韓国の里地里山を旅する(2)

生き物、植物、地形との出会い

韓国の延世大学文化研究団に招かれて国際学術会議への参加と、会議の前後、時間のあいまを見て韓国の農村を訪ねました。 学術会議での私の役割は、農村開発と地域の活性化の方向性、エコビレッジ、生物多様性の保全の方策を日本の事例から紹介することでした。 ドイツからは生態学の概念を、韓国内からは、建築、音楽、芸術から見た農村開発の方向性などが報告、議論されました。 学術会議の報告は言語の問題で、正確に理解できなかったため、訪韓の際に見た地元学的な報告のみ紹介させていただきます。

IMG_1172  IMG_1234

写真は、慶尚北道の 英陽郡の英陽邑です。(YoungYaung)
トウガラシの産地で、低地は水田、畑はトウガラシがめだちます。
畑ではちょうどトウガラシの花が咲いていました。

IMG_1281  IMG_1298

韓国は水が少ないというわりには、7月の降雨期だけあり、豊かな水量がありました。水源では、 サンショウウオがどこでもいるほどきれいですが、集落の下流は、水の濁りがめだちます。浄化槽が普及していないためです。 下流に行くほど水の濁りは、急激にひどくなります。

IMG_1247  IMG_1231

 写 真は、源流域です。サンショウウオをたくさん見ることができます。
サンショウウオの研究者である長谷川巌先生にお聞きしたところ、このサンショウウオは、朝鮮山椒魚です。文献資料では、 止水で産卵と記載されていますが、水量が安定していれば山の流水でも産卵し、生育するようです。
写真の地点は、標高300m程の農村、周囲の山は、600~1000m程。湧水の源流地から、サンショウウオが生息しているのは、 下流にむけて、300mまででした。水温は、16.5度。この地点から、500m程下ると、水温は20度を超えて、カワムツ、 ウグイの生息地に変わりました。

IMG_1262  IMG_1273

「この朝鮮山椒魚は、中国北東部から朝鮮半島・済州島まで分布しています。日本のカスミサンショウウオと同じ仲間です。陸続きのとき、 朝鮮から対馬に渡り日本各地で小型山椒魚18種に分化がすすみました。ヒダサンショウウオよりカスミサンショウウオに近い種です。 もっと近いのはツシマサンショウウオです。この種の解説は止水性ですが、湧水のあるところやまったくの渓流でも産卵します。」(長谷川先生)

IMG_1284  IMG_1246

韓国の地形は、岩盤が凹凸を繰りかえしているような地形です。凸起の上に、松が、岩の上に張り付くように生えています。 このため木は大きくなれず、松の低木が岩山を覆っています。逆に、日本の里山のような荒廃地は少ないように見受けられました。 (現地調査は行っていませんので外見からの感覚です)。

視察の途中、湧水がありました。日本と同様、清浄な水、ミネラルを含んだ湧水は、健康の源として評価され、大きなタンクを複数もって、 水くみの人が集まっていました。韓国では、都市の人々はほとんど飲料水を購入しているようです。しかし、ソウル周辺の山のわき水にも、 サンショウウオがいると聞いたために、水のきれいさとサンショウウオの関係が、わからなくなりました。
湧水は、きれいではないのか?との質問に、韓国語の通訳をしていただいたユン先生から、南北紛争との関係で山には、何が落下、 放置されているかわからないため、飲まない方が良いといわれています。このため水が日本の都市と同様、よく売れています。

IMG_1198   IMG_1215

農家を数件見せてもらいました。韓国の家は、どこも平屋です。強固な柱と梁が目立ちます。カマド、味噌樽、牛舎など、 日本に共通するものと、形が多少違うものなどさまざまです。残念ながら、庶民の民家を見る時間はありませんでしたが、次回訪韓する際には、 庶民の民家と都市周辺の湧水地を回ろうと決めています。

IMG_1341   IMG_1333

食文化は、素材が近いことから何を食べても違和感がなく、何食たべても飽きないごちそうでした。その一方で、 その違いにも驚かされました。似て非なる国。日本に一番近く、文化、顔形、背丈も類似している韓国と日本の違いを、建築物の形状、食、 河川水路などで、改めて実感しました。

IMG_1243   IMG_1237

食の中で驚いたことのひとつは、巻貝(カワニナ)を食べることです。カワニナのみそ汁を一度だけごちそうになりましたが、 茶碗の半分くらいカワニナが入っていました。貝からひとつひとつむき出し煮てあります。この作業も大変そうです。淡水の貝ですので、 ドジョウを食べるような泥臭さが残っています。それにしても心配だったのは、ホタルの里で、カワニナをとっても減らないのかという点でした。 ソウルの市場でもカワニナが並んでいたことから、韓国では、カワニナが生息しやすい河川水路が多いのでしょう。
日本の地形との違いは、ややきつめの丘陵の連続であり、渓流を作り出すような山岳地帯が少ないことです。このため、 適度に富栄養化した緩やかな流れの水路に、カワニナが大量に生息していることです。この点、次回の訪問の際に確認してみたい点です。

今 回訪問した英陽郡のホタルの生息地では、カワニナの禁漁区をもうけホタルの保護を行っている地区もありました。この地区で、 生き物のふれあいの里、昆虫の森、水辺のふれあいのできるエコビレッジを作ろうと、英陽郡の行政の方々は、検討を始めています。 今回の訪韓を通して感じたのは、韓国の都市に住む人々の意識と行動形式、農村に住む人々の意識と関心を把握しなければ、 具体的な意見や提案が出せないことでした。

IMG_1200   IMG_1305

今後、日本の里地里山づくり同様、韓国ではこれまで行ってこなかった、新たな農村政策を考えていくようですが、 地域に根ざした取り組みとなることを期待しています。私自身も、機会があればまた訪問したいと考えています。何か良い情報があれば、 皆様からもお送りいただければ、私から、文化研究団にお届けしますので、ご連絡ください。

今回の訪問は、延世大学文化研究団の皆様と英陽郡、英陽ホタル保存会の皆様の案内で、ことばの壁を乗り越えて、 農村を回ることができたことを、この場でお礼を申し上げます。

IMG_1177  IMG_1309


特に、文化研究団研究所長、ドイツ語教授のキム博士、ユン先生には深くお礼申し上げます。

 

2005年08月01日 [レポート]

Copyright 2005 里地ネットワーク
 Powered by Movable Type 3.36