体の意識

4.環境政策を担う地域共同体

地域共同体の分類
個人の意識は、個々人により異なるが、一方で、地域共同体は、個人と異なり、いくつかの分類が可能である。農山村にある集落を、 市街地の自治会等と比較した場合、都市近郊の集落、中山間地の集落、諸島の集落など、それぞれの集落は、 風土や地域性によってさまざまな特性がある。これらの集落に共通している特徴のひとつに、農山村の集落は、 市街地とは比較にならないほど広大な森林、農地、雑種地などを保有している点がある。
この土地の管理は、市街地においては、個人管理の宅地建物以外は、ほぼ、行政が公的に管理を行っている。住民は、私有地以外の道路、河川、 学校、その他の公共施設等を管理する意識も義務もない。
一方、広大な農地、山林、雑種地等を民地として保有する集落においては、住民と行政の役割は、市街地と異なり、行政は、市町村道(国道、 県道)と災害等による被害に対して復旧作業の一部を行うが、この作業自体も、場合によっては、行政が住民に委託を出して行うなど、 地域共同体内の維持管理は、基本的には、住民自身が負っている。この点に、 市街地と地域共同体における住民と行政の関係に基本的な相異がある。

地域共同体における維持管理
地域共同体の維持管理は、自治組織がこれまで行ってきた。しかし、この維持管理が行えないほど、人口が減少し過疎化が進んだ場合には、 集落崩壊の危機が高まる。一方、行政側から見ると、崩壊の危機が訪れたとしても、市町村の総面積は、人口及び自治体の職員や機構に対して、 市街地とは比較にならないほど広大である。集落崩壊が拡大したとしても、自治体が管理を行うことは不可能である。

自治内容の区分と地域共同体にもとめられている機能
以上のような観点から、自治組織、コミュニティーの機能によりこれまでの自治区(字、区、集落) の区分を考えると以下のような分類を行うことができる。言い換えれば、地域社会における個人と環境活動との関わりや合意形成手法は、 この区分により異なる方法が必要となる。

(1) 市街地の自治体が地域の維持管理を行い、地域住民は、地域の維持管理に直接関与していない場合
(2) 市街化の影響を受け、地域の維持管理機能が低下している場合
(3) 地域の維持管理機能が、正常に働き、コミュニティーが健在な場合
(4) 地域の維持管理機能は、働いているが、本業が地域外であるため、時間の調整が難しく、個人負担が限界に達している場合
(5) 集落崩壊に近い状態にあり、住民が地域の維持管理を放棄した場合

上記のそれぞれの特徴は、以下の通りである。
(1) 市街地の自治体においては、行政の関与を前提として、行政サービスの変更、地域内への公共工事や施設の設置、 街並み景観に関する条例等の検討を行える地域
(2) (1)に加えて、共有地、公民館、これまで共同で行われてきた共同作業や、地域行事の検討、自治施設、共有施設の設置、 社会教育の検討を行える地域
(3) 特徴ある地域づくり、農林漁業の生産方針、生業の調整、水道、道路、水路、施設、消防などの維持管理、学校行事、社会教育、 防災までのさまざまな調整を行える地域
(4) 上記(3)の内、生活に直結した事項が残り、森林、河川、水路、防災に関する対策がとれなくなった地域
(5) 本来(3)の機能を果たしていた地域であるが、個人の農地、屋敷に関わる道、水路、施設のみの維持管理が行われ、 他の作業は行われず、荒廃が急速に進んでいる地域
以上は、各地を訪問する中で感じた地域特性毎の特徴であるが、地域がどのような状態にあるかにより、個人、地域共同体の関心と意欲、態度は、 大きく異なることになる。

地域共同体を構成する個の集団
上記区分は、地域共同体を構成する個のバランスの点においても大きな違いがある。
市街地では、一次産業を営む生産者は、少数で、二次、三次産業を中心に、自営業と会社員が中心的である。人口ピラミッドも、 日本の平均的なデータに近くなる。
市街地とは、対照的に、農山村の地域共同体では、一次産業(兼業農家)が中心となり、高齢者の割合が高くなる。また崩壊集落に近づくと、 高齢農家のみが残り、他分野の住民は、集落を離れてゆく。
ここでは、(3)の一般的な地域共同体を前提として、地域共同体と個の関係についてふれてみたい。
コミュニティーが存在し、地域の維持管理作業が行われている地域共同体では、さまざまな個人が居住し暮らしを営んでいる。高齢者の大半は、 農業を営み、山林の管理、川、海などの漁や自家用の食品加工などを業として、または、自給用に行っている。
この内、壮年期の夫婦は、兼業農家として、地区外に勤めに出ているケースが非常に多い。役場、農協、漁協、土木関連、教員、郵便局、商店、 酒屋は、どの地域でも定番の職業である。地場産業が残っている地域や観光資源のある地域では、木工所、大工、民宿、 雑貨店などもよくある職業である。
こども達は、小中学生までは、両親とともに暮らしているが、高校以降は、近くに適した学校がないため地区外に出るケースが非常に多い。 問題は、そのまま都会に出て、地域に帰る動機がなくなることである。農林水産業以外の仕事は、役場勤務等の空席がない限り、 地域にもどってこない点にある。集落を構成する個は、このような傾向から、以下のように分類して考えると、 個と集団の特徴を把握する上で参考になることが多い。

・高齢者の男性:農業従事、狩猟採取、水の経路、堆肥、燃料、百の智恵
・高齢者の女性:農業従事、食品加工、食文化、信仰、衣食住の智恵
・壮年期の男性:地区外へ勤務、関心と技術は人による
・壮年期の女性:農業従事、又は、地域内外でパート、芸能や趣味の活動
・青年期の男性:公務員、教員、JA、郵便局、大工、民宿経営など単一の職業と趣味
・青年期の女性:地域内外でパートなど単一の職業と趣味
・少年少女  :小中学校までは在所、以降、都市へ

また、勤務先が行政やJAである個人が地域共同体にいる場合、地域によっては、個人が多様な役割を果たすことがある。同様に、名士、 地主、神主、住職、校長は、封建的な家父長制が残る地域共同体では、その特徴やリーダーシップの取り方、意思決定のしくみが、 異なる傾向がある。
 このような個の集団は、かつては、家父長制や区会など、頻繁に開催される会合等で、集落の情報は、 良くも悪くも一元的に管理され情報の共有が行われていた。しかし、現在は、うわさレベルの情報の共有は非常に早いが、 基礎的な情報の共有が行われておらず、共同体として機能していない場合が多い。


5.集落の形、自然環境と文化のしくみ

個々の集落のできた歴史は、集落ごとに異なるが、それぞれの集落は、いずれも、水源を持ち、その水量によって、集落の戸数、 水田の大きさと枚数、畑、家畜の頭数などが、自然環境の中で必然的に定められてきた。各集落の大きさは、長い時間をかけて、自然に淘汰され、 その結果として、昭和30年代頃まで、各地で見られた姿を作り出していた。一部の例外は、疎水等の事業により、水の経路を変えたことで、 戸数や水田の面積は、その疎水量の分だけ拡大した。本来、その集落で活用できる水量は、集水域の大きさと雨量、 地質等によって定まっていたが、それらの水使いの仕方は、長い歳月を経て、治山と治水を巧妙に調整し、溜池と水田水路、家畜と堆肥、 里山の関係は、地域の気候風土に応じた活用方法を、経験則に照らして調整されてきたしくみである。
このしくみは、伝統的な農作業、農事暦等に、智恵や技術が刻まれているが、その継承者が不在のまま、もはや、消えようとしている。
その一方で、文化の継承は、人間国宝や伝承芸能に見られるように、その芸能的な形だけが保存されている。しかし、本来の伝承芸能は、 形の背後にある意味にあたる技術や智恵、喜びや悲しみを継承しないと、伝統の価値は、人々からますます遠ざかっていく。 長い歳月をかけて継承されてきた地域の自然環境、地形と暮らしの関係や、人が自然に働きかけ構築してきた文化の基本的な情報が、 失なわれている所以である。

