韓国の里地里山を旅する(1)

農村政策の転換と地方自治、里地里山(エコビレッジ)への期待-訪韓を前に-

韓国ソウル市にある延世大学文化研究団では、5年前より韓国の全ての祭りの調査を行い書籍にまとめ出版した。 この祭りの調査のきっかけは、韓国における地域経済の活性化のため、全国各地で祭りが開催されたことだった。 さまざまな町で都市生活者や離村者との交流を狙った活性化イベントである。

国民の4分の1が首都ソウルに住む韓国では、都市の経済は強いが、農村の経済は、都市に依存している。 日本よりもこの傾向は強くしかも短期間に移行したためこの傾向は著しい。10年前に始まった地方自治への移行政策は、韓国の歴史上では、 過去に数度の移行政策は行われたが、今回の移行は、首都の移転を含め根幹的な取り組みにつながりそうだ。今回の地方自治への転換政策の中で、 中央政府に依拠しない財政収入の道を模索しはじめており、先進諸国の取り組みに関する調査も同時に進められている。

韓国では、祭りは、単なるイベントではなく、地域資源を祭りの形で表現し都市にアピールする。 新たなる関係を都市との間で構築するための市場調査のようなものである。この結果開催される祭りは、住民側の意欲や地域資源の豊かさ、 地域産品、地域文化の反映度など、さまざまな視点から智恵や手法が競われている。地域をどこまで深く見つめ直し、 新たな形に表現できるかが問われているようだ。

訪韓の数日前、大阪ガスの広報誌CELが届いた。 「ソーシャル・キャピタル」がテーマだった。ソーシャル・キャピタルとは、「地域コミュニティーにおける信頼関係やネットワークの密度」 と説いている(山内直人)。また、内閣府は「つきあい・交流」「信頼」「社会資本」に関する12の指標をもとに都道府県別のソーシャル・ キャピタル指数を試算した。

日本でも、韓国でも、地域の中の関係性の深さが地域再生の鍵となる。日本での地域の個性に応じた地域づくりへの分岐点は、 政府レベルでは、ふるさと創成事業あたりが、中央集権と地方自治の分かれ目だった。かれこれ15年。魅力を高めた地域がある一方、 停滞する地域も多い。その違いは、ソーシャル・キャピタルの違いだと解説している(山内直人)。わかりやすくひとことで言えば、 相互扶助や結いの関係性である。また、地域資源、地域の生活文化の掘り起こしの程度と住民参加のレベルが、地域づくりに問われている。

延世大学文化研究団のこの調査は評価され話題を呼んだ。 この評価が、平成17年7月中旬私が、訪韓することになった国際学術大会へとつながった。延世大学文化研究団は、 延世大学文学部棟に事務局を置く、ヨーロッパ文化研究所に属す文化と言語の研究家(助教授と講師)のグループである。韓国の祭りの調査は、 各国の研究者が当該国の祭りと韓国の祭りを比較しながら、分析した点が興味深い。この研究者25名と助手、 韓国のNGOと英陽郡の行政担当者、NGO等が参加した国際学術会議に参加する。

韓国では、今、日本同様に、地域再生や都市と農村の共生対流、特区制度が話題を呼んでいる。 ソウル市から東南東へ200キロの距離にある慶尚北道英陽郡も、その内の一つである。 韓国の中ではもっとも自然が豊かなこの村の人口は2万1000人余。石川県とほぼ同緯度、 朝鮮半島東岸の海岸線から30キロ程山間部に入った村である。周囲の最高峰は1500m、里地の標高は300m。 韓国のかつての姿を残した農村である。

英陽郡の位置は、 (韓国map4(安東・大邱など慶尚北道中心)がわかりやすい地図でした。この地図の右上の四角いメッシュの中央部分) に英陽郡はあります。この地域の概要は以下の通りである。

【英陽郡の概要】(日本語のホームページがあります。但し、 韓国語のページを翻訳ソフトをかけて見ると、非常に豊富な情報が記載されているのに驚かされます。関心のある方は、 右上のKoreanアイコンでご覧ください。)以下は、これらの情報、サイト内に投稿されていた報道資料を基に情報を整理したものである。

東経129度、北緯36度40分
総面積(815.11km2)、田(6.9%/56.18km2)水田(2.6%/21.72)、垈地(0.5%/3.73)、林野 (85.8%/699.20)その他 (4.2%/34.28)

総世帯数:8,389戸(農家4,109/非農家4,280)
総人口 :22,172人(男10,998/女11,174)

行政区域:1邑 5面, 1出張所(114個里, 483班, 275自然集落)
財政規模:929億ウォン(一般:844, 特別:85) 
地方議員:郡議員 7名, 道議員 2名
学校:28ヵ校(幼稚園 10, 小学校 10, 中学校 5, 高等学校 3)
文化財:40点 (国宝 1, 宝物 2, 天然記念物 2, 重要民俗資料 1, その他 34)

【地域特区制度】
韓国の地域特区制度は、日本と同様、政府の財政支援はないが土地・教育・農業などと係わる各種規制を解き、 地方自治体が地域特性に相応しい開発ができるようにする制度だ。英陽郡では、生態村、昆虫村などを造成して観光地として発展できるように、 農地法、道路法など5個の法令の規制を緩和し、農地を賃貸、委託営農が事実上できるようにする。
【整備予算の規模】
2010年まで、既に投入された110億ウォンを含んで総200億ウォンを投入し、生態村・昆虫村などを造成する。

【整備計画の概要案】
プログラムの開発
・祭りを年間行事として開催する
・昆虫を飼育して観光客などに販売する
・草原の火入れ体験場
・農家で飼育したニワトリと鴨等を合法的に直接屠畜して体験客たちにプレゼント

景観農業地域の造成
・農産品の販売と農外所得の拡大をめざす
・清涼な水で栽培する農産物の特別地域を造成し販売する
・鴨農法とテントウムシ(天道虫等)生物農薬を利用して害虫を防除する親環境農業
・青蘖里畑、菜の花等の凉しい見どころを造る
・クラインガルテン
・ホタルの保護増殖施設
・ホタルの棲息地保全のために棚田の造成を行う
・はさみむしなど昆虫飼育施設
・はさみむしと長寿かなぶんなど昆虫がたくさん棲息できる環境づくり

施設の設置
・生態公園(2万8655平米)
・生態学校(延べ面積 853平米) 青少年研修施設
・天文台, 温室、
・伝統わらぶきとまる太の小屋、円頭幕、
・オンドル、食べ物体験室、精米所、売り場

つづく

2005年08月01日 [レポート]

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