第3回コウノトリ未来・国際かいぎ
「人と自然が共生する持続可能な地域づくり」
平成17年9月24日・25日 主催:兵庫県・豊岡市
第 1回コウノトリ未来・国際かいぎは、1994年の開催。第2回は、2000年。
この第2回国際かいぎの後、佐渡では、トキの「共生と循環の地域社会づくりモデル事業(佐渡地域)」が始まりました。この第2回、
第3回の会議に参加して、改めて、トキの野生復帰に向けたさまざまな取り組みや、保護増殖活動が、
コウノトリの成功から多くの事柄を学び続けていることを改めて痛感したシンポジウムでした。
佐藤春夫先生が、佐渡で、トキの保護活動を開始した頃から、苦節50年の歳月を経て、
豊岡では、9月24日午後2時30分放鳥式典が行われました。5羽のコウノトリは、見事にはばたき、
放鳥会場であるコウノトリ郷公園に集まった地元小学生、農家や住民の方々、専門家、3000人越える人々に深い感動を与えました。
コウノトリを驚かさないように、押さえた静かな心のどよめきが聞こえた瞬間でした。
そして、この日から、野生生物を再導入した時点から、新たな地域づくりとモニタリング、そして、
その検証活動が始まりました。その重要な第一歩の日です。
佐渡でも、この日は、数年後に訪れます。そして、その前に行うべきことを、しっかり行っておきたいと思う一日でもありました。
再導入の一日は、その日以前と、その日以降を大きく分ける一 日です。その内容を、以下のさまざまな方々からの、
講演から感じていただければ幸いです。
本件は、竹田純一が会議に参加して特に、トキとの関係で印象に残った部分を書き記したメモをおこしたものです。正確な記録は、後日、
コウノトリ市民研究所等で発行された場合は、こちらにその所在を改めて、記載いたしますが、トキとの関係の、参考資料という扱いで、
ご覧いただければ幸いです。
(シンポジウムの内容全体は網羅していませんので、ご注意ください。特に、25日の分科会は、第1分科会の一部のみの記載です。)
第3回コウノトリ未来・国際かいぎ
■増井光子園長よりの経過報告
「コウノトリの保護増殖の現状と未来」
◇個人的な感想
増井園長からこれまでの経過報告をお聞きした。概要は以下の通りだが、改めて、放鳥式典の日に、この50年の歩みを振りかえることは、
さまざまな人々の苦労の歴史を蘇らせると同時に、さまざまな資料の確認をさせていただくことができた。
◆増井光子園長のお話(トキとの関係で関心を持った部分のメモ)
1955年、50年前に、保護、増殖活動を開始。苦節24年の後、ロシアから若いコウノトリ6羽ををいただき、順調に保護増殖が進み、
現在128羽になった。1992年に、野生復帰に向けた将来構想の作成を行い、2002年からは、試験放鳥に向けた訓練を開始した。
試験放鳥期間は5年。放鳥方法は、ハードリリース、ソフトリリースがある。
ガイドライン計画の修正
野生復帰の手順は、国際自然保護連盟/種の保存委員会(IUCN/SSC)の「再導入」専門家グループ(RSG)
が作成した政策ガイドラインに従って行なった。
しかし、生物量の推定や調査には、かつての生物量等の資料がないため限界があった。
このような中、2002年に飛来し現在まで、郷公園にとどまっている、オスのコウノトリ(ハチゴロウ)から、
野生下での実証的なデータが数多く得られ役立っている。
IUCNの科学的な再導入ガイドラインにある項目の説明
詳細は、ガイドライン抄録が配布された。抄録は、以下の資料である。
「エイリアン・スピシーズ」P243~P253「資料1 IUCN/SSC「再導入」のためのガイドライン(抄訳)」
平田剛士著 緑風出版1999年
また、合わせて、これまで、コウノトリの野生復帰に向けて、保護増殖以外の活動報告を簡単にいただいた。資料等には、 以下の項目が記載されている。
A.転作水田ビオトープ、魚道の設置(30カ所)、生態系保全型水路
B.ブランドづくり。兵庫安心ブランド(県)、コウノトリの贈り物(JA)、コウノトリ米(市)
C.円山川水系の自然再生計画、人工湿地の整備
D.ボランティアの要請、コウノトリの追跡、資料収集
E.環境教育の推進
F.普及啓発の実施、推進協議会による普及等
■基調講演「よみがえれ野生のいのち」
山階鳥類研究所 山岸哲所長
◇コウノトリ野生復帰の課題をお聞きした。この基調講演は、トキの野生復帰を考える上で、さまざまな示唆が含まれている。今後、 トキを野生に帰す際には、新ためて、佐渡島民の前で、今後のコウノトリの動向もふまえて、お話して頂く必要がある内容だと確信しました。
◆山岸所長のお話
1.コウノトリとトキの共通点
・野生減少してから、保護しても増殖できなかった。
・ロシア、中国から来た若い鳥により増殖が成功した。
2.野生生物保護の問題点
・研究者が自分の研修種(患者に例えて)を、保護増殖事業(という病院に例えて)にいれたいという主張は駄目。
・誰が見ても入院という絶滅寸前の状態で入院させるため、その時点では、、既に野生には、元気な鳥がおらず、野生復帰の訓練等ができても、
野生下で教えてくれる鳥がいな