災害と生活文化の智恵
この智恵とは、一見たいしたことがなさそうに見えるが、山の中の水の経路が変わると、その下の集落に大量の水が流れこむように、 風や水の道は、日本の急峻で繊細な地形、台風等の自然が作り上げてきた地形であるため、地形とのつきあい方がおかしくなると、たちまち、 災害は大きさを増す。戦後から今日まで、現在の高齢者の何気ない所作が、各地域の維持管理を行ってきた。しかし、 壮年層が継承していない風土と土地と水のしくみが、今後の大きな課題となってくるはずである。このことに気づき始めた集落の活動と、 気づいていない集落の活動とでは、今後、大きく地域の環境政策が異なってくることになる。
この検証は、2005年より、琵琶湖博物館の館長 嘉田由紀子氏が、 国土交通省からの委託を受けて始めた河川の氾濫等の災害現場の聞き取り調査によって、徐々に解明されことになろうが、 全国各地を訪問するなか気づくのは、起きた災害の箇所とその原因を、住民から聞き取ると、前記した自然との関わりや、 水の経路の変化が浮かび上がってくることだ。何気ない、些細な所作、または、不作為が、水の経路を変え、災害へと発展しているケースが多い。 地域共同体を構成する個と個の集団としての共同体のありようは、これらの基礎的な情報の共有を行えるか否かで対応が異なることになる。

民俗学者のまなざし
民俗学者の宮本常一は、「民俗学の旅」の中で、旅立つ前に父から送られた言葉を記している。はじめての地域に訪れたら、 以下の点に注意して地域を見つめよと指摘した言葉だ。
・田畑の作物、作物の育ち具合、家の大きさ、屋根瓦、草葺き等の違い、人の往来、服装
・高いところから、見渡し、方向、目立つもの、お宮、神社、家のあり方、田畑のあり方、周囲の山々を見る
・名物や料理を食べることで、暮らしの高さ知る
・時間のゆとりがあったらできるだけ歩いてみる、いろいろなことを教えられる。
などである。自ら住む土地のことを知らずに、現代人は生きている。そのことを象徴する話は、先日、高知で見た不幸な地域である。地名は、 「沖」。水の中という意味だ。この沖は、もともと深田だったが、ある農家が大きめの耕耘機をおくためにやや立派な農具置き場を建てた。 その小屋を見て、住宅開発会社が、ここには家が建てられるのかと考え、土地を買収し、土を盛って、宅地として販売した。しかし、 住宅が建って、数年、土地は徐々に沈み始め、いまでは、周辺河川より土地が低くなった。もちろん、年に数度、浸水している地域である。 これは、笑い事のような話だが、いかに、人は、土地との関わりを捨て、市場経済と金額の高い安いで物事を見ているかを象徴している。 同様のことは、地域を見つめ直すと、さまざまなことが見えてくる。農山村・里地里山に住んでいて大切なことは、一人ひとりが、 自分と地域との関わり、風土と関わる生活感や自然との距離、自然との関わり方、自然が作り上げてきた風土と、これからの変化を知ることだ。 「調べた人しか詳しくならない。だから自分で自分の住んでいる地域のことは調べる」こういったのは、水俣市で、 環境の再生を住民と共に創った吉本哲郎の言葉だ。地域共同体で、既に、環境や防災に対する十分な意識を持っている地域は良いが、 備えのない地域は、以下のような意識形成を行う必要がある。このマトリックスは、筆者が、ここ15年ほど、実践型の集落ビジョンの策定や、 公益活動の実施を促進させるために、行ってきた手法を、図示したものである。実施にあたっては、さまざまな配慮が必要だが、ポイントは、 大きく3つのフレームから構成できた。

図7 共同体の意識形成過程
図 4 共同体の意識形成過程

一番目のフレームは、これまでの自然や文化、生業や課題、集落の暗い感情(玉井袈裟男1980)等の把握である。この把握には、 地元学(吉本哲郎1995)の手法をもちいて、地域共同体内に呼びかけ、極力全員で、地域調査を行うことである。老若男女を問わず、 行政や外部の専門家、学芸員、デザイナーなどが加わることで、地域調査の内容は濃くなる。
第2のフレームは、調査内容から住民のニーズを掘り下げ、暗い感情を反動として、ビジョンを描くことである。その際のビジョンは、 絵に描いた餅ではなく、共同体において現実に数年間で実施する内容をビジョンとして表現することである。この手法は、四面会議法(岡田憲夫・ 杉万俊夫・平塚伸治・河原利和2000)が優れている。
第3のフレームは、共同体の封建的なしくみから、智恵と技術を学び活用し、古い制度やしきたりは、 新たな共同体の動くしくみや組織に変えることである。この3つのフレームが、できれば、共同体は、調べた住民が、自らの意思に基づいて、 それぞれの嗜好にあった活動に参加する形で、実現することができる。

[2006年02月04日 レポート]

 第2章 合意形成と協働公益活動 (協働公益活動の合意形成及び逆システム学による検証)

第2章 合意形成と協働公益活動

合意形成とは、環境問題や国際紛争の解決、迷惑施設やまちづくりに伴う住民合意等、これまで行われてきた公共事業、公共政策から、 先端科学技術の利用の可否など、社会的意思決定の質の改善、実施根拠である正当性の改善が求められてきたために、1990年以降、 急速に広がってきた概念である。さまざまな合意形成の試みは、対象とする政策領域、利害関係者の広がり、最終的な社会的意思決定との距離、 必要とされる情報・知識等に関しては多岐にわたるが、ここでは、まず、さまざまな合意形成手法の概念整理を行い、その機能を明確にしたい。 なお、合意形成に関する専門的な検討は、特定非営利活動法人 PI-Forum(ピーアイ・フォーラム)を一読いただきたい。(さまざまな専門家の議論がこのサイトの中で報告されており、 著者自身も加入希望の予定である)

1.合意形成の用語

「パブリックコメント」 国民の声を反映することを目的として行う意見募集
「パブリック・インボルブメント」」 様々な市民やステークホルダーとの関係構築技法
「パブリック・アクセプタンス」 科学技術の受容を社会に求めるときの技法
「パートナーシップ・インキュベーション」 関係者の関係構築支援の技法
「コンセンサス・ビルディング」複数の交渉事項について多数の利害関係者が交渉するプロセスの流れの構築技法
「コンセンサス会議」科学技術利用に関して、陪審制度同様、素人集団を形成し、専門家の意見を聞き、 提案書の作成を行う会議技法
「パブリック・イニシアチブ」 市民による提案・発議
「参加型まちづくり」 ワークショップ等を通じて、都市計画の作成、実現、運営に様々な主体が関わる活動。 実施者毎に異なる名称を付けているケースが多いが、地図、写真、カードとポストイットを組み合わせ、 参加型のワークショップで行う形式が一般的である。


1.合意形成のこれまでの経緯と概況

パブリックコメント・パブリック・インボルブメント
道路整備5カ年計画に国民の声を反映することを目的に1996年より行われた意見募集。
その後、高速道路、幹線道路、コミュニティ道路の計画において実践され、コミュニケーション型国土行政の創造(1999)、 公共事業の説明責任向上行動指針(1999)、道路計画合意形成研究会提言(2001)、市民参加型道路計画プロセスのガイドライン (2002)などの指針やガイドラインが策定され、参加型の社会資本整備や公共事業を推進している。(石川雄章2005)

河川管理
1990年代前半から、利害関係者のカテゴリー化と各々に即した取り扱いを河川管理に導入するため、 住民等の参加方法に関する実験が行われた。特に、東京都を流れる荒川の河川敷の例では、 スポーツでの利用と自然保護に関心を持つ関係者との利害対立があることがわかった。さまざまな試行調査を通じて、河川法の一部改正等、 参加型川づくりの手法が制度化された。

都市計画
都市計画決定においては、意見書の収集や公聴会等の開催が法定されている。また、都市計画マスタープランの策定にあたり、 公聴会等を通じて住民の意見を反映させるための必要な措置を講ずるとされているが、この両者ともあまり機能していない。 それに変わる手法として、「まちづくりワークショップ」が開催され、ワークショップの成果が、まちづくり条例等によって実現される例がある。

公共事業における用地買収
公共事業における用地買収の大部分が任意買収によるものである。「足繁く説明を重ねるとともに、制度の柔軟な運用を通して利害の調整を図る」 ことが、これまでの合意形成とされてきた。しかし、最近では、公共事業計画の初期の入口段階で十分な社会的合意形成を図る代わりに、 出口段階では収用制度も用いて迅速に進めるようにしたいという動きがある。ここ数年、公共事業費の削減傾向が強まり、 地元での社会的合意形成を公共事業の前提として設定されはじめている。

道路整備と交通政策
トランスポート・ディマンド・マネジメントは、交通政策の社会実験である。
車の乗り入れ規制や違法駐車対策の強化、パークアンドライド計画などが実施されている。

コンセンサス・ビルディング
複数の交渉事項について多数の利害関係者(ステークホルダー)が交渉するプロセスの流れを、以下の6つのステップで運営する手法である。
1. 利害関係者を特定し、各関係者の利害や能力、そしてコンセンサスに基づく合意形成の可能性を評価する。
2. コンセンサス・ビルディング・プロセスを実施するかしないかを判断し、わかりやすい目標、規約、作業計画、 スケジュールを設けた上でプロセスを開始する。
3. 共同事実確認(joint fact-finding)を用い、科学技術や事実認識に関係する疑問を解消し、 現実的な代替案の検討作業に利害関係者を集中させる。
4. 利害関係者による審議(deliberation)のプロセスを運営・管理することで、 技術的に適切でかつ政治的にも受け入れられる合意案の発見可能性を最大化する。
5. コンセンサスによる合意を追求する。全員一致の同意が難しい場合はできる限りコンセンサスに近い合意を形成する。
6. 実施段階においても、必要に応じ利害関係者が合意条件を再確認、再検討する機会を設ける。

コンセンサス会議
先端科学技術の利用は、遺伝子組み換え食品の例で見ればわかるように、一定の不確実性が不可避である。 このような科学技術の利用を行うか否かに際して「一定の方法で選ばれた素人のグループを設定し、 そのグループの求めに応じて専門家が応答する機会を設けた上で、当該グループに一定の結論となる文書を作成させる」 社会的合意形成の手法である。

参加型まちづくり
住宅地、公共施設、街路空間、公園、街並み等の都市の計画の作成、その実現及び運営に、住民、 市民を中心に専門家等の様々な主体が関わる活動である。
「まちづくりワークショプ」「まちづくり協議会」、「まちづくり会社」「まちづくり条例」等、 地域特性や関わる専門家等により異なる名称を用いているが、以下の3つの技術が盛り込まれ、それぞれが、詳細な技術をもっている。 (饗庭伸2005)
1)主体間のコミュニケーションの技術
2)他の主体を認識し、社会的な主体として位置付ける技術
3)多くの主体の活動をマネージメントする技術が生まれた。
これらの技術は、緑地の問題、日照権の問題、部落改善の問題などで展開された。

また、まちづくりの仕掛人側から見た政策の立場は、以下の4つに分かれる。(饗庭伸2005)
1)多元主義重視の立場:多元社会を前提に、公共政策の意思決定の過程に対して、 個別のセクターが等しく意見を表明することができる政策立案、評価のプロセスを充実させる立場。
2)代議制重視の立場:地域社会は代議制システムにより代表されるという原則的な考え方に基づき、 コミュニティの意志をくみ取る代議制システム(議会)を充実させる立場。3)自由競争重視の立場:自治体の役割を縮小し、 NPOや市場セクターが競争しながら公共サービスに取り組める環境づくりに専念する立場。
4)協働重視の立場:地域社会の中に戦略的にパートナーを見つけ、パートナーを中心とした「まちづくりシステム」を構築し、 計画の作成から事業の実現までをパートナーと協働で取り組む立場。


3.合意形成の手法とポジション

前項で記載した通り、合意形成の中心は、河川、道路、公共施設の建設、設置に際して利害関係者間の合意を取り付ける手法である。また、 科学技術利用の是非の国民の社会的合意形成のひとつの手法としてのコンセンサス会議も、この範疇で議論されることが多い。唯一の例外は、 参加型まちづくりの技法であるが、これは、都市計画の住民の意向調査の延長線上にあるものから、住民参加、 住民の行政への参画を導き出そうとする試みまで、地域や実施者によって、その内容は多岐にわたる。
この合意形成手法の内、住民の参画をもとめる参加型まちづくりの手法の一部を除いては、決定された公共事業、ないしは、 利用を前提とした科学技術に関して、地権者、利害関係者の合意、または、国民の社会的合意を形成しようとする取り組みである。
アセスメントの実施や、公聴会、アンケート調査と結果報告なども、同様の範疇にはいる部分がある。
この手法の限界は、計画策定後に合意を取り付けることにある。このため、合意の前提として、高額な補償が準備されている点も、 補償の対象者と非対象者間でのトラブルの源になっているのもこの特徴の一つである。
しかしながら、公共事業により、地球温暖化対策や、農山村の荒廃、里地里山の保全が図れないことは自明であるが、これに変わる措置は、 法律による義務づけか、国民の主体的な意思に基づく活動を促進する方法がある。この両輪で行なうことができれば、即効性を期待できるが、 ここでは、国民の主体的な意思に基づく活動を促進する方法の検討を、行うこととした。

図14 合意形成手法の比較
図 5 合意形成の手法とポジショニング

図5の合意形成の手法とポジションは、上記の合意形成手法の位置を示したものである。個々人の活動は、利己的な個々人の活動ととらえ、 縦軸である「国民の主体性-公共政策」の国民側に、横軸である「公的活動-私的活動」では、私的活動側に位置づけた。この私的活動を、 公的な活動に転換させる方法として、「地元学」の実施を位置づけた。この実施により、地域共同体の活動方針を定め、その活動への、 行政側の一部支援により、公的な活動を主体的に実施するしくみをめざしている。

一方、これまでの合意形成(パブリックインボルブメント等)は、行政側から住民、地権者、国民側へ、公共政策の実施を前提に、 政策の実施に関わる利害関係者を特定し、その利害関係者との意見交換を行う形で行われてきた交渉手続の手法である。
しかしながら、構造改革が進み、財政削減が深刻に議論されはじめたことから、利害関係者との事前の合意が、 公共事業の実施の前提条件とする動きが一部現れている。
この事前の合意形成や、質の高い公共事業、次世代への社会の継承を前提とした社会的合意形成は、筆者がもっとも強く望むところであるが、 これからの公共事業が、地域毎の見直しを前提として、地域共同体の意思に基づく主体的な施策を自治体がくみあげ、行政が、 新たな公共事業の枠組みを設け実施するしくみ、例えば、地域共同体と自治体、県、国との協働公益事業というような形で実施できれば、 公共事業は、住民による「事前の包括的な合意」のもとに、計画から実施まで、迅速かつ少ない予算での実施が可能となる。

この手法は、公共事業等の素案段階で、地域共同体において、地元学等のワークショップを実施し、 地域共同体における包括的な方針を前提として、公共事業を協働公益活動として位置づけ、住民と共に実施する方式である。
この手法の具体的なしくみは、第3章の逆システム学の考察の後、第4章にて詳しくふれることとする。


4.地元学による合意形成事例
以下は、各地の地元学による合意形成と協働公益活動の概要図である。

新潟県佐渡市野浦地区における協働公益活動と地元学
佐渡市野浦地区は、世帯数40戸、住民160人の本土に面した急峻な地形の集落である。かつて、 トキがエサ場とした標高200m~400m地帯の棚田や沢と、眼前に広がる日本海に面した半農半漁の集落である。兼業農家が中心で、 専業農家は数戸のみである。この地域共同体は、かつて、地味な集落と言われていたが、 伝統芸能である文弥人形の一座を立ち上げたことを機会に、島内で有数な活性化した地域として評価された地域共同体である。 それがあった上でのこの野浦地区の地元学の特徴は、以下の点にある。まず、住民全員が、地域調査に参画したこと。そこから、 自分自身と地域の関わりを再確認して、各個人でできることを、無理なく、個人作業、ないしは、協働作業として実施しはじめたことにある。 この手法に自信をもった、野浦区は、公民館活動として、4つの常任委員会を設置し、常時、地域を見つめ直す委員会、 外部との交流を進める委員会、トキのエサ場や産品開発を行う委員会、芸能活動を推進する委員会を立ち上げ、今日に至っている。 この明確な地域ビジョンに対して、行政は、野浦区の特徴にあった事業を、行政と地区との協働事業として位置づけ実施し始めている。 (実施年度:1999年)

図8 集落の方向 野浦地区

図 6 地元学による合意形成(事例1 野浦地区)

新潟県佐渡市久知河内地区における協働公益活動と地元学
野浦区のある本土に面した前浜海岸から600mの小佐渡の山を越えた反対側、両津港側にある久知河内集落は、 久知川に面する全戸の先祖が僧侶という集落である。この集落の戸数は、27戸約100人の小さな共同体である。 この共同体の中心を流れる久知川では、10年ほど前からホタルが発生し始めた。 このホタル保護してホタルの里として地域づくりをおこなってきた集落であるが、高齢化が進み、空き屋と高齢者対策が課題であった。
この集落では、野浦の例を見た新潟県より、地域ビジョンの策定の依頼を受けた。これまでの行政主導のビジョンではない、 住民自身によるビジョン作成のコーディネートを頼まれたため快諾した事業である。この集落でも同様に、地元学を全戸参加で実施した。 その結果わかったことは、住民自身の課題は、高齢化と戸数の減少である。一方、ホタルの発生により、多くの観察者が、 地区を訪れることの喜びを知ったこの地区では、この2つの課題に先がけて、久知川に魚道を設置し、 鮭が集落の上に上がってこれるようなビジョンを作成し、住民自身でできることをまず行なうという方針を固めた。このビジョン作成は、新潟県、 佐渡市(当時、両津市)の職員が事務局を担っていたため、住民、公民館、佐渡市、新潟県のそれぞれできることをお互い分担し、 2005年より、15ある堰に下流より順次魚道を設置する方針が固め現在工事に着手している。この計画の後、環境省、農林水産省、林野庁、 国土交通省、新潟県、佐渡市等で計画を策定していたトキの野生復帰ビジョンにもこの内容が反映している。ひとつの事前の包括的な合意形成が、 形となった例である。(実施年度:2002年)

図9 集落の方向 久知河内
図 7 地元学による合意形成(事例2 久知河内地区)

新潟県佐渡市城腰地区における協働公益活動と地元学
その翌年の2003年、隣接する城腰地区において、同様に、新潟県からの依頼に基づいてビジョン策定を行った。世帯数は、 25戸住民100名程のもと城下町だった小さな集落である。この集落でも、同様の地元学を実施し、「暗い感情」(玉井袈裟男1980) と四面会議法(岡田憲夫・杉万俊夫・平塚伸治・河原利和2000)によって、計画づくりを実施した。暗い感情は、高齢者対策、 独居老人への介護と空き屋対策、そして、希望は、外部との交流で活気だった街なみだった。この集落では、空いている蔵に不要な民具、 農具を集め、蔵を民芸館として改修し、そこで健康茶を出すこととなった。健康茶の開発は、婦人会が行い、開発されたお茶は、 高齢者間の交流をかねて老人会が出し、外部からの交流者をもてなす。また、交流者のために、ガイドマップを作成し、 この蔵で配布するという計画である。ガイドマップの制作は、交流をかねてデザイン学校の学生を誘致し、デザイン画を作成してもらい、 マップの仕上げを行ってもらった。この事業でできた「こいっちゃ城腰マップ」は、 新潟県の観光部局や佐渡汽船等で地域紹介として活用されている。(実施年度:2003年)


図10 集落の方向 城腰
図 8 地元学による合意形成(事例3 城腰地区)

愛知県美浜町における協働公益活動と地元学
美浜町は、知多半島の中腹、伊勢湾と三河湾の両方に接する砂浜と里山の町である。防風林として保護されてきた里山は、開発されず、 無数に点在する溜池と共に残されてきた。この町の布土地区で、まちづくり協議会を中心とした地元学を実施した。参加したのは、 協議会の幹部メンバーと友人知人の30名程度と役場職員10名、 外部からは地元学を提唱した吉本哲郎氏をはじめとする専門家数名での実施である。調査結果は、全員が、地域の風土や自然環境を把握したこと。 その内容を伝えるフォーラムをキノコ狩りハイキングと報告会という形式で実施し、800人の集落から300人が集まった。 名古屋への往復とスポーツ等が中心だったこの美浜町の住民は、里地里山活動や地域の足下を見つめ直す活動を開始した。実施後、 炭焼活動と里山保全が始まり、2005年全国里山シンポジウムが、美浜町で行われた。この間、町民の森づくりをはじめとして、町政では、 里山と、健康、安全安心な農産物の販売拠点などの整備が行われた。これも、地域共同体と連携した協働公益活動の一種である。 (実施年度1998年)

図11 集落の方向 美浜町
図 9 地元学による合意形成(事例4 美浜町)

神奈川県城山町小松城北地区における協働公益活動と地元学
城山町での取り組みは、神奈川県環境農政部が所管する「里山づくりモデル事業」の実施地域である。この協働公益事業では、 県と城山町が事務局となり、地域共同体、及び、地域団体が中心となり活動方針を作成し、県のモデル事業としての里山整備活動を開始した。 2004年、同メンバー30名が地元学調査を行い、その結果を元に、里山を守る会と事務局にて、整備方針を固め、県と市は、 資材費と人力を出し、地域団体は、保全作業を実施した。この協働公益活動は、神奈川県と城山町としては、地域共同体との協働事業、 住民主体の公共事業構築のモデルケースである。(実施年度2004年度)

新潟県佐渡市では、野浦地区、久知河内地区、城腰地区をはじめとして、月布施地区、片野尾地区、小学校区の5集落など、 さまざまな地元学と計画策定、及び、保全活動を実施してきた。それぞれの活動は、いずれも振りかえれば、 行政と地域共同体との協働公益活動である。この内、県や市が主体となり、また、私がアドバイザーとして、参加した事例が、 新潟県の3事例と次頁の城山町である。愛知県美浜町は、私がはじめての地元学を実施した地域で、その後、 ことある毎に活動のフォローを行っている。この他、地元学、計画作成、行政と地域共同体の協働公益活動は、秋田県二ツ井町、岩手県湯田町、 山形県戸沢村、福井県武生市等で実施している。また、地元学の実施のみでは、三重県の自治会館組合(市町村職員研修で、 2000年より毎年8地域程度で実施)が、最多で、その他、数十カ所での実施例もある。

図13 集落の方向 城山町
図 10 地元学による合意形成(事例5 小松城北地区)

第3章 逆システム学と協働公益活動 (協働公益活動の合意形成及び逆システム学による検証)

第3章 逆システム学と協働公益活動

1.逆システム学とは

「逆システム学」(金子勝・児玉龍彦 2004)とは、新たな現象の本質に迫る方法論である。諸科学の現象の本質に迫る方法論は、 これまでの二つの相対立する立場があったが、これに変わるものとして、同書で紹介されている。
これまでの二つの立場は、言うまでもなく「要素還元論」(本質的な要素を抽出し、個別の要素から理論を組み立てる方法論)と「全体論」 (個々の要素を規定する本質的な構造を規定し、理論を組み立てる方法論)である。
この二つの立場で説明できないさまざまな現象に関して、逆システム学では、明快な方法論を示している。特に、本稿では、 地域共同体における事前の合意形成と環境政策の構築を論旨とするため、生命科学と市場経済用語の引用は極力避け、 諸科学に共通する事象として解説されている部分を中心に逆システム学の骨子を引用させていただくこととした。

対象となる現象
これまでの要素還元論や全体論では、「要素が増えるにつれて増大する」「たくさんの要素からなる複雑なしくみを取り扱う場合には、 個別の要素から理論を組み立てる方法論」では、「羅列的にならべるだけでは、膨大な情報に途方にくれ」、また、 「ひとつの要素が異なる二つの反応を起こすような場合の説明がこれまでの方法論ではできなかった」。
逆システム学は、「個と全体を結ぶ中間領域にある制限、調節制御のしくみに注目した。そして、そのしくみは、〈制御の束〉と 〈多重フィードバック〉によってできていると規定した。むしろこの中間的な領域にこそ、 市場経済や生命体の本質が宿っていると考えたのである。 実際多重フィードバックがこわれてしまうと市場経済も生命体も維持することができないからだ」

現象の把握の仕方
「逆システム学の「逆」は、演繹的にシステムを定義するのとは異なる立場を意味している。つまり、 それは制度の束が持つ調整制御の多重フィードバックを帰納的に実証することによって、生命体や市場経済の全体像を明らかにする方法である。・ ・・さらに、・・・変化や進化という動態(歴史)の内的プロセスを明らかにできる。」

調査のポイント
「さまざまな実験や、経済政策の結果から、いかなる制御系が働いているかを明らかにしようという考え方」に立ち「いつ、どこで、 調節制御が働くか、調節制御のしくみができてくると、調整によって環境変化に適応できる範囲がひろがる」。つまり、調節制御のしくみは、 時々刻々と進化している生命科学や市場経済のしくみを対象とすることができる。

要素還元論と全体論の解析方法
「経済学の領域では、個人や個別の企業が自己利益を追求するだけで、市場経済が自動調整的に均衡に達するモデルとして一般均衡論が完成し、 セントラルドグマとなった。」このような現象と結果が、対応するようなケースで要素還元論や全体論が機能していたことになる。このことは、 「「利己的な遺伝子」が、自分の利益や満足度を最大化しようと活動することで、競争市場が自動調節的に均衡に達する。 市場経済の自律性を根拠に、普遍的なモデルとして適用されてきた。」というように、要素還元論や全体論は、 あくまで解析可能な現象と到達結果を示す方法論であり、非市場的な諸制度の検討に役立つ方法論ではない。

非市場的な諸制度の取り扱い
この市場経済の「モデルから排除された非市場的な諸制度が、複雑な相互作用を保ちつつ市場経済を制御している」。「逆システム学は、 人間や社会が本質的に抱える複雑さを解明し、現実に有効な治療法の開発や経済政策の樹立のために生まれた方法」である。
この非市場的なしくみは、セーフティーネットという概念で紹介されてきているが、「セーフティーネットがないと、 調節制御系がこわれて市場経済は機能が麻痺」する。つまり、市場は、 セーフティーネットによって支えられているために機能できているという考え方である。このセーフティーネットは、生命科学においても、 市場経済においても現在複雑に張り巡らされ、むしろ、進化した生命や成熟した社会は、 このセーフティーネットのしくみが大半をしめていると言及している。

生命科学における解析方法
「遺伝子全体の活性化の様子などを系統的に解析すると、どの制御系が働いているか比較的簡単に推測できるのである。このように調節制御と、 その重なりを解析していく実験手法を逆システム学という。いわば観察可能な複雑な対象に、モデルやシュミレーションををするのではなく、 なんらかの介入をし、それを経時的に「いつ」、場所特定的に「どこで」に注目しながら観察していくのである。そこから、 実際に重要な役割をはたしている制御系を明らかにしてゆく。全体はわからないかもしれないが、 どのような治療法が有効かの予測の制度を大きく上げている。」

2.地元学による地域共同体への介入と逆システム学による解析方法の比較
上記の生命科学における解析方法は、私が、各地の地域共同体で、地元学を企画し(地域への介入)、実施中、及び、実施後に、いつ、どこで、 誰が、どのような行動や発言を行うのか、その反応はどの方向を向き、何を求めているのか、または、 何を阻止しようとしている発言や行動なのかを観察してきたこれまでの手法と酷似している。実際、 地元学によるたび重なる地域共同体への介入により、地域共同体及びその周囲を取り囲むさまざまな人的、物的環境要素から、「反応の束」 としての、「「制御のしくみ」が明らかになり、地域共同体の症状を確認することができる。どこの誰が制御系として機能し、または、 どの集団が、センサーの役割を果たし、誰が、またはどのような集団が、制御系として機能するのか。どのような背景で制御が働くのか、また、 その制御系の反応の束は、どのような形で現れるのか。地域共同体ごとに異なる反応の束は、一見複雑に見えても、地域づくりの仕掛けを 「地域への介入」と見立て、その後のフォローを「観察」と見立てる基本的な態度から、その特徴を把握できる点が、地域共同体における 「逆システム学」と考えた所以である。

 
図4 地元学

3.生命科学における調節制御のしくみ

「調節制御の基本的なしくみは、信号をとらえるセンサー(感知器)と、信号を伝える伝達系と、遺伝子を動かす制御系(制御蛋白) からなっている。この調節制御による多重フィードバックは、階層的構造をとる。それは市場経済でも変わらない。 フィードバックが破綻するのは、このセンサー、伝達系、制御系のいずれかの働きが適切でないことによる。そして、 セーフティーネットを必要とするもっとも弱いところから、フィードバックがこわれていく。」
「多重フィードバックは、すべての動物における制御の基本なのである。」
「薬でもっとも効果的に人間に作用するのは、実は人間の受容体、センサー蛋白に結合して、調節系を動かすものであることがわかってきた。」
「細胞は、他の細胞と接触したりホルモンを受けて安定化しているのである」
このように生物は、信号をとらえ、信号を伝え、調節制御が働くことで、生命体の維持ができてきた。このしくみは、 市場経済と市場外経済を支えるセーフティーネットのしくみとして、紹介されている。この3つの働きがこわれてしまっている事例として、 以下の3つが紹介されている。

4.フィードバックがこわれている事例1

欧米では、数年で処理が終わっている不良債権処理に関して、10年たっても処理の終わらない原因は、センサー(公民会計士、 銀行経営者、金融庁のモニター)、伝達系(政治家、金融庁)、制御系(議会、政府)のそれぞれが、機能していないことを指摘している。

フィードバックがこわれている事例2
年金制度を取り上げ、被保険者の保険料がこげついているにも関わらず情報のセンサであるべき政治家や官僚たちが情報を隠し、 責任を回避するために、議会も政府も機能がこわれてしまっているからだと指摘している。

フィードバックがこわれている事例3
「フィードバックがこわれている第三の事例は、公共事業政策だ。・・・大規模公共事業は、 維持費と借入金ばかりを残して地方財政をも悪化させている。・・・今や、中山間地の集落崩壊に始まって、 シャッター商店街や大都市の超高層ビルに建設に見られるように、町や村自体が崩壊を始めている。・・・こうした状況を克服するためには、 ここでも多重なフィードバックを再生させてやらなければならない。・・・それが地方分権化である。権限と税財源を地方に移譲し、 伝達系を短縮して住民の一番近いところでセンサーと制御系を機能させ、政治的な回路を通じたフィードバックを回復してやるのだ。 それによって、住民ニーズに合った小さな公共事業を実施し、空洞化が進む町や村を環境・福祉融合型のまちづくりで再建するのである。・・・ 新たに地域経済の自立的循環というフィードバック・ループを作ることを意味する。」

「地元学による地域共同体への介入との比較」の項目でも示したが、このセンサー、伝達、制御のしくみを、 地域共同体の中に適用してみると、さまざまな事象が、多重フィードバックであることがわかった。本稿では、この多重フィードバックの再生と、 再生した集落での環境政策等の導入方法を、次章で考察する。

 図5 利己的な遺伝子

図 12 利己的な遺伝子と反応の束

[2006年02月04日 レポート]

第4章 協働公益活動の創出 (協働公益活動の合意形成及び逆システム学による検証)

第4章 協働公益活動の創出

1.多重フィードバックと制御系が地域共同体に果たす役割

多重フィードバックの段階
地域共同体の環境政策の検討の場や、地域の活性化のための寄り合い等に参加する機会は、仕事柄、年に何十度もあるが、 このような話し合いの場では、共通するいくつかの「反応の束」がある。それらの反応の束から、 以下の基本的な地域共同体の立場や成熟段階を判断することができる。
(1) 個人、集落の収益につながるか否かの検討を行う段階
(2) 集落の今を再確認しようとする段階
(3) 本質的な課題をさけ、一過性の事案として処理しようとする段階
(4) 本質的な問題の共有を行うために、共同体全戸の総会等での報告等を必要とする段階
(5) 多様な価値観を認め、事前の包括的な集落合意がる事項に関しては、個々人の活動を尊重して批判せず許容する段階

ある事案が、議案に上がったとする。その事案に対する反応は、非常に多様で、個々人によっても、地域共同体によっても、 いくつかの方向に分かれたその反応の束は、束毎の強弱や方向性が異なるのが特徴である。しかし、おおむね、この多重フィードバックは、 その結果から、原因を追及すると、地域共同体が見落としていた特徴が現れてくる。その反応の束に耳を傾けることは、 地域の個性や特徴の理解につながることになる。

越えられない本質的な問題の壁
ある事案の検討中、(4)の作業を経ていれば、集落活動を前向きに進める働きを、 参加者のいずれかが調整役となり地域共同体の意思として決定することができる。
しかし、(4)の過程を経ていないと、議論は、さまざまな方向へ転位し、収集がつかない状況に陥る。この状態は、個々人が、 地域共同体の全体の課題を把握していないために、個人の利害や、部分的な情報を元に議論するため、不毛な議論として終わることになる。 せっかくの調整役の提案の趣旨も理解されない。このような現象は、参加者間で、 集落の過去から今に対する現状認識の共有ができていないために生ずる現象である。このため調整役の調整案を、 一つの提案や意見として受け取め、耳を貸さずに、結果として会合は一過性の事案として扱う(3)の妥協で終了することになる。
ここで把握しておかなければならないことは、この多重フィードバックと制御系という、集落の一致した合意形成を行うためには、 その基盤となる、集落の過去から今を参加者全員が把握していることが重要である。この現状認識が共有されていてこそ、 多重フィードバックが意味を生み、制御系の働きに、参加者が共感することができる。


2.公共政策に果たす地域社会(個の集団)の役割の重要性

公共政策への希薄な国民意識

私は、各地の環境政策の推進のために地域社会に入ることが多いが、この度に痛感するのは、公共政策の浸透度合いは、 経済に置き換えられたときに、はじめて全体に波及し浸透するということだ。例えば、温暖化対策の広報は、方向性を示す提案であるが、 この提案が機能するのは、石油の市場価格が上昇した段階で、誰でも燃料を節減しようとするため、設定温度を調整したり、 我慢のレベルが一歩上昇することになる。この段階で、冷暖房の温度は、政府公報の暖房20度、冷房28度が着実に守られ、さらにいえば、 暖房18度、冷房ではなく除湿の設定にすることぐらいは、どの家庭でも実施してしまうことである。さらに、より積極的な人は、 屋上緑化や薪ストーブの導入の検討を行うようになる。
メディアもその基調をとらえ、もっと節約するには、というような特集を組むことになる。このような国民の意識と動向は、 地域共同体や個人に経済的なメリットを受けない場合の例で見ると、施策や施設を受入るか否かは、 自分と地域共同体が直接の関わる必要のない事項としてとらえ、他人の趣味の範疇のような形で聞いているケースが多い。だから無関心であり、 自分や地域共同体と関係のないところで行われるなら問題はないが、 自分自身や地域共同体に降りかかる事案は終始拒否するか無関心無関係な態度を表すことになる。
経済以外にも、企業向けの環境基準や、資格制度の基準、学校教育の中での単位など、何らかの社会システムの中の基準や強制措置、 罰則等がないと、日本では、環境意識や倫理、道徳に頼っていたのでは公共政策への協力が得られにくいのが現実である。

