四賀村クラインガルテン(現在:長野県松本市四賀)
2005年8月。久しぶりに長野県四賀村にある坊主山クラインガルテンを訪れました。
里地ネットワークを設立する5年前に関わっていた事業ですので、はじめて四賀村を訪れたのは、もうかれこれ、15年前になります。
このクラインガルテンの特徴は、箱モノとしての建設ではなく、構想の策定(坊主山クラインガルテン構想)から、モデルラウベ(作業小屋)の設置、
ガルテナー(賃借人)の募集を、ムラと街、街人と村人が結びつくように、シナリオを考えながら、実践し、さまざまな交流の定着を確認しながら、
順次ラウベが建設されたことにあります。
都市と農村の交流
建設初年度は、ラウベの大きさ、庭、畑の大きさ、土づくりの課題や作付けカレンダー、農業指導のレベル等を探るため、
ラウベは3棟のみ建設されました。現在の坊主山クラインガルテンの1号棟から3号棟までが、当初のラウベの原型です。私は、
モニタリングのためのモルモットガルテナーを行わせていただいた関係上、栄えある第1号棟の入居者となり、
日本ではほとんどなじみのなかった滞在型クラインガルテンのあり方を考えさせていただきました。
ガルテナーの利用形態を正確に把握するため、私も単身ではなく、当時5才だった長男と1才だった長女、妻の4人で、または、同僚達や、 有機農産物の宅配会員達と一緒に、東京と四賀村を、2 ヶ月に3度程度の割合、2年間で30回程通いながら、四賀村の方々との交流を、 仕事として(?)率先して楽しみながら、コンセプトの検討を行いました。振りかえればついこのあいだのことのようです。
それから12年間、四賀村は、クラインガルテンのある村として確固たる礎を築いてこられたことを、今回の滞在で実感しました。 その足跡を私は以下の点で深く感じました。
★美しさに磨きをかけているラウベ
1号棟の建設から13年たったクラインガルテンは、歳月と共に、土が肥沃になるように、古いガルテンほど、落ち着きのある豊かな風情、
景観を生み出していました。すべてのガルテンから、その住まい手の土や水に対する心使いが伝わってくるような感銘を受けました。
★ 小さいからこそ行き届いた庭づくり
日常生活では土にふれあう機会が少ないガルテナーは、大きすぎず小さすぎない広さを、確実に楽しんでいるように見えました。
広すぎないからこそ荒れていない、土にふれあう頻度と面積の関係は、2週間に1度程度、1回の滞在で数日間滞在し作業することを、
当初義務づけていましたので、それ以上に、土が好きで、草花や野菜に触れていることが、ガルテンからわかります。小さなガルテンでも、
この継続ができてはじめて管理できる空間です。
★クラインガルテンの広さと活用の多様性
一つのラウベは、100坪。そのうち20坪程度が建物とその外縁、30坪の芝と30坪の畑が、当初設けた基準でした。
この芝の部分を花壇に変えると、畑30坪、花壇15坪、芝15坪のよううな空間に変わります。芝を畑のように使う人、
全面ハーブガーデンのように使う人、一面に数種類のみの季節の作物を植える人、ひとりひとりが、その人流の個性を生み出しています。中には、
観賞用のガルテンという表札を付けて、ご自由に見てくださいとアピールするガルテンもありました。
このクラインガルテンの中で、当初一番感銘を受けたのは、当時村長だった中島学さんが考案した田舎の親戚制度です。私は、 最初の1年間1号棟にいましたが、この1号棟に隣接して1軒の農家がありました。この農家のおじいさんが、 私達にとっての田舎の親戚のおじさんでした。この関係を、村長さんは、1棟のラウベに、1世帯の村の親戚を結びつけようと考えました。今、 思い返しても、そのような指令を出せるほどの人望ある篤い人だったことが伺えます。(親戚制度は行おうとしても住民の協力なしにはできません)
2年目は、新たな基準を設け、ややラウベの面積を広くし、土づくりがしやすいように、表土を極力削らない農園を作りました。
現在の4号棟から21号棟までのラウベが完成し、私は、一番眺めのいい、余り訪問しなくても荒れているのが目立ちにくい(!?)