・目標数値が不明瞭。どの段階で「絶滅危惧から解除できるか」その目標設定が必要
3.地域固有種の保護
・今後、どのようにその種を保護していくか、というようなさまざまな議論が、全国各地で起こるであろうが、固有種の種の保存ではなく、
種の住んでいる地域の生息環境を保護することが大事。
里地ネットワークでは、地域固有の生活文化、自然環境調査を、調査の基本、地域づくりの原点として捕らえていますが、 野生生物保護の側面から見ても、このことは、間違えのないと確信しました。しかし、同時に、小佐渡東部地域においても、 まだ活動を始めていない多くの地域があります。これから、一つ一つの地域への対応が同時に必要だと実感しました。
■基調報告2「エコロジーだけが経済を救う」
フランツ・アルト(ドイツ・ジャーナリスト)
◇エネルギーに関する非常にショッキングな、しかし、とてもわかりやすいお話と、私達の向かう方向、 未来の考え方に関するお話を聞きました。
◆ジャーナリストであるフランツさんが、「今日を報道」するとしたならば、どのような話題を提供するかというお話で始まりました。 「今日の報道」には、4つのテーマがあげられました。
1.今日もまた、他の一日と同じように、100種類の動植物が絶滅しました。動植物は、
ひとつの種が誕生するために24,000年の歳月が必要ですが、1日で100種以上の種が、毎日絶滅してゆきます。
2.今日もまた、他の一日と同じように、3万haが砂漠化してしまいました。
3.今日もまた、他の一日と同じように、8000万トンの肥沃な土が風化により喪失し、同時に、25万人の人間が増えました。
4.今日もまた、他の一日と同じように、1億トンの温室効果ガスを放出しました。
50万年かけて地球が作ってきたエネルギーを、1日で燃やしています。
これらは国連の数字です。この問題をどう克服するのか、国連では討論しています。
そして、未来予測と私達の歩むべく方向に関して、以下の方向を示唆頂きました。
1.30年から40年で石油はなくなります。今から10年で普通では買えない価格になり、大きな経済問題を抱えることになります。
2.シェル石油のシナリオでは、10年以内に、石油の利用料は、80%減少し、他のエネルギー利用も減少、再生可能エネルギーのみ上昇する。
3.トヨタ自動車は、プリウスを越えて、2010年にゼロエミッションカーの導入を考えている。
4.石油の利用は、気候を変動させ、自然災害を増加させています。この石油の利用を越えて、新しい社会像が求めれれています。
さて、この「エコロジーだけが経済を救う」というテーマからも、各地でこれまで行ってきた地域の見直し作業、
地域資源を活用した地域づくりの流れを、今にまして加速させ、2010年を起点に、到達目標を設定する必要があると痛感しました。
皆様の地域ではいかがですか。上記二つの提言を真摯に受け止めて頂きたいと思います
。
写真は、24日の分科会1 「コウノトリの野生復帰を検証する」
池田さんの紹介を聞く、山科鳥類研究山岸所長と増井園長。
■評価 日本獣医畜産大学 羽山伸一助教授
コウノトリをはじめとする野生絶滅種等に関して、獣医師の立場から、羽山伸一さんより真摯な指摘がありました。
その概要は以下のような内容でした。
・飼育繁殖、再導入しなければならない動物が増えてゆく
・野性に帰した動物が生き続けるということは期待できない
・グアム島では、600羽の鳥を野生に帰したが、全て死んでいる
・再導入は、動物を通じて、生息地の環境を評価してもらう取り組み
・この死を無駄にしないためには、どうして死んだのか、その原因を究明し、
二度と同じことを繰り返さないように自然を再生してゆく必要がある。
■評価 山階鳥類研究所 山岸所長
コウノトリは、たくさん増えるのではないかと、カリフォルニアコンドルのキャサリンさんのお話を聞いて思いました。コウノトリが増えたら、
生息地を回復して、コウノトリを供給してゆけばいい。例えば、武生とか、我孫子とか、
良い地域を作って公募するような取り組みも今後必要になる。
という、希望に満ちたお話もいただきました。
以上は、非常に関心をもった項目です。竹田純一は、第一分科会「コウノトリの野生復帰を検証する」に参加しましたが、第二分科会は、 「生き物と共生する農業」。 第三分科会は「環境と経済が共鳴するまちづくり」。 第四分科会は「世界へ、未来へ、次世代へ」 コウノトリ子ども会議」でした。守山弘先生、稲葉先生、岩淵さん、呉地さんは、第二分科会。 ケビンショートさんは、 第4部会にでていました。
このシンポジウムの市民交流会では、高野山でお会いした俳優であり、野鳥の会会長の柳生さん、
農と食の研究所宇根さん、日本大学の糸長先生をはじめ、数十人の方と交流を図ることができました。
さすがコウノトリの贈り物だと最後まで感銘を受けた国際会議でした。(尚、海外からの報告、特に、
韓国のコウノトリの野生復帰計画と韓国の親環境農業に関しては、別途、報告を行います)
参考までに、コウノトリのサイトは以下をご覧ください。
2005年09月27日 [レポート]