個人と地域共同体の価値感とパラダイムの転換
一方、地域社会に目を向けると、個々のバラバラな意識とは別に、地域共同体として公共政策を受け入れるケースがある。 集落の合意形成に基づく地域社会への浸透度は、集落の維持管理を行っているという自治の意識とコミュニティーがあるからこそ実現できている。
 この場合、地域特性と集落における個々人の関心事、集落全体の課題や問題点を集落住民自身が把握した上で、 その半歩先の解決策の一つとしての公共政策の実施(導入、普及啓発等)を行うことが理想である。かならずしもこのような場合のみではないが、 双方の半歩先にメリットを感じれば、合意が可能であり、かつ、永続性が保たれ、政策の効果があがりやすい。
 個々人の関心事の抽出や、集落の課題、問題点の把握を怠り、本質的な議論を怠ると、施策は上滑りする。言い換えれば、 施策の集落への浸透や、継続は、集落の自治意識という基盤の上に、各自の関心や、集落の課題、問題点を掲げ、半歩前進する形で、調整役 (制御系)が、機能するメカニズムである。
 一方、市街地においては、個々人の暮らしと、地域自治との連動はほとんどなく、地域社会や組織への帰属意識を前提としていないため、 地域共同体のようなしくみで、事前の包括的な合意形成を得ることは不可能か、非常に困難である。但し、市街地では、 コンセンサス会議のように、陪審制度を模範とした任意に抽出された素人集団の合意を、社会的合意形成とみなし進める方法や、 市民団体や地域団体の幹部等との合意形成手法を用いた、社会的な合意により、十分であるという見方もある。しかし、ここで最も重要なことは、 環境政策等の実施を地域住民全員で、ないしは、国民全体で推進するには、何らかの、実感、 その施策に参加する基本的な内発的な動機づけがないと、浸透しにくいことである。
シートベルトの罰則制度や運転中の携帯電話の利用は、罰則と厳しい取り締まり措置により徹底されたが、 冷暖房の無駄遣いによる温暖化というような地球全体の課題に対しては、罰則がない。また、 未来の世代の生存を危うくするような化学物質の利用や漁獲資源を減少させるような工事への規制がないのも日本社会の現実である。
 これらの自体に対して、市民、地域共同体が自らできる防衛策や、環境政策を推進する側が、まず、考えておいた方が良いことは、 足下を見つめ直すことである。各地域社会において、昔ながらの区会とは異なる、新たな地域共同体が機能するような、 地域の見直し作業を行っている場で、効果的な環境政策を繰り返し、その成果を元に、将来に向けて、 全体化するための法的な措置を構築することが一見遠回りなようで、比較的短い時間で達成可能なパラダイムの転換方法である。


3.公的主体としての「制御系」の意義と役割の考察

崩壊集落の農地、山林と自然災害
地域社会の維持機能が低下する中で、特に、農村の棚田や農地の管理は、かつては、農業生産行為の範疇にあったが、昨今は、 生産性が低く経済的な採算が合わないために耕作放棄が進み、放棄による農地のひび割れ等を原因とする土砂崩れや、 森林の管理不足による地滑りなどが各地で発生している。また、山の維持管理を行わなくなったことからくる鳥獣被害、 ヤマビル被害などが拡大し、山林、農地、集落の維持に、新たな公的な役割が、うまれはじめている。
崩壊集落における土砂災害は、風雨による自然災害や地震によるものであるが、鉄道や道路がこれにより閉鎖されれば、集落内の問題から、 社会的な事態へと転換し、被害の影響や危険から重要性が増し、原因である放置されていることの危険がこの段階ではじめて明確になる。
かつては、個々人の家とその周囲の山は、地権者である集落構成員の管理地だったが、集落崩壊に向かう段階の集落では、過疎化や高齢化により、 農地、山林の維持管理は、行われなくなる。農地は、この段階で自然環境等と同様、公的な管理や予防の必要性が生まれはじめる。

公的主体としての集落組織とNPO
平成12年誕生した「中山間地の直接支払制度」では、集落協定に基づき、一定規模の農地を5年間継続管理することを前提に、 補助金をつける制度が生まれた。また、新たに、平成19年度からは、環境に配慮した水田には、 中山間地の条件を取り外した環境支払いが行われることとなった。農業生産とは異なる農地の維持管理は、あらたな環境保全活動として、 食糧生産とは異なる補助金が創設されたわけである。この主体になるのは、これまでは、 農家自身が農業生産を営むことに対する補助金であったが、環境支払は、集落営農組織、ないし、自治組織等が主体となり、 これまでの農業政策と根本的に異なる点である。
一方、耕作放棄している農地に関して、行政、NPO等は、地権者に対して、耕作の要請を行い、できない場合には、 NPO等への農地の貸与を義務づけている。これは、農家に変わる管理主体として、NPO等が、 農地の管理という環境管理を担当したことになる。
また、NPO及び地域組織に対する公的な役割が、さまざまな分野で拡大していることも、これまでと異なる公的主体の誕生を裏付けている。
 市街地では、同様に、さまざまなNPOやボランティア団体が誕生している。まちづくり協議会や、まちづくり株式会社、 公園管理のサークルなども、住民自治の側面から、環境政策や福祉政策を担う公的主体の役割をはたし始めている。

新たな公共事業の萌芽
 新潟県では、平成13年度より、毎年、20程度の県内の字単位の集落を対象に、集落計画の作成を公募し、 県と市町村職員が各集落事に全部局より1名づつでて、事務局を編成し、集落ビジョンの作成とビジョンに即した公共事業を行っている。
 高知県では、平成15年度より、県職員60人前後を、各市町村に1名前後、割り振り、ふるさと応援隊として、 担当地区の集落に張り付いた支援活動を行っている。
 神奈川県では、平成16年度より、県環境農政部と市町村が連携して、里山集落の自治会、または、NPOと連携した、 里山と農地の活性化を進めている。
 また、環境省では、平成13年より市民企業政策提言フォーラムを開催し、市民、企業等からの政策の提言を、 環境政策の中に取り込むよう事業を進めている。
このように、かつての公共政策、公共事業は、道路や港湾の建設のように、行政が行うことを前提とした事業であったが、 今日の公共事業と公的な役割は、小さな政府、小さな予算をめざしている側面もあり、自治組織、NPO等との連携、 協働を前提とした事業の創出に向けて年々期待が高まってきている。


4.集落における制御系とは何か

集落会合の基本的なスタンスとスタンスを変えるコーディネーターの役割
集落計画を、地域共同体の構成員と共にたてる際に、良く経験することだが、それぞれの個人が、どのような立場で、 どのような立脚点の上にたった発言をするか、または、発言はせずに、抑制するかを見ることは、地域性を見る上で非常に興味深い点である。 特に、任意の協力を促すような場合の反応は明確である。
(1) 集落での経済的メリットがない場合は理解をしめさない: 実施不可
(2) 理念がわかれば調整を試みる: 部分実施からの試行的な導入
(3) 一部の理解者が理解を示すが調整されないまま会議は終了:集落としては不可 
(4) 調整会議の開催: 理解層を増やし協力を得るため再度会議を設定:条件付実施