奥の角にある15号棟に引っ越しました。この引っ越しを機に、モニタリング担当から普通のガルテナーとして関わりながら、
村と街の交流のヒントを探る仕事を引き続き担当しました。
当時、農村と都市との交流の仕掛けで、私自身が関心をもっていたのは、山梨県の清里で行われているキープ協会の収穫祭でした。
創設者のポールラッシュの精神を受け継ぐ祭として、また、環境教育の草分けとして、さまざまなプログラムが用意されていました。
私もあのような祭りを行いたいと思い、クラインガルテンの小さな収穫祭、
「DAIKON-RUN」を企画しました。作物の収穫に感謝するガルテナーと田舎の親戚の手作りの祭です。この収穫祭は、
今年も10月に行われます。また、4月の有機栽培講習会、5月の山菜採りツアー、7月の夕涼み会、9月の土づくり講習会など、
定期的な農作業の講習会やガルテナー同士の交流が進み、熱い交流が生まれています。
緑が丘クラインガルテンの設置
坊主山には、最終的に、53棟のラウベとセンターハウス、倉庫が建ち、ゲストラウベも1棟設けられました。
このクラインガルテンの交流の楽しさが、村内に広がり、坊主山から3キロほど離れた集落の中に、
クラインガルテンを設ける構想が持ち上がりました。現在78棟が、集落の中程に建設された事業です。2005年には、センターハウスも完成し、
17年からは、週末型のレストラン東山もオープンしました。
緑が丘のゲストラウベ
緑が丘のクラインガルテンは、虚空蔵山の山麓にあります。県道沿いには、4棟、集落の中央に74棟が建っています。
このラウベ全てに入居者がいるため、私は、ゲスト用に設けられた、畑の付いていない山林の中のラウベに宿泊しました。ブナ、ナラ、赤松、
杉の入り交じる混交林の中のラウベです。山林入会権付きラウベと行った方が適切かもしれません。
松茸以外の山菜をラウベ周辺で収穫できるのが特徴です。貸し出しは、誰にでも自由にと言うわけではないかもしれませんんが、緑が丘のラウベは、
1泊1棟12,000円。坊主山は、畑付きの小さめのラウベで、5,000円です。金額の違いは、建物の設備の違いです。
煙突付きのラウベ
緑が丘の特徴は、山林の保全を目的としている点です。このため、各ラウベに薪ストーブをガルテナー自身が設置し、薪の確保を通じて、
山林の手入れを進めます。各ラウベには、薪ストーブを置く煉瓦の空間と煙突が設備されています。薪ストーブの着火は、四賀村一帯の植生である松
(葉)が最高で、葉を燃やし小枝に火をつけ薪を燃やす都会では、あこがれる暮らしを手に入れています。(但し、ゲストラウベには、
薪ストーブがついていませんでした。これは火の管理の問題が残りますので今後の検討課題ですね)
クラインガルテンの入居者になるには
毎年、10棟程度ガルテンに空きが出ています。2005年は、坊主山5棟、緑が丘5棟の募集で、40組の方が応募され、東京、埼玉、神奈川、
静岡、大阪の方々が新たにクラインガルテンの仲間になりました。ご関心のある方は、一度、
坊主山のゲストラウベを予約して訪問されてみてはいかがですか。
設立当初の計画がクラインガルテンのホームページにアップされていました。
こちらをご覧ください。
坊主山クラインガルテン
クラインガルテン憲章
坊主山クラインガルテン構想
クラインガルテン制度の概要、各地のクラインガルテン、市民農園との比較等は、日本クラインガルテン研究会のサイトで紹介されています。
四賀村は、長期滞在型に分類されています。
農村手本30例(農林水産大臣)2005年
ホームページで公開されている「立ち上がる農山漁村」有識者会議 選定案概要書では、
以下のように報告されています。
◎取組分野: 都市と農山漁村の交流
◎取組名:事業者名全国に先駆けたクラインガルテン3.取組みの名称4.取組概要等
◇概要
四賀村では、高齢化により地域農業者のみでは地域内の農地の耕作維持管理が不可能な状態になり、遊休荒廃農地の増加、
地域農業の維持及び集落機能が危惧されていた。これらの問題解決のため平成6年度に全国に先駆けて「坊主山クラインガルテン(滞在型市民農園)」
を開設し、これを核とした都市農村交流を展開、地域の活性化を推進。村民と都市住民の交流の一環として「田舎の親戚制度」を創設し、
利用者と村民の1対1の関係を構築。視察者も含めた地域利用による経済効果、施設管理等の地域雇用の促進が図られた。また、平成12年度より
「緑ケ丘クラインガルテン」を建設し、本年度130区画全て開園をした。
◇既存の行政の枠組みへの依存度
坊主山クラインガルテン・・・農山漁村活性化定住圏創造事業(H5~H8建設)
緑ケ丘クラインガルテン・・・新山村振興等農林漁業特別対策事業(H12~H15建設)
今後更に建設するためには補助金及び有利な起債を利用することが必要不可欠と思われる。なお、
運営については主に施設利用料によりまかなっている。また、更新及び修繕のための基金を計画的に積み立てている。
◇地域活性化のポイント
毎年、施設の維持管理及び利用者の営農指導を第三セクターに委託している。そのためシルバー人材を中心とした雇用がある。また、
村内の商店の利用による活性化が見込まれる。市民農園区域内は借地のため、所有農家へ毎年村から定額の料金が支払われる。
◇事業の今後の展開方向
一般事業者が参入しやすいように、補助金や有利な起債、税制の優遇をすれば建設の促進につながると思われる。
◇局としてのコメント
平成6年度に全国に先駆けてクラインガルテンを建設し、都市農村交流による地域の活性化に取り組んでいる優良事例である。また、平成16年度は
「国際クラインガルテンシンポジウム」を開催する予定であり、全国的にも注目されており、今後のさらなる都市農村交流の発展が期待される。
その他、村の情報に関するホームページです。
四賀村の概要は、「過疎地域からの情報発信」で、豊かな自然環境を活かしたエコビレッジとして紹介されています。kaso-net
都市と農村の共生対流、オーライ!ニッポンのサイトでの紹介記事、就農や山村留学等の情報は、
こちらのサイトで基幹的なものが紹介されています。
都市と農山漁村の共生・
対流 関連団体連絡会
ニッポンのクラインガルテンリンク集(全国の16のガルテンが紹介されています。
)
ふるさとづくり大賞受賞
(平成10年度)
第2回オーライ!ニッポン大賞の受賞者 オーライ!ニッポン大賞
その他、村の宿泊や各種情報は、松茸山荘のホームページ で、 ブログで紹介されています。写真は、松茸山荘の囲炉裏と四賀村の景観です。
2005年08月19日 [レポート]