特に、私の場合は、地域共同体に、生物多様性の保全、自然環境の保全、保護や地域資源を活用した地域のづくり、 3Rの域内推進や景観の保全、不法投棄の予防等を要請するケースが多い。このような要請の場合、要請に応じたとしても、 集落や個人には現時点での直接的な経済的なメリットはなく、長期的な視野で、地域の活力が増したり、集落内の美化や生物多様性の増加、 こどもの育つ環境は向上するが、一方で、住民の日常的な作業や協働が必要となるため個人や地域共同体に負担がかることとなる。 市街地における暮らしのように、労力を出さずに、行政に依存する暮らし、お金との交換で暮らしを要望するタイプの生活の場合は、この要請は、 理解されないどころか、非難の対象となる。
 このような状況の中で、どのような集落でも、一定の制御が働く。その制御とは、人体における制御系と同じように、 さまざまな主体からの反応が、束となって現れてくる。この多重フィードバックと制御系の意味は、 集落におけるさまざまな個の多様な反応があってはじめて、制御系が働いてくる。言い換えれば、利害を代表する長の意見は、 集落を構成する個の意見の集約ではなく、病理でいえば、一部の表面化した疾病であり、その意見への対処は、 これまでの要素還元論的な処方であり、もし、共同体のメンバー全員が発言したとすれば、その背景や方向性に対して収集が付かない状況、 すなわち、要素が増えるに従って分析が困難になる複雑な要素と反応への対処が必要となり、会議の継続(会議の場での検討や解析) が困難になる。しかし、逆システム学の思考に立てば、反応の束と制御系の役割ととらえ、その反応の束の方向を、適正な制御の方向へ戻す、 ないしは、制御の方向を変えることにより、環境政策を浸透させる方向へ処置を行えば、生命体の病気が改善してゆくように、自然治癒的に、 共同体は、環境配慮に向けて、成長してゆくこととなる。

これまで、地域社会は、個人又は地域共同体への直接的な利益調整を、行政との会合(合意形成)と捉え、 経済的な側面から高齢者の男性を中心に、公共施策の調整を行なってきた。しかし、自然と調和した持続的な社会、 少ない予算で効果的な公共政策が期待されているため、利権の誘導をともなわない公共政策が必要だ。ここでの問題は、どの地域も、 これまでの地域社会の会合が、予算や補償の裏付けがあって行われてきているものが多いため、地域社会の将来を考えるような本質的、 根本的なテーマの会合を受容する機運がないことだ。この点から、集落の会合に行政マンが行くと、これまでと同様のペースで、「・・・で、 内容はわかった。で、どういうメリットがあるのか説明してくれ」といういつもの論調で、内容の理解はさておき、経済的なメリットの有無、 大小で、事業や提案を受けるか否かの議論に終始することになる。
これが基本的な集落のスタンスであるが、この戦後養われたスタンス(遺伝子とでもいうべきか)を変えるのは、 新たな価値観を確固たる態度でもった行政マンやコーディネータの手腕にかかることになる。もっとも、2007年以降は、 農村の環境配慮への新たな直接支払制度等の新設により、汗をかくことからはじめる事業が広まることにより、徐々に、 新しい予算制度が出そろうことで、予算メニューの変遷を示し、半歩前に進める地域共同体が、さまざまな施策を始める機運が高まる。 このことで、地域共同体の構造は、半歩前進し、多少なりとも変化することを期待したい。


5.地域共同体における制御系の働き

集落における制御の束とは、コーディネーターや調整役のことではない。個々人のさまざまな意見、 集落の過去から現在までの実情を認識した上で、暗黙の内に、出席者に見えてきた、マイナスの方向と、プラスの方向、 「このままでは誰もがいけない」と感じたことと、その反応として、「行わなければいけない」という誰もが自覚した内容である。 集落の全員が認知したとすれば、暗黙の規範に近い存在ともなろうし、会合に参加していない人にも、伝わりやすい内容である。 集落の実情を掘り下げたとき、将来に向かって放置できない現状と言ってもいい。どの集落にも集団にも、 認識しておかなければいけない過去から現在までの経緯や経過がある。そして、特に、集落においては、 取るべき対応を取っていない集落が多いために、この制御の束は、集落の過去から今を見つめ直したとき機能する集落の自律的な働きである。

制御系はどの方向に機能するか
自律的な制御系は、一定の方向を示しながら、特定の力学を生む力ではない。自律的な制御系は、 個々人の過去から現在までの生きてきた経緯や経過、集落の過去から現在までの集大成の結果、働く力である。集落の中で、 今を生きる個と共同体に関わる個や集団、そのそれぞれの個と集団が、暗黙裏に了解され、または、 ワークショップ等によって浮き彫りになった集落像をもとに、その大きな方向に反しない、それぞれの活動が、集落によって容認されてゆく。 言い換えれば、制御系とは、一定方向への肯定的な反応であり、逆戻りを許さない、一定方向への水や風の流れのようなものである。 その流れに反する活動が、集落では行いがたくなる。制御系とは、個人や地域共同体を存続させようとする、生命力のようなものである。

6.制御系の構築方法

市街地における制御系の働き方
人体の病理は、常に、症状として顕在化する。しかし今の社会システムの場合は、動脈硬化を起こしていても、症状を認識するシステムも、 警告するシステムが麻痺している。ひとつひとつの集落を見つめたときに、活力ある集落であって欲しいと願うのは、 その集落を守る高齢者だけではなく、新たな世代の若者の中にもいる。
市街地の場合は、病理を検知するシステムは、これまでは行政が担当していた。ライフラインや救急医療、交通、食糧、など、 これまでの社会では、自治会が担当してきた部分が大きいが、市街化の影響で、自治会は機能を弱め、 個々人が関与するケースはいくつかの例外を除き皆無に近づいた。しかし、阪神淡路震災をはじめとする全国各地の地震や、 ナホトカ号をはじめとする重油災害、台風や津波による自然災害では、行政のしくみだけでは、十分な機能を果たせず、市民活動、 ボランティア活動が行政を補完する新たなシステムとして機能した。現在は、このサブシステムを組み込んだ新たな公共政策、 公的活動が展開されるようになった。市街地の場合、行政システムを補完することで、個々人の意識や、個々の敷地内での出来事を別とすれば、 地域社会の表層は、活性化し、まちづくりは、機能していると評価されている。

集落における制御系の働き方
一方、集落の場合、個の集団としての地域共同体が、地域社会の維持管理を行っているために、市街地と異なり個々人の参画が不可欠である。 行政の関与は、最低限であり、また、NPO等の支援も、日常的に農的作業を行っている集落住民の技術力や効率的な作業方法には、 遠く及ばない。しかし、集落住民だけでは、刺激がなく、また、新たな風や情報、人が入らなければ、集落の中に変化が起こらず、 活力は生まれない。
制御系が前向きに機能するためには、地域共同体の中に風を送り込み、その機能を発揮させる方法がある。これまで、 さまざまなワークショップや地域づくり講座が行われてきたが、十分な成果を上げ地域共同体を変えた取り組みは、数少ないように思える。
さまざま取り組みの中で、集落に活力を与え、持続的な力を発揮している取り組みには、いくつかの共通点がある。
・ 集落を構成する個の多くが参加、または、参加する機会が十分ある
・ 集落の過去から今が、参加者がわかる方法で確認されている
・ 集落住民、行政、学校、関連する組織やNPOとの情報が共有されている
・ 地域住民の意識、参加者全員の意識や考えを、わかりやすく表現できる技法や人がいる
・ 集落を半歩前に誘導するコーディネーターのあとおしがある
などである。
活性化の事例として私が着眼している事例は、風土舎の哲学や「暗い感情」(玉井袈裟男1980) をバネとして婦人会を中心に集落の課題を解決していった取り組みの中にある。風土舎は、長野県内のほぼ全域で活動実績があり、特に、 飯田市の上久方風土舎や、小川の庄のおやき村など、さまざまな事例がある。

この制御系は、集落で暮らす個々人を、互いに相手を尊重し、全体を尊重することから始まる。しかしながら、過去数十年、 集落内においても、個々の家や行事の参加は、高齢者に限られ、壮年層、若年層、こどもたちが関与するケースがなくなってきている。 高齢者が先人から継承してきた智恵や技術、文化はもとより、水の経路、林の管理や境、水利なども同様である。また、食品を買う生活が浸透し、 集落内で自生ないし繁殖させたような山菜類や、薬草、果樹などの活用もしなくなってきている。

もうひとつの大きな成果は、水俣を再生した吉本哲郎の地元学である。水俣市内32地区のコミュニケーションを活性化し、 環境再生を行った方法論を後にふりかえり地元に学地元学と命名した方法の体系である。

[2006年02月04日 レポート]

参考文献 協働公益活動の合意形成及び逆システム学による検証

主要参考文献

金子勝・児玉龍彦(2004):逆システム学,岩波新書
篠原一(2004):市民の政治学―討議デモクラシーとは何か-,岩波新書
吉本哲郎(1995):わたしの地元学,NECクリエイテイブ
吉本哲郎(2001):地域から変わる日本- 地元学とは何か-,農山漁村文化協会,増刊現代農業2001年5月
嘉田由紀子(2002):環境社会学,岩波書店
宮本常一(1993):民俗学の旅,講談社学術文庫
玉井袈裟男(1980):自己発見の技術,農山漁村文化協会
岡田憲夫・杉万俊夫・平塚伸治・河原利和(2000):地域からの挑戦 -- 鳥取県・智頭町の「くに」おこし, 岩波ブックレット
細野助博(2003):実践コミュニティビジネス,中央大学出版部,共著竹田純一他
サステナブルデザイン研究会(2002):2100年未来の街への旅―自然循環型社会とは何か?-,学習研究社, 共著竹田純一他
非営利特定活動法人PI-Forum・石川雄章・石田東生・城山英明・饗庭伸・ローレンス・E・サスカインド・松浦正浩・ 竹迫和代他(2005):PI-Forum Vol. 1 (2). Summer, 2005,PI-Forum
饗庭伸(2003):参加型まちづくりの方法の発展史と防災復興まちづくりへの展開可能性,総合都市研究第80号, pp.90-102
饗庭伸(2004):まちづくり条例とガバナンスのシステム形成,地域開発,第477 号,pp.28?33, 日本地域開発センター
世田谷まちづくりセンター・千代田まちづくりサポート会議他(2004):走れ!まちづくりエンジン,ぎょうせい
里地ネットワーク(1999):テキスト里地―人と人 人と自然のの共生をめざす人へ―,里地文庫
里地ネットワーク(2003):持続可能な里地里山を定義する,里地文庫
環境省(2001):NGO環境政策提言集,地球環境パートナーシッププラザ(オフィス)
農林水産省(2002):人と自然が織りなす里地環境づくり,財団法人水と緑の惑星保全機構
環境省(2004):里地里山―古くて新しい一番近くにある自然―,環境省自然環境局計画課

 

[2006年02月04日 レポート]

ポルトガルへの旅 ユーラシア大陸で一番遠くて一番近い国

冬休みを利用して、日本に多大な影響を与えたポルトガルを見てきました。

日本から一番遠い、ユーラシア大陸の西端の国。しかし、地図を見ればすぐにわかることですが、日本と同緯度で、海に飛び出している国。 海洋国で、魚やタコを食べる文化の国。イワシの塩焼きや魚を開いて干す文化を持つ国。
欧州と言うよりも、アフリカ大陸に一番近い国。
460年前、大航海時代から始まる日本とポルトガルとの交流。
日本古来の文化と考えてきた、さまざまな文化を、一瞬うたがいたくなるほど、身近だった言葉が、ポルトガル語に由来することがわかりました。 ポルトガルは、日本から遠くて、とても近い国でした。

カステラ、カルメラ、コンペイトウ、ココア、パン、ピーマン、ボーロ、テンプラ
カッパ、ボタン、ショール、サラサ(更紗)、ジュバン(襦袢)、メリヤス、ラシャ(羅紗)
オルガン、カルタ、カンテラ、コップ、タバコ、チャルメラ、シャボン、ジョーロ、フラスコ、ブランコ、ベランダ
そして、おんぶ もポルトガルに由来する言葉です。

日本の中のポルトガル探しができるように、ポルトガルの中の日本をしたところ、扇子が見つかりました。
世界遺産登録されている歴史的な修道院や教会で、展示、販売されていました。ポルトガルをもっと調べると、きっと、 たくさんの日本が見つかるのではないかと思いました。

欧州と日本を比較するとき、普通は、英国とドイツと日本を比較します。しかしながら、地形や風土の類似性を考えると、むしろ、 ポルトガルとの比較の方に興味を覚えます。何故だろう? それが、この旅の始まりでした。そして、 日本はが失っている何かが見つかればいいと思い、ポルトガルの今を見つめに行きました。

「ここに地終わり、海はじまる」 欧州最西端のロタ岬には、この言葉が碑に刻まれています。ユーラシア大陸の地は、ここで終わり、 地球を半周して、ユーラシア大陸の東端、かつては、大陸の一部だった日本列島の東端、千葉県犬吠埼に、「ここに海終わり、地始まる」 という碑が立てられているそうです。

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大航海時代の航海士  ユーラシア大陸の最西端のロタ岬。海の始まりは、深く、神秘的な海でした。

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ポルトガルの街並み。かつての水道橋が残された街。冬のポルトガルは雨期。一日に数度、少量の雨が降る。雨と晴れの合間から、 その都度、太陽は、虹を描き出す。

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古い街並み。壁は煉瓦や石で建築され、屋根は、木を組み、日本と同じ瓦がはられていた。

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修道院の中の炊事場。外部の川から、暗渠を通り、厨房に入ってくる。この水の流れの中に入ってきた魚は、ここに入り逃げ場を失う。
厨房の煙突は、このサイズの大きさで、数十メートル修道院の天井を突き抜けている。

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海辺の世界遺産の街。屋根は全て、煉瓦色をしている。

 

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トラクターの後を追う鳥たち。トラクターの後は、エサが見つけやすいのだろう。
小さな空間で区切られた日本のふるさとのような土地利用。

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国土は、日本の違い、100%活用されているようだ。荒れた林がなく、完全なローテーションが組まれ、林の管理が行われている。 写真は、成長の早いユーカリが、植えられている地域も多い。

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日本と違い、非常に大きな緯度。たくさんの井戸を見たがいずれもこの大型の円形の井戸だった。

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犬は放し飼い。気をつけて歩かないと犬の糞が固まって落ちている。スーパーでは、食用の犬の肉が、毛をそいだ状態で、 ターキーのように販売していた。アジアだけと思った食用の文化があることを始めていった。
イワシの塩焼料理とパンの料理。

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タコのおじや。日本のおじやに非常に似ている。スーパーでは、魚貝類がたくさん売られていた、なかでも、塩タラは、 どのスーパーでも販売されていた。

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ポルトガルの路面電車。

ポルトガルの詳しい情報は、こちらにおもしろいサイトがありました。良かったらのぞいて見てはいかがですか。
ポルトガルの情報が満載されているサイト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[2006年02月02日 竹田の公開メモ]

新・森里川海の自然再生のコンセプト(案)

第2回 森里川海フォーラム(コンセプト開発会議)
テーマ 「つながりの解明と自然再生運動の構築」
日時:2005年12月16日 13時~17時
会場:神谷町 日本環境協会 大会議室
主催:自然再生を推進する市民団体連絡会
共催:地球環境パートナーシッププラザ、森づくりフォーラム、里地ネットワーク、全国水環境交流会、海辺つくり研究会
内容:森里川海のコアメンバーより、これまでの経過報告と、各分野数名をゲストに招いてのフレーム議論を行う。

参加者は、以下の通りです。★他の参加者の名前を教えてください。★

参加者
・森 :渋沢寿一、原島幹典、清藤奈津子、
・里 :吉本哲郎、竹田純一、牧下圭貴、小関緑、
・川 :山道省三、福永泰久、飯田幸一、石月升、田中栄二
・海 :木村尚、古川恵太、他
・市民:佐藤年雄、伊藤博隆、佐藤寿延、岩下友也、

上記メンバー、及び、関係機関からの参加者を含め、25名でコンセプト開発会議を行った。福永泰久氏のプレゼンテーションの後、 順次発言いただいた結果を、事務局(竹田純一)にて、以下の通りまとめさせていただいた。
会議要旨のまとめにあたっては、コンセプトが明確になるように、参加者の発言を、要素毎に分解させていただき、整理し直させていただいた。 このため、あえて発言者名は記していない。

本コンセプト会議の目的

1.自然再生の概念を整理し、森里川海の連携型の自然再生の手法を構築する
2.4団体のネットワークを通じて、構築した手法を、現場活動団体に浸透させる
3.4団体の協働モデル事業の創出により、血の通った自然再生事業を試行する
4.上記試行錯誤を、自然再生活動推進法改定の際の参考資料と位置づける


自然再生のコンセプト


1.森里川海フォーラムがめざす「自然再生」 の概念

自然再生は、どこかの時点に戻すと考えるのではなく、こんな姿にしたいという希望、夢を皆で共有することが重要だろう。 戻ることではない。
戻すというと自然公園のようにしないと戻せなくなってしまった。
昔に戻れではないが、失ったものは何かを、知っておく必要がある。
50年、100年かけて失ったものは、同じ年月をかけて取り戻さねばならない。
山村は劇的に変わった。昭和30から45年頃、石油依存で、社会が変わった時期に、自然の概念が日本人にとって変わってしまった。
日本の自然と社会の関係は、分けて考えるからおかしくなる。
自然は、Natureを訳して明治に作られた言葉。
欧米の考えを踏襲して議論しているからおかしくなる。
日本は自然と社会が一緒だった。
住んでいる人が住んでいるところのことを知らないことが多い。
暮らしを見つめ直すとどうなうか、ひとつの事例をあげれば、
宮崎県で地元学の結果おこったことは
役場の職員が自転車で村をまわるようになった
認定農業者の会の者が「子どもたち